年4回、100件超の提案が集まるLIFULLの新規事業創出制度

導入

「100社100ヶ国100経営者」を掲げ、2025年までに100社の子会社を創出する。会社を挙げて新規事業制度を推進する株式会社LIFULLは、大胆な経営戦略を掲げる。LIFULLと聞くと不動産ポータルサイトを想起するが、新規事業に領域は問わない。目指すは社会課題を解決しながら利益も上げ続ける、社会課題解決型企業だ。そんなLIFULLの新規事業創出制度の数々、その工夫とは?社長室・新規事業責任者の今村吉広氏に話を伺った。

1. 介護から花のサブスクまで、ソーシャル・エンタープライズを目指して

──まずは新規事業提案制度「SWITCH」の特徴を教えてください。

LIFULLは不動産・住宅情報サイトLIFULL HOME’Sで知られていますが、実は毎年多数の新規事業が生まれています。2006年に始めた新規事業提案制度「SWITCH」は年4回の開催、年間応募数100〜160件。難病患者のQOL改善や防災対策、シングルマザーの貧困問題など社会課題解決型のビジネス案が多いのが特徴です。

流通ロスへの課題感から生まれた市場直送のフラワー定期便・LIFULL FLOWERや、フードロスを解消するため、規格外野菜や余剰野菜などを活用したスムージーを届ける法人向け福利厚生サービスClean Smoothie(クリーンスムージー)などは、既に事業化が始まっています。

我々が目指すのはソーシャル・エンタープライズ。事業推進力・創造力・技術力を結集して社会課題を解決しながら、利益も上げ続ける会社でありたいです。

──2025年までに100社100ヶ国100経営者を創出するという経営戦略を掲げているそうですね?

100社はもちろん、100人の経営者を創出するというのがポイント。100人の経営者を育てることで、その会社から2つ目3つ目の新たな社会課題解決も生まれていく。派生していけば、2030年には1万もの社会課題解決に繋がる可能性もあります。

2. 70対20対10の法則。体験型で経営者を育てる

──壮大な目標を掲げるまでには、様々な道のりがあったことと思います。SWITCHはどのようにして生まれたのでしょうか?

当初は人材育成を目的に、人事部付きの施策として生まれたと聞いています。しかし立ち上げ当初はなかなか収益化まで辿り着けず、事業の継続性が課題に挙げられていました。そこでフィジビリスタディ(実行可能性調査)を行うプレシード期、事業化を検討するシード期を設けることに。SWITCHで入賞した応募者は約1〜2年をかけて事業と経営スキルを磨き、承認されれば晴れて子会社化となります。

応募者を経営者に育て上げるまでに重視しているのは、70対20対10の法則。米国の人材開発研究機関ロミンガー社の研究から発見されたもので、人材育成には70%が体験、20%が周囲の助言、10%が座学・学習が必要だという論です。

社内起業家の課題として、コスト感がリアルに計算できないことが挙げられます。事業検証や調査にお金をかけすぎて、最終的には人件費だけでキャッシュアウトしてしまうことも。私はよく、事業開始前にたこ焼きの屋台を経験してみたらという話をするんです。メルカリで収益を上げるとか、小規模でも投資した金額がキャッシュアウトするまでを体験すべきです。

──SWITCHのサポート体制についてはいかがでしょうか?

アクセラレーターをSWITCH経験者が務めることで、実際にSWITCH制度を通してフィジビリや経営者を経験してきた人材との接点を密に持てるようにしています。元々は1案件に1名が長く伴走する体制を取っていましたが、現在は事業の進捗段階によってアサインするメンバーを柔軟に変化させる工夫もしています。

0→1と1→10のフェーズでは、必要なスキルが大きく変わってくる。アクセラレーターの中にも、アイデア出しが得意な人材もいれば、課題の深掘り、ファクト集め、営業が得意な人材もいるわけです。そこで、0→1と1→10では各所でアクセラレーターをチーム分けしています。事業モデルや事業責任者のバックグラウンドによっても、アサインする人材を見極めるようにしています。

事業のスケールは得意でもデジタルマーケティングに弱い、営業経験の多い事業責任者なら、マーケティングに強いアクセラレーターを。LIFULL社内にはエンジニアやデザイナーもいるため、プロトタイプ制作のサポートにも活用できます。

3. 新規事業制度の審査基準0番は「社会的意義」

──SWITCHの審査基準について教えてください。

SWITCHの審査基準は主に5つ。⓪社会的意義、①ビジョンと情熱、②顧客と課題、③ソリューションとビジネスモデル、④市場規模です。LIFULLは、コーポレートメッセージで「あらゆるLIFEを、FULLに。」と発信しています。世界中のあらゆる「LIFE」を豊かにする事業であるかどうか。0番として社会的意義を挙げているのは、LIFULLが新規事業に取り組む理由そのものであるからです。

また、①のビジョンと情熱も新規事業制度において特徴的な審査基準。内発的動機、その社会課題解決を本当にやりたいのかを非常に重視しています。社内起業家は、どうしても競合のスタートアップ企業に比べると熱量が足りない。スタートアップ企業は文字通り命をかけて、身近な人の課題解決に熱い熱量を持って取り組んでいる。やりきる力が異なりますよね。

だからこそ、審査基準に「情熱」を掲げているのです。LIFULL FLOWERは起案者の実家が花農家であり、Clean Smoothie(クリーンスムージー)の起案者も実家が農家。幼少期から業界の「不」を感じてきた。情熱が事業のベースになっているかどうかは、事業の継続性において重要だと考えています。

──新卒1年目の社員が子会社社長に就任する事例もあるそうですね?

審査基準さえ満たしていれば、年次は全く問いません。新卒1年目の社員が入賞することも多々ありますよ。1年目で入賞する社員の特徴は、熱意が高いことと、行動力が高いこと。学生時代に介護施設で働いた経験を活かして介護保険の提案をするなど、今までの経験の延長線上で提案されるものが多い印象です。

実際に株式会社LIFULL SPACE代表取締役・奥村周平氏は、2012年新卒3年目にしてSWITCH入賞。2013年、LIFULL SPACE設立。日本最大級のトランクルームサイト「LIFULLトランクルーム」や全国の貸し会議室・レンタルスペースの検索サイト「LIFULLレンタルスペース」を展開しています。2019年には、空きスペースと荷物を預けたい人を繋ぐ、収納スペースのシェアリングサービスをリリースするなど、1つの事業案から新たな課題解決創出に繋がる事案です。

また、株式会社LIFULL FaMの代表取締役・秋庭麻衣氏は、自身の子育てと仕事の両立に課題を感じ、育児をこなしながら2011年にSWITCH入賞。2014年にLIFULL FaM設立、ママが子どもと一緒に働けるオフィス運営を行なっています。2016年にはワーママ・オブ・ザ・イヤーを受賞するなど、注目度も高い。多様な人材がSWITCHに挑戦してくれています。

4. アイデアがなくても、経営者になりたくなくとも、新規事業は生み出せる

──年間100件もの応募を長年生み出し続けるのは、容易ではないと思います。制度発足当初は社内注目度も高いでしょうが、だんだんネタ切れ状態になっていかないのですか?

以前社員全体にアンケートを取ってみたところ、現社員の中でSWITCH制度への応募経験があるのは大体2割。新規事業をやりたいと言っている社員は、6割から7割ぐらいいるんです。このギャップを埋めていきたいと考えています。

更にこの6、7割の社員を分解していくと、約半数は、アイデアはあるけれどまだ挑戦できていない。この層には、ワークショップや気軽に相談できるランチ会などの開催で接点を増やしています。

残りの半数は、新規事業に関心はあるけれどアイデアがまだない社員たち。ここに向けて今取り組んでいるのが、「みんなでSWITCH」という仕組みです。チームを組んで、共通のテーマをもとにゼロベースでアイデアを考えることができます。事業案と人をセットとして考えるのではなく、「案ありき」「人ありき」で分けて、コンテンツを考えていますね。

──人ではなく、案ありきの事例もあるのですか?

はい。自分のキャリアを変えてまで新規事業に挑戦したくはないけれど、アイデアを持っている社員もいるんです。特にシニア層は、日々の仕事の中で「こんなことやってみたらいいのに」という事業の種を持っている。SWITCHアイデアコンテストとして募集してみると、100件ほど事業案が集まりました。ライトに新規事業に関わる機会を増やすことで、新規事業へのハードルを下げるように心がけています。

5. 外国人も高校生も応募できるOPEN SWITCHで、課題解決の幅を広げる

──2019年にはオープンイノベーションで新規事業を創出する「OPEN SWITCH」を開始されたそうですね。

「OPEN SWITCH」は年2回開催、年間応募数は100件ほどです。SWITCH同様に社会課題解決を目指し、SDGsの17の目標のいずれかに合致しているかが応募条件です。起業家・会社員を始め、外国人からの応募も。ウズベキスタン出身の方が提案したムスリム向けの旅行サービスプラットフォームや、高校生のチームが入賞。今の時代ならではのビジネスプランコンテストになっており、私自身ワクワクしながら参加しています。

また2020年には、ニューノーマル時代の社会課題を解決していくビジネスプランコンテスト「OPEN SWITCH 考えよう、これからの暮らし。」を開催。コロナ禍で変化した暮らしにおける新しい価値観を収集し、その声を元にしたアイデアを募集する制度です。

社外の方でも、事業案が採択されればいきなり子会社の社長として採用するケースもあり得ます。あらゆる人々の生活を豊かにしていくために、SWITCHを様々な形で展開していくことで、仲間を増やしていきたいです。

──最後に、社内起業家や新規事業に携わる方々に向けてメッセージをお願いします。

我々は外部との連携を含めて、新規事業創出に注力しています。イベントを通じて、共に新たな価値を作っていきたいです。OPEN SWITCHはLIFULL主体のコンテストですが、思考としては共催のようなイメージ。社内だけでなく、社会全体の仕組みにしていきたいと構想しています。我々の取り組みに興味を持っていただけた方は、ぜひお声がけください。

今村 吉広

株式会社LIFULL 社長室 新規事業責任者

総合電機、流通業において約10年間、社内起業家として働き方改革や街づくりプロジェクト、モビリティサービスなどの事業開発に携わる。2017年、株式会社LIFULLに入社。社会課題解決をテーマに社内外インキュベーション、アクセラレーションを行うとともに、新規事業創出のスキーム確立・文化定着を通じて、企業ビジョンである「あらゆるLIFEを、FULLに。」の実現を目指す。

総合電機、流通業において約10年間、社内起業家として働き方改革や街づくりプロジェクト、モビリティサービスなどの事業開発に携わる。2017年、株式会社LIFULLに入社。社会課題解決をテーマに社内外インキュベーション、アクセラレーションを行うとともに、新規事業創出のスキーム確立・文化定着を通じて、企業ビジョンである「あらゆるLIFEを、FULLに。」の実現を目指す。

古川 央士

株式会社アルファドライブ 執行役員

青山学院大学卒。学生時代にベンチャーを創業経営。その後、株式会社リクルート(現リクルートホールディングス)に新卒入社。SUUMOでUI/UX組織の起ち上げや、開発プロジェクトを指揮。その後ヘッドクオーターで新規事業開発室のGMとして、複数の新規事業プロジェクトを統括。パラレルキャリアとして、2013年より株式会社ノックダイスを創業。2015年にはカフェ・バー「Bottles」をオープン。2018年にはイタリアンレストラン「trattoria filo」をオープン。またNPOでの活動や、一般社団法人の理事などを兼任し、数多くのイベントをオーガナイズ。社内新規事業や社外での起業・経営経験を元に、2018年11月、株式会社アルファドライブ執行役員に就任。リクルート時代に1,000件以上の新規事業プランに関わり、10件以上の新規事業プロジェクトの統括・育成を実施。アルファドライブ参画後も20社以上の大企業の新規事業創出シーン、1,700件以上の新規事業プランに関わる。

青山学院大学卒。学生時代にベンチャーを創業経営。その後、株式会社リクルート(現リクルートホールディングス)に新卒入社。SUUMOでUI/UX組織の起ち上げや、開発プロジェクトを指揮。その後ヘッドクオーターで新規事業開発室のGMとして、複数の新規事業プロジェクトを統括。パラレルキャリアとして、2013年より株式会社ノックダイスを創業。2015年にはカフェ・バー「Bottles」をオープン。2018年にはイタリアンレストラン「trattoria filo」をオープン。またNPOでの活動や、一般社団法人の理事などを兼任し、数多くのイベントをオーガナイズ。社内新規事業や社外での起業・経営経験を元に、2018年11月、株式会社アルファドライブ執行役員に就任。リクルート時代に1,000件以上の新規事業プランに関わり、10件以上の新規事業プロジェクトの統括・育成を実施。アルファドライブ参画後も20社以上の大企業の新規事業創出シーン、1,700件以上の新規事業プランに関わる。

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