新規事業のチームづくりを徹底議論

導入

起案者、そして事務局やメンターが新規事業の創出に挑む中で、多くの人が抱える悩みや課題がある。その解決のヒントを提供しているのが、新規事業開発支援を行うAlphaDriveの「新規事業よろず相談室」だ。第9回目となる今回のテーマは「新規事業のチームづくり」。センミツとも言われている新規事業においては、特にチームの編成・運営が大きく明暗を分ける。相談室に寄せられた、チームづくりにまつわるさまざまなお悩みに答えていく。

創業チームは起案者が口説き、集めるべし

お悩み1:実行力のあるチームをつくるための定石


古川:
新規事業開発を進めるにあたり、事務局は起案者への賛同者を集めたが、年齢・経験・ポジションがばらばら。結果的に実行力を発揮できなかった、というお悩みです。おそらく起案者が1人で新規事業開発プログラムを勝ち上がり、後からチームを編成しなければならなかったケースです。中心となるべき起案者の思いを共有せずにスキル優先でチームを編成すると、後々ミスマッチが起こることがあります。

麻生:創業チームは、CEOとなる起案者が自分で口説いて集めるのが成功のセオリーです。このセオリーを逸脱すると、失敗する確率が高まります。事務局が勝手にアサインすることは、いくら気を利かしたつもりでも押し付けになってしまいます。事務局はあくまで起案者のサポート役であり、その役割に徹するべき。具体的には、創業チームのマッチングイベントなどの場づくりをしてあげるのがよいでしょう。

古川:とはいえ、起案者がそのイベントで相思相愛の相手を見つけても、起案者自らその人を引っ張ってくる権限は持たないと思います。

麻生:そこが事務局の腕の見せどころです。例えば、相思相愛の相手が既存事業のエースだったら、どう考えても来てもらえそうにない。そういうときにこそ事務局が会社に掛け合い、少しの稼働からでもいいからチームに参加してもらえるようにするのです。そういう意味では、マッチングイベントは公募型エントリーの前段階に開催しておくのがベター。事業化の審査を通過しプロジェクトが走り出してから、他部署の人をアサインすると話がややこしくなりがちですが、一緒に通過したのであれば話も通りやすいはずです。

古川:チームは起案者が口説き集める、そしてできれば走り始める前に編成する。この2つが定石ということですね。

 

新規事業開発は大勢で始めてはいけない

お悩み2:初期メンバーとの熱量のギャップ


古川:初期メンバー中心で新規事業開発の検討をしていた中に、新規メンバーが入ってきました。しかし熱量のギャップから新規メンバーのパフォーマンスが上がらないという課題です。

麻生:これも、よくあるケースです。まず、「新規事業開発は大勢で始めてはいけない」というのが、成功のためのルールです。事業化審査通過前に、段階的にメンバーを補填(ほてん)していくと、後から加入したメンバーとの間で、こうした状態が生じがちです。よって、事業化審査に通過し予算が付く段階までは、2〜3人の創業チームでやり切った方がよいでしょう。

古川:これと似た課題は、事業化後にも起こり得るのではないでしょうか。

麻生:事業化後には、同様の課題はほとんど出てこないと思います。事業化審査に通過するのは、相当すごいことです。2〜3人の一般的な社員が会社の上層部や役員からの投資判断を得たわけですから。相談者の悩みにもあるように、創業メンバーの熱量はすごい。事業化後であれば、後から参画したメンバーを感化させる力も持っていると思います。

古川:それでも熱量のギャップから新規メンバーのパフォーマンスが上がらないという事態になってしまった場合の対策はありますか?

麻生:これから顧客を感動させなければならないのに、メンバー1人の熱量を上げられないと音を上げていたら、そもそも事業化なんてできないでしょう。そうなってしまっているのならば、リーダーの熱量が足りないのかもしれません。

古川:その通りですね。過去の経験からアドバイスすると、こうした問題に直面した場合、チーム内でいくら話し合っても事態が好転しません。乗り越える方法があるとすれば、それは事業開発がうまくいくことです。熱量のギャップがあっても、顧客に喜ばれたりするなどの成功体験を一緒にすれば、ギャップが埋まることがあります。地道に頑張ってほしいです。

 

元上司の立場に配慮しながら「別チームに」

お悩み3:チーム内で年功序列色が出てしまう

古川:チーム内の年功序列により、空気を読み合うような雰囲気ができてしまいます。年齢や役職に関係なく議論・意思決定できるチームにしたい、というお悩みです。トップダウン型のプロジェクトは、このようなケースが起こりがちかもしれません。

麻生:これはもう、解散ですね。

古川:それも1つの方法ですが、代案はありませんか。

麻生:新規事業がまだ出来上がっていない段階ならば、チームを「Aチーム」「Bチーム」の2つに分解しましょう。分解の理由は、「さまざまな可能性を探るため」「チームの方向性を探るため」などでいいです。そしてAチームのリーダーを、件の元上司にお願いする。Bチームではなく、Aチームです。あくまで、メインストリームだと思われやすいAチームを元上司に任せることで、立場を配慮するのです。そして「一応、Bチームでも予備案を進めておきます」と言っておき、最終的にBチームの案で事業化審査まで進めてしまうのです。

古川:しかしその方法では、元上司は最後まで「自分が本命」だと思っているから、チームの統括者に「こちらが本命です」とアピールしかねません。それでA案が通ってしまったら本末転倒です。そういう運営スタイルで進めていることを統括者に根回ししておく必要もありますね。

麻生:審査会の数日前に種明かしすると、この元上司が想定外の行動に出る恐れもあります。審査会当日まで内緒にしておき、「すみません、B案になってしまいました」で乗り切りましょう。

古川:なるほど、なかなかの妙案でした。

麻生:この話は、何も新規事業に限った話ではありません。既存事業でもよくある社内政治の話です。

 

制度的にできないことがあるなら「制度をハックせよ」

お悩み4:良いバランス感のチームをつくるには?

 

古川:相談者の会社では「事業部横断のチームづくりができない」という事情があるようです。そのような中でバランスよく人数最少限のチームを構築するには、どうすればよいのか。チーム編成の際に、同じ事業部での参加を禁止にするなどの対策が考えられますが、いかがでしょうか。

麻生:「事業部横断で取り組める制度づくりをせよ」が最適解ですが、この相談者の場合はそれができないようなので回答が難しいですね。
事業部を越えた人同士が裏でつながり、「制度をハックする」しか方法はないのかもしれません。表向きはそれぞれの事業部で編成されたチームで進めているが、実は裏でつながっていて最終的には同じようなアイデアを出す。すると事務局が、「同じようなアイデアだから一緒に進めた方がいい」と考え、動いてくれるかもしれません。

古川:日ごろから裏でつながれる社内環境なら、この手もありですね。しかし縦割りの組織の場合、そういうコミュニケーションすらできないかもしれません。

麻生:ならば労働組合とか有志団体に働きかけて社内の交流会を開いてもらい、つながりをつくりましょう。そこで出会った別々の事業部の3人で新規事業を考え、作戦を練り、ほとんど同じ新規事業を審査会に出すというのはどうでしょうか。

古川:なんだかロマンチックな手段ですね。いずれにせよ相談内容は、「制度上できない」ということでしたが、制度をハックすればできることもあるというのが答えですね。

 

集団による「どよっと感」をいかに解消するか

お悩み5:アサイン型のチームに火を付けるには

古川:相談者の会社の新規事業制度はアイデア公募ではなく、事業開発部がアイデアを考える「アサイン型」で、相談者のチームは45~50歳の7人体制です。相談者はやる気があるようですが、中は不稼働状態のメンバーもいるということです。彼らの心に火を付けるにはどうすればよいのでしょうか。

麻生:アサイン型であること、年齢層が高いことの2段構えのお悩みです。AlphaDriveは、アサイン型の新規事業制度を支援することがありますが、古川さんはどう考えますか。

古川:起業家を志す人がエントリーしてくる公募型に比べ、アサイン型はメンバーの心に火が付きにくい側面があるかもしれません。しかしそんなアサイン型チームでもうまくいく、百発百中の秘策があります。それは「強烈な原体験をともにする」こと。例えば一次産業の現場に3日間ほど泊まり込み、毎日夜中まで話し込む。このようなことを短期集中で実施すると、かなりワンチーム感が出ます。でも、麻生さんが指摘した通り、この悩みは2段構えです。これを45~50歳くらいの人全員に経験させるのは難易度が高いです。

麻生:するとこの問いは、「45〜50歳くらいの人をいかにやる気にさせるか」と言えます。ここで誤解してほしくないのは、45〜50歳という年齢が問題ではないということです。その年齢層でもイントラプレナーに覚醒していく人が大勢います。古川さんが言っていたように、強烈な原体験をともにすれば、心に火をともす人がいても不思議ではありません。
でも、私がこのお悩みに対して本当に言いたいのは、アサイン型新規事業制度を課せられた事業開発部に、そういった年齢層の社員を集めてしまうこの会社の枠組みの問題です。「きっとアサインされた7人というのは、自律的に動けない人たちの集まりではないか」という、言外に含まれる感覚が、この問いを難しくしているような気がします。

古川:集団による「どよっと感」の怖さですよね。何か方法はありませんか。

麻生:いきのよい20代を7人連れてきて、合計14人を現地に放り込むのはどうでしょう。古川さんの案では、現地で強烈な体験をしなければいけません。45〜50歳の集団ではそれを実行しにくいのであれば、代わりに20代チームにその体験役になってもらうのです。45〜50歳チームも、その様子を間近で見れば覚醒するかもしれません。
いきなり45〜50歳チーム全員の心に火をともすのが難しいのであれば、まずは1〜2人に照準を絞る。社会課題解決という文脈などでは響かないのであれば、競争原理や評価を暗示するなど、別のロジックやモチベーションで働きかけてみましょう。野心のある人がいるかもしれません。

古川:結局は、一人一人と向き合って解決していくことが求められるということですね。

 

Q&Aセッション

以下、その他に寄せられた質問に短くお答えします。

——チームづくりにおいて、意中の同僚の口説き方に秘策があればお聞かせください。

 

麻生:意中の同僚がいる時点で素晴らしいです。口説き方の秘策は、「全力で口説く」こと。あとは、一緒に顧客のところへ行くこと。顧客のところへ連れ出し、一緒に悩みを聞き、その帰りは必ず一緒に飲む。それを5ターンくらい繰り返せば、たいていの場合は落とせます。

 

古川:私も、それが王道だと思います。どんな言葉を並び立てるよりも相手のモチベーションを刺激できますし、何よりそのこと自体が事業開発になるから一石二鳥です。

 

麻生:まだ顧客設定ができていないなら、課題が存在する現場に行き、課題当事者の話を聞くのもよいでしょう。もちろんその帰りは必ず一緒に飲みましょう。

 

——チーム内にスケジュールだけ管理する人は必要でしょうか。プロジェクトマネージャー気取りで「なんで遅れてるの?」と偉そうに言う人がいます。

 

麻生:結論から言うと、そのような人は必要ありません。それなのに、なぜそのような人が入っているのかが気になります。この会社の新規事業はアサイン型のプロジェクトで、会社がチームの監視役・モニタリング役としてチームを見張らせているのかもしれません。仮にそうだとしたら、問題は非常に根深い。ともあれ、その人はチームメンバーではなく上司のような存在です。適当にスルーすればよいと思います。

古川:一般的なボスマネジメントで対応せよ、ということですね。付け加えるならば、事業化審査までのスケジュール設計はかなり重要なスキルです。しかしスケジュール管理の目的は「守る」ことではなく、状況に応じてスケジュールを「引き直す」ことにあります。そこを履き違えてはいけません。

——チームのマッチングイベントを開催したが、起案者が希望者を断り切れず、全員をチームメンバーに入れてしまった。結果としてうまくいかなかった。どうすればよかったのでしょうか。

 

古川:大人数ではうまくいかないことを起案者に理解してもらい、断れるようになってもらうことが先決です。それができそうになければ事務局が介在しましょう。私も同じような経験がありますが、そのときは事務局が間に入り、本気度の低い人を選別。結果的に2〜3人のチームに落ち着きました。

 

麻生:断れない気持ちはすごくよく分かります。とはいえ、古川さんの回答のように、全員を一斉に参加させてしまうと、うまくいきません。どうしても断れないならば、全員を受け入れながらも、レギュラーと準レギュラーに分けて関わってもらうのがよいでしょう。

 

——リーダーによる指名制で、社員名簿からメンバーを決めなければいけません。新規事業にやる気があるかどうか見分けるこつは?

麻生:なにかとんでもない制度のように思えますが、名簿から「誰でも選べる」ということであれば、とてもぜいたくな制度だと思います。さすがに「名簿の名前と経歴だけで選べ」とは会社も言っていないと思うので、これを大きなチャンスだと捉え、積極的に最高のメンバーを集めていってほしいです。会って見分ける方法は、口説いたときの反応を見ることです。また、そのときの反応があまりよくなかったとしても、顧客のところに連れていくと変わるかもしれません。まずは全員と会ってみていただきたいです。

麻生 要一

株式会社アルファドライブ 代表取締役社長 兼 CEO

東京大学経済学部卒業。株式会社リクルート(現リクルートホールディングス)に入社後、ファウンダー兼社長としてIT事業子会社を立ち上げ、経営者としてゼロから150人規模まで事業を拡大後、ヘッドクオーターにおけるインキュベーション部門を統括。社内事業開発プログラム「Recruit Ventures」及び、スタートアップ企業支援プログラム「TECH LAB PAAK」を立ち上げ、新規事業統括エグゼクティブとして約1500の社内プロジェクト及び約300社のベンチャー企業・スタートアップ企業のインキュベーションを支援した経験を経て、自らフルリスクを取る起業家へと転身。同時多発的に創業。2018年2月に企業内インキュベーションプラットフォームを手がける株式会社アルファドライブを創業し、2019年11月にユーザベースグループ入り(発行済全株式を売却)。2018年4月に医療レベルのゲノム・DNA解析の提供を行う株式会社ゲノムクリニックを共同創業。2018年6月より「UB VENTURES」ベンチャー・パートナーへ就任しベンチャーキャピタリスト業を開始。2018年9月に株式会社ニューズピックスにて非常勤執行役員に就任し、企業内起業家としてNewsPicks for Businessの事業開発を管掌。著書に『新規事業の実践論(NewsPicks Publishing)』。

東京大学経済学部卒業。株式会社リクルート(現リクルートホールディングス)に入社後、ファウンダー兼社長としてIT事業子会社を立ち上げ、経営者としてゼロから150人規模まで事業を拡大後、ヘッドクオーターにおけるインキュベーション部門を統括。社内事業開発プログラム「Recruit Ventures」及び、スタートアップ企業支援プログラム「TECH LAB PAAK」を立ち上げ、新規事業統括エグゼクティブとして約1500の社内プロジェクト及び約300社のベンチャー企業・スタートアップ企業のインキュベーションを支援した経験を経て、自らフルリスクを取る起業家へと転身。同時多発的に創業。2018年2月に企業内インキュベーションプラットフォームを手がける株式会社アルファドライブを創業し、2019年11月にユーザベースグループ入り(発行済全株式を売却)。2018年4月に医療レベルのゲノム・DNA解析の提供を行う株式会社ゲノムクリニックを共同創業。2018年6月より「UB VENTURES」ベンチャー・パートナーへ就任しベンチャーキャピタリスト業を開始。2018年9月に株式会社ニューズピックスにて非常勤執行役員に就任し、企業内起業家としてNewsPicks for Businessの事業開発を管掌。著書に『新規事業の実践論(NewsPicks Publishing)』。

古川 央士

株式会社アルファドライブ 執行役員

青山学院大学卒。学生時代にベンチャーを創業経営。その後、株式会社リクルート(現リクルートホールディングス)に新卒入社。SUUMOでUI/UX組織の起ち上げや、開発プロジェクトを指揮。その後ヘッドクオーターで新規事業開発室のGMとして、複数の新規事業プロジェクトを統括。パラレルキャリアとして、2013年より株式会社ノックダイスを創業。2015年にはカフェ・バー「Bottles」をオープン。2018年にはイタリアンレストラン「trattoria filo」をオープン。またNPOでの活動や、一般社団法人の理事などを兼任し、数多くのイベントをオーガナイズ。社内新規事業や社外での起業・経営経験を元に、2018年11月、株式会社アルファドライブ執行役員に就任。リクルート時代に1,000件以上の新規事業プランに関わり、10件以上の新規事業プロジェクトの統括・育成を実施。アルファドライブ参画後も20社以上の大企業の新規事業創出シーン、1,700件以上の新規事業プランに関わる。

青山学院大学卒。学生時代にベンチャーを創業経営。その後、株式会社リクルート(現リクルートホールディングス)に新卒入社。SUUMOでUI/UX組織の起ち上げや、開発プロジェクトを指揮。その後ヘッドクオーターで新規事業開発室のGMとして、複数の新規事業プロジェクトを統括。パラレルキャリアとして、2013年より株式会社ノックダイスを創業。2015年にはカフェ・バー「Bottles」をオープン。2018年にはイタリアンレストラン「trattoria filo」をオープン。またNPOでの活動や、一般社団法人の理事などを兼任し、数多くのイベントをオーガナイズ。社内新規事業や社外での起業・経営経験を元に、2018年11月、株式会社アルファドライブ執行役員に就任。リクルート時代に1,000件以上の新規事業プランに関わり、10件以上の新規事業プロジェクトの統括・育成を実施。アルファドライブ参画後も20社以上の大企業の新規事業創出シーン、1,700件以上の新規事業プランに関わる。

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