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新規事業に向く人の3つの特徴。チーム組成のポイント【事業開発の支援者が解説】

新規事業開発に向いている人は、どのような資質やスキルの持ち主なのでしょうか。新規事業起案者と事務局の両方の経験を持つAlphaDrive猪谷祐貴が、新規事業開発に向いている人の特徴を紹介。人材の見つけ方や、チームづくりのポイントも解説します。

新規事業に向いている人とは?

新規事業開発に取り組むにあたって「自分は適しているだろうか?」「どのような人材をアサインすればいいのか?」と悩む方は少なくありません。まずお伝えしたいのは、その人の性格や経歴、スキルなどの要素だけでは、新規事業への向き・不向きはわからない、ということです。

では何を見ればいいのかというと、新規事業に対する「WILL(意志)」です。資質やスキルといったものは「WILL」という土台の上にあり、後からでも身につけられることができます。

その上で、本記事では新規事業開発の成功率が高い傾向の人に見られる3つの「特徴」を説明していきます。

新規事業に向く人の特徴①「熱狂的」である

繰り返しになりますが、新規事業開発で最も重要なのは本人の気持ちです。それも普通のレベルではなく、課題解決や事業に対する圧倒的な想いが、新規事業開発には求められます。私はこのような特徴を、「熱狂」という言葉で表現しています。

新規事業開発に取り組む担当者は、多くの課題に直面します。事業化するまでのアイデア創出・検証の段階では、既存事業をこなしながら活動しなければいけませんし、そのためのさまざまな調整が発生します。日常の業務を終えた後に、自分の新規事業検証に取り組む、といったケースもあるでしょう。フィジカル・メンタル両方でハードワークが求められます。

そもそも新規事業は「千三つ(1000分の3の成功確率)」といわれるほどハードルの高い世界ですので、その取り組みは失敗の連続です。そんな中でも諦めず粘り強く検証を続けるには「この課題を自分が解決したい!」という強い気持ちが必要なのです。

この「熱狂」には、先天的なものと、後天的なものがあります。

先天的な熱狂がある人とは、すでに実現したいビジョンや理想を持っている人物を指します。目的に向けて考え、常に積極的な行動が見られる人です。

後天的な熱狂がある人とは、普段は目立つような存在ではなくても、ある経験をすることで「自分がこの課題を解決したい!」と目覚め、動きだす人物です。例えば、被災地でのボランティア活動や、貧困や過疎に悩む地域で過ごす、実際に顧客の悩みを聞く、といった「原体験」によって熱狂が湧き出てくるのです。

後天的な熱狂を生み出す施策として、新規事業プログラムの一環で現場を体験するフィールドワークを行うこともあります。しかしいずれにしても、「熱狂」は誰かが与えるものではなく、現場に触れることで本人の中から生まれるものです。

新規事業に向く人の特徴②「タフ」である

2つ目の特徴は、「タフ」であることです。

新規事業開発の過程では、担当者は「頭を下げる」ことが多くなります。仮説検証ひとつ行うにも、想定する顧客にヒアリングをお願いし、①で述べたように既存事業や関係各所との調整も毎日のように行われます。

「お願い・感謝」は、新規事業開発につきものといっても過言ではありません。慣れていない人にとって、頻繁に頭を下げるという行為は、ストレスを感じるものです。そのことに挫けずに、プロジェクト達成まで駆け抜け続ける「タフさ」が、新規事業開発には必要です。

新規事業に向く人の特徴③「愛社精神」が強い

3つ目は「愛社精神」。特に大企業内の新規事業開発に重要な要素です。大企業で起案者として新規事業を提案する場合、「なぜ自社がその事業をやるのか」を説明しきれず進捗が止まることがよくあります。しかし、強烈な愛社精神を持っている起案者は「この事業があることで会社をこう変えられる」というように、自分の新規事業と会社の将来を紐づけて説明することができる傾向にあります。

愛社精神が強い人が新規事業を進めると、自然と経営視座が育まれるといえるかもしれません。

ここで言う「愛社精神」とは、会社に従順な「奉仕精神」とは異なります。「愛の反対は無関心」とはよく言いますが、会社の方針や取り組みに声をあげない人よりも、不満や愚痴を口にする人の方が、会社のことを自分ごとのように捉えて「会社をもっとよくしたい」と考えている場合があります。

人材をアサインする立場の方は、「言うことを聞いてくれそうだから○」「不満が多いから×」といった短絡的な判断をせず、従業員たちの言動の根底にある「愛社精神」の有無を見るといいでしょう。

新規事業に向く人材の探し方

新規事業開発に向く特徴のある人材を社内から見つけるには、どうすればいいでしょうか。2つの方法を紹介します。

探し方1:チャンスを与える

研修プログラムや新規事業の公募制度など、従業員が挑戦できる機会を設けて、参加した従業員の様子を観察する方法です。

例えば研修では、自ら挙手するか、集団の中でも積極的に質問しているか、率先してアイデアを出しているか。こうした行動からは、目の前の物事に前向き・主体的に取り組む「熱量」や、社の取り組みと真剣に向き合う「愛社精神」を見ることができます。周囲に萎縮せずに堂々と振る舞うことができるのは「タフ」である証拠とも言えるでしょう。

探し方2:採用戦略を変える

協調性を大切にする社内文化があり自己主張するタイプが少ない、といった場合は採用戦略から検討するのもいいでしょう。

例えばある保守的な大企業では、新規事業のために採用の基準を変え「先天性の熱狂」を持つメンバーの採用枠を設けています。外部から異質な人材を呼び込むことは、ただその人が活躍するだけでなく、社内で挑戦の機運を高めることにもつながるでしょう。

新規事業に生きるスキル

新規事業開発に生きる具体的な「スキル」を紹介します。

  • モチベーションマネジメント力:WILLの強さ、リーダーシップ
  • 行動力:フットワークの軽さ、突破力
  • 情報収集力:リサーチ力、ヒアリング力
  • 情報整理力:構造化力、言語化力
  • 価値実装力:プロダクト力、柔軟性
  • 構想力:要素分解力、ストーリー構築力

新規事業開発に求められるスキルは実に多様です。もちろん、これらをすべてひとりでカバーすることは現実的ではありません。異なるスキルを持つ人材がチームになって取り組み、新規事業開発から事業化・拡大まで進めていくといいでしょう。

チームづくりのポイントは適宜アサイン

新規事業開発のチームをつくる上で最も重要なのは、前述したような強い気持ちを持つリーダーがいることです。特にアイデア創出や顧客ヒアリングの段階では、スキル以上にチームのモチベーションが活動を支えます。

次に、事業案の仮説検証に入ると「行動力」が求められるようになります。さらにサービス提供が始まれば開発を繰り返す「価値実装力」が、事業を会社に本格提案する際には「構想力」が求められます。新規事業は「ステージ」によって生きるスキルが変わり、多様化していくものです。

だからといって、闇雲にメンバーを増やす追加するのはNGです。不用意にチームを拡大すると、それだけ内部コミュニケーションコストがかかり、事業開発のスピードが低下してしまうことを心に留めましょう。本格投資を受けるまでのチームの人数としては1〜3人が適当です。この初期メンバーが段階的に必要なスキルを習得していくことができれば、アサインの必要もなくなります。このため、初期チームには学び続けるマインドセットがあることも重要です。

新規事業開発のチームをつくるときは、最初からすべてのスキルを揃える必要はなく、まずはリーダーのモチベーションマネジメント力で推し進めること。そして成長のステージに合わせて適切なスキルを獲得し、足りない機能が明確になった時点でそのスキルを持つ人材を適宜アサインしていくといいでしょう。

<「新規事業のチームづくり」についてお悩みの方は、こちらの記事もおすすめ>
新規事業よろず相談室「新規事業のチームづくりを徹底議論」

まとめ:夢中になれることが、新規事業における最大の適正 

新規事業開発に向いている人について、以下のようにまとめます。

  • 新規事業開発に向いている人の特徴は「熱狂」「タフ」「愛社精神」
  • 向いている人材は、社内研修や採用戦略の工夫によって探し出す
  • チームづくりはリーダーのモチベーションが最優先。スキルは適宜獲得・人材投入

繰り返しになりますが、新規事業開発は「向き/不向き」よりも「やりたいかどうか」。失敗や挫折を恐れていては、事業化はなかなか進みません。課題や障壁が多いのは事実ですが、その分新規事業開発は真剣にやればやるほど、ビジネスパーソンとしての市場価値を激的に高めると同時に、人間としての圧倒的なタフさを身につけることができます。新規事業に携わるのであれば、とことん熱を持って、夢中になって取り組んでほしいです。

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