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マネタイズできる事業とは?成功確度を上げる「uniiリサーチ」の仮説検証

導入

株式会社LIFULLの新規事業提案制度「SWITCH」から生まれたオンラインインタビューサービス「uniiリサーチ」。社内新規事業として生まれたサービスであり、企業の新規事業創造支援に繋がるサービスでもある。サービスリリースに至るまでは、泥臭い仮説検証や複数のピボット経験があったそう。事業責任者・浜岡宏樹氏に、事業開発の裏側について赤裸々に語ってもらった。

1. 低価格でターゲットユーザーとマッチング。オンラインインタビューサービス「uniiリサーチ」

──まず「uniiリサーチ」の事業概要を教えてください。

新規事業開発には深いユーザー理解が欠かせず、ユーザーインタビューによる仮説検証を試みる事業者も多い。しかし予算が限られている新規事業にとって、一般的なリサーチ会社への依頼は高額かつスピード感も合わないケースが多い現状があります。人的リソースも不足している中で、結局社内や身近な人へのヒアリングで済ませてしまう人も多いでしょう。ただ、身近な人から得たインサイトではバイアスがかかる可能性もあります。

そこで我々が提供しているのが、オンライン上で簡単かつ低価格でインタビューできる「uniiリサーチ」です。1人あたり1,500円から最短即日でユーザーインタビューをオンラインで実施できます。ユーザーインタビュー、プロトタイプ検証、UI/UXテストなど様々なシーンで利用が可能です。人伝いで対象者を見つける機縁法を用いており、任意の層を数多く獲得することができます。現在は質問設計等までコンサルさせていただくプランで運用していますが、今後はWeb上で完全マッチングするプランをリリース予定です。(※2021年7月にリリース済)

──LIFULLから「uniiリサーチ」が生まれたきっかけとは?

株式会社LIFULLの主力事業は、LIFULL HOME’Sという不動産ポータルサイトです。私も4年間 LIFULL HOME’Sのコンサルティング営業をしていました。不動産のイメージが強いかと思いますが、弊社は「あらゆるLIFEを、FULLに。」というビジョンを掲げています。最初は不動産というドメインから始まりましたが、社会課題解決につながる事業を軸に多角化しており、地方創生事業やシニア向け施設のポータルサイト運営、遊休スペースの活用事業、フラワーロスを解決する花の定期便のサブスクサービスなどを展開しています。これらの事業が生まれる源となっているのが、社内新規事業提案制度 「SWITCH」です。「uniiリサーチ」もSWITCHから生まれたサービスです。

2. 二度のSWITCH応募、入念な準備を経てピッチを通過

──新規事業提案制度「SWITCH」について教えてください。

エントリー・相談会を経て、ピッチで入賞するとプレシード期、フィジビリティスタディ(実行可能性調査)に移行します。事業仮説の検証を行い、マネタイズできるモデルかを検証した後、ある程度KPIをクリアすると事業化という流れです。シード期の事業化フェーズではある程度の裁量と予算を任され、最終的に黒字化することができたら子会社化へ。「uniiリサーチ」は現在シード期の事業化フェーズです。

──浜岡さんはどのような経緯で「SWITCH」に応募されたのでしょうか?

私のキャリアは少し特殊なのですが、4年間営業を務めたのち、2年間創業者・井上のカバン持ちをしていました。実は営業在籍時とカバン持ちの時期、SWITCHには2度応募しています。2度とも教育系の事業の立案をしており、様々なピボットを経て「uniiリサーチ」に辿り着きました。

元々新規事業には関心が高く、LIFULL自体が新規事業に挑戦できる会社なのが入社理由の1つでした。また、カバン持ちの時には創業者の井上はもちろん、様々な起業家や事業責任者にお会いするので、刺激を受けた部分も大きかったです。

──ピッチ通過や各審査会をクリアしていくときに気をつけていたことはありますか?

主に3点重視したポイントがありました。1点目は、ビジネス内容です。ピッチは時間が限られているため、細かい数字を出すよりも、どこまで革新性があるか、尖った部分をしっかり出すことは意識しました。

2点目に「こいつだったら何かやってくれそうだ」と審査員に信頼感を醸成すること。事業も、結局はヒト次第。投資した後にやり抜ける人間かどうかは重要だと思います。私の場合は、カバン持ちとして社内にも認知してもらっていたため、そこは優位に働きました。カバン持ちでなくとも、社内で信頼感を醸成する働きかけは必要だと考えています。

3点目は、事前準備をしっかり行うこと。過去のピッチ映像・FAQはもちろん、YouTubeで社外のピッチ映像も多数見て研究しました。資料の作り方や、話し方は何が良いのか。どんな観点が質問されるのか。過去のSWITCHでの映像や資料は全て見られたので、それらを生かすことができました。

当日話す内容は全て文字起こしをし、何百回も練習して空で言えるように。緊張して少し時間が伸びることも想定して、ピッチ時間の15秒前に終わるように練習していました。また、プレゼン内容を客観的に見られるよう、事業について何も知らない社員にピッチのアドバイスをしてもらうこともありました。

──人を評価するというのはSWITCHの大きな特徴ですね。

採択のポイントとして、第一に社会課題を解決できるかという点、その次に提案者の情熱を見るのがSWITCHの良いところだなと。特殊な会社かもしれないですが、弊社ではとても重視している観点です。

3. マネタイズできる事業とは?ピボットを厭わない顧客視点の事業開発

──教育系の事業案で採択されたのち、様々なピボットを経てuniiリサーチに辿り着いたそうですね。

そうなんです。フィジビリを行ったタイミングで実現性に疑問符がつき、収益化できるのか、本当にそのサービスを求めているユーザーがいるのか、といった課題にぶち当たりました。そこで一から新規事業について書籍などで改めて学び、もっとユーザー視点での事業開発をすべきであると感じました。ユーザーが求めているサービスは何か。この観点で何度も仮説検証を繰り返し、今の事業に辿り着きました。

──2度SWITCHに教育関連で応募され、領域への思いも強かったと思います。顧客ニーズのある事業に柔軟にピボットできたのはなぜでしょうか?

やはり事業を進めていく上でユーザーありきだと実感できたことは大きかったと思います。またチームメンバーと議論する中で、教育というのはあくまでソリューションであり、やりたいことの根源は人のキャリアや可能性を広げること、新しいキャリアへの挑戦を支援することだという結論に至りました。このビジョンさえずらさなければ、ソリューションはどんどん変えていくべきだ。そう考えられたのが大きかったのかもしれません。

──マネタイズできるかどうかは新規事業の大きなハードルになりますよね。

我々はマネタイズできるかどうかの検証を、後ろ倒しにしてしまった失敗経験があります。コミュニティサービスを構想していた際に、会員登録は無料、その後コンテンツ等で課金できるだろうと踏んでいました。

しかし、ヒアリングしても有料化するほどの課題感ではないことが見えてしまった。初期の時点で検証しようと思えばできたことですが、答え合わせが怖くて後回しに。後から考えると新規事業にとってすごく時間ロスだったなと。本当にお金を払ってくれるサービスなのかどうか、マネタイズできる事業なのかどうかは早めに検証しておくべきポイントだと学びました。

──そこからマネタイズできる課題を見つけるにはどういったプロセスがあったのでしょうか?

何十・何百というアイデアを議論する中で、結局私たちが洞察力と当事者意識を持って課題解決できることは、今まさに取り組んでいる新規事業の領域であるという結論に行きつきました。そこで、社内でSWITCH経験者に話を聞くと、失敗するケースはユーザーの課題やインサイトを深く掘れていないことが原因であるとわかりました。のが原因であることが多い。我々の今までの事業案も、ユーザー視点での開発ができていないことが失敗要因でした。そこで、ユーザーの課題を知るためのソリューションを考えることになりました。

4. 泥臭く100社以上にニーズ検証メールを送付、5社受注に直結

──課題が決まり、まずやったこととは?

事業の作り込みの前に、ニーズがあるかどうかの検証が先だと考えました。そこで、利用規約・拙い営業資料・メール文面のみ用意し、100社ほど問い合わせをしました。そのうちの1社がAlphaDriveさんですね。意外だったのは、結果的に10社ほど返信いただき、5社から受注できたことです。コンバージョンレートの高さに驚くとともに、とてもニーズのある事業だと実感できました。

──問い合わせ先のリストアップで工夫していたことはありますか?

uniiリサーチのニーズがある業種を仮説立てし、セグメント分けをしていました。大企業の新規事業をやっている会社や、それを支援するAlphaDriveさんのようなコンサル系の会社さんが中心ですね。

一時はデプスインタビュー(1対1の面談で実施する調査)を行うことが多いメーカーにもアプローチしたのですが、ここにはあまりニーズがありませんでした。業種ごとにコンバージョン率を出し、文章のカスタマイズや改善など、細かな工夫は泥臭くやっていましたね。

5. ユーザーの声を届け、新規事業のwillを醸成するサービスに

──uniiリサーチの反響はいかがですか?

直近、ご支援していた1つの事業が子会社化までいくことができ、お礼のメールをいただきました。今も継続して取引をさせていただいており、とても良い成功事例を作れたと感じています。

また、別の新規事業責任者の方から、「単に仮説検証に使えるサービスではなく、チームのwillを醸成してくれるサービスですね」とお声がけいただいたんです。社内新規事業はスタートアップ企業に比べると事業メンバーのパッションが多少劣る部分もあると思うのですが、uniiリサーチで顧客の声を聞くことで、当事者意識が深まり事業への思いに火がつくようなのです。

顧客の声をもとにサービス開発をしていく重要性は我々も実体験として理解しています。まさにサービスとして提供していきたい価値であると考えていたため、それが伝わっていることがとても嬉しかったです。

──社内新規事業はまず応募してみて、様々な声を聞くうちにwillが醸成されていくケースもありですよね。

私も最初は「新規事業をやってみたい」と出来心に近い気持ちで応募しました。顧客に会いにいくうちに、助けたい相手や課題解決したい相手が出来てきて、willが醸成されていくものだと思うんです。それを助けるのがuniiリサーチだと考えています。

我々は「ワクワクする挑戦であふれる社会を作る」というビジョンを掲げています。最初から大きな気持ちを持っている必要はない。顧客の声に触れることでwillがどんどん大きくなり、成功事例が生まれ、それを見た人が小さな出来心から事業挑戦に繋がる。そういった循環を作っていきたいと考えています。

──最後に、社内新規事業に挑戦されている方々にメッセージをお願いします。

社内新規事業はもっともっと増えていくべきだし、盛り上がっていくべきだと感じています。しかし常々感じるのは、どうしてもコミュニティが小さかったり、世の中的にはスタートアップの方が盛り上がりを感じられたりするもの。ただ、社内新規事業にも活力ある事業はたくさんあります。社内新規事業に挑む方々と協働して一緒に盛り上げ、一緒に新しい取り組みを推進していけたらと思います。

登壇者について

浜岡 宏樹

株式会社LIFULL uniiリサーチ事業責任者

株式会社LIFULLに新卒で入社し、主力事業『LIFULL HOME’S』のコンサル営業にて年間トップセールスを受賞。その後、代表の井上高志のカバン持ちに就任し、多くのPJを推進。社内新規事業提案制度「SWITCH」にて入賞。「ワクワクする挑戦で溢れる社会を創る」をビジョンに掲げて、2020年9月よりオンラインインタビューサービス『uniiリサーチ』をリリースし、クライアント企業の新規事業創造の支援に取り組む。

古川 央士

株式会社アルファドライブ 取締役 兼 COO

青山学院大学卒。学生時代にベンチャーを創業経営。その後、株式会社リクルートに新卒入社。SUUMOでUI/UX組織の立ち上げや、開発プロジェクトを指揮。その後ヘッドクオーターで新規事業開発室のGMとして、複数の新規事業プロジェクトを統括。パラレルキャリアとして、2013年に株式会社ノックダイスを創業。飲食店やコミュニティースペースを複数店舗運営。一般社団法人の理事などを兼任。社内新規事業や社外での起業・経営経験を元に、2018年11月、株式会社アルファドライブ執行役員に就任。リクルート時代に1000件以上の新規事業プランに関わり、10件以上の新規事業プロジェクトの統括・育成を実施。株式会社アルファドライブ入社後も数十社の大企業の新規事業創出シーン、数千件の新規事業プランに関わる。2023年より株式会社アルファドライブ取締役兼COO。

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