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アイディエーションのプロセスを紹介!顧客やマーケット起点で考える方法

「アイディエーション」とは、新規事業開発などのビジネスシーンにおいて、顧客の課題や解決方法を見つけるためのアイデアの着想、発散、収束までのプロセス全体を指す言葉です。この記事では、4つのアイディエーションの方法をご紹介するとともに、そのなかでも新規事業開発に特に有効な「マーケットドリブン」のアイディエーションのコツについて詳しく解説します。

アイディエーションの意義

アイディエーションとは、新しいアイデアを生み出すプロセス全体を指しています。つまり、1回限りのアイデア出しやブレインストーミングだけでなく、アイデアを生み出すための思考の整理や、生まれたアイデアを深めて発展させていくなど、前後すべてのプロセスを含んでいるのです。アイディエーションは大きく、生成→選択→開発の3つのステージに分けることができます。

アイディエーションの手法

アイディエーションは、組織内にある事業計画やアセットを活用したり、他社との競争優位性を前提にするなど、「アイデアの起点をどこに置くか」によって4つの手法があります。

マーケットドリブン:顧客課題から進める

もっともおすすめするアイディエーションのプロセスは、「マーケットドリブン」と呼ばれる顧客課題からアイデアを着想する方法です。ビジネス開発において世界的に主流となっている「デザイン思考」でも使われています。

顧客は何を本当に求めているのか? 何に困っているのか? をヒアリングで深掘りしながら商品やサービスのアイデアを発想するので、顧客の本質的なニーズを捉えやすく、ヒット商品につながりやすいといわれています。

また自社で顧客を抱えており、ヒアリングや調査を実行しやすい場合にもおすすめです。

アセットドリブン:自社の持つ強みから進める

自社や組織がすでに持っている技術やノウハウなどのアセットからアイデアを着想する手法が「アセットドリブン」です。競争優位性があり、かつ実現性の高いアイデアが生まれやすいメリットがありますが、一方でソリューションの幅があらかじめ規定されるため、アイデアの幅が広がらないというデメリットもあります。

ビジョンドリブン:理想像から進める

将来こうありたいという理想像からアイデアを着想していくプロセスが「ビジョンドリブン」です。常識新規事業開発においては、実現可能性が低かったり、顧客のニーズを捉えきれていない独りよがりなアイデアにつながるデメリットもありますが、企業の理念やポリシー、行動規範などを考える際に有効です。

コンペティタードリブン:競合分析から進める

「コンペティタードリブン」は、競合サービスを分析したり、既存事業の横展開などをヒントにアイディエーションを進めていく手法です。
例えば、ある一部の国で支持されているサービスを改良して、別の国や地域に展開させてみる。もしくは同じサービスのターゲット顧客だけを変更するなどのアイデアにつながります。

既存サービスを参考にして、さらにユーザーニーズを満たすアイデアが生まれやすいのが特徴です。

万人が取り組みやすいのは顧客起点のアイディエーション

4つのアイディエーションの方法をご紹介しましたが、そのなかでもっともおすすめの方法、顧客課題からアイデアを着想するマーケットドリブンのプロセス、メリットについて、もう少し詳しくご説明します。

マーケットドリブンのアイディエーションは、事業の領域を問わず「万人が取り組みやすい」のが特徴です。顧客課題を軸にすることで、ソリューションの仮説を立てやすく、顧客からのフィードバックによる修正も反映しやすくなります。アイデアをどんどんブラッシュアップすることが可能になるのです。

また、新規事業開発における失敗例として、自社のビジョンやアセットを軸にしたアイデアを優先するあまり、顧客ニーズとのギャップが生まれ、事業化した際にマーケットから受け入れられないこともよくあります。せっかくのアイデアを無駄にしないためにも、顧客課題を起点にアイデアを考え、仮説を立てたら顧客へのヒアリングを繰り返してアイディエーションを深めていきましょう。まずは顧客に会いに行き、課題を見つけ、それを解決するためのアイデアを考え、さらにそのアイデアを何度も修正する。それが新規事業を成功させるための鍵でもあるのです。

マーケットドリブンのアイディエーションで新規事業のアイデアを着想していくプロセスについて、5つのステップで紹介します。

事業の領域やテーマを決める

アイディエーションを進めていくために、まずは新規事業の領域やテーマを決めます。
就職や結婚などの人生におけるライフイベント、健康や食事といったライフスタイルの一コマなど、身近な生活から領域やテーマを発想するとよいでしょう。

ほかにもSDGsで提唱されているような、貧困や食料問題、ジェンダー平等などの社会課題と、日本や地域社会などの身近な領域を掛け合わせて発想したり、自社事業の周辺領域から発想するのもおすすめです。

  • 身近な生活から発想する:ライフイベント、ライフスタイル
  • 社会課題から発想する:SDGs×国や地域、身近な社会課題
  • 自社事業の周辺領域から発想する:自社の商品サービスと関連しつつも、まだ手をつけていない領域

どの領域を軸にアイディエーションを行うのかを事前に決めておくと、顧客を絞り込みやすくなるでしょう。

顧客を決める

事業領域やテーマが決まったら、その領域のなかで具体的にどの顧客に向けた商品やサービスを開発するのかを明確にします。該当する領域に関係する人々を書き出してみましょう。

例えばライフスタイル軸から「ベジタリアン(菜食主義)」を事業領域を選んだとします。
その領域の顧客には、健康のためにベジタリアンに興味を持っている人、完全菜食であるヴィーガンを実践している人、レストラン経営者、野菜生産者、ベジミートなど代替肉の開発会社、管理栄養士などあらゆる人々がいます。

それぞれを書き出して、どの顧客の課題を解決したいのか整理してみましょう。

顧客の課題を見つける

顧客を決めたら、その顧客の現状の取り組みと困っていそうなことを、具体的に書き出していきます。
例えば「ベジタリアン(菜食主義)」の領域で「健康のためにベジタリアンに興味を持っている人」を顧客に決めたなら、以下のような課題があるのではないかと推測できます。

  • 健康診断の結果が悪く、ベジタリアンに興味があるが、始め方がわからない
  • ベジタリアンに興味はあるが、栄養が偏ってしまうのではないか、本当に体にいいのか心配
  • 結局お肉が食べたくなって、三日坊主になるのが不安

これらは仮説なので、実際に顧客のもとに足を運び、ヒアリングを重ねることで、課題を深く追求していきます。
例えば「ベジタリアンに興味があるが、始め方がわからない」という課題であれば、下記のような質問が考えられます。

  • 健康診断結果のどの項目を見て悪いと感じたのか
  • なぜベジタリアンになることが、その解決策になると思ったのか
  • ベジタリアンに興味を持ってから、ネットでどんなワード言葉を検索したのか
  • この課題について、家族や友人に相談しているか
  • ベジタリアンを始められなかった原因が自分にあるとすれば、それは何なのか

質問を繰り返すことで具体的なニーズが明確になれば、課題へのソリューションを考えやすくなるでしょう。また課題解決に対する顧客の熱量も参考になります。
もし顧客が「具体的に状況を変えたいと思って行動しているものの、まだ解決できていない」課題があれば大きなヒントになります。そこには強いニーズがあるからです。

顧客起点による仮説をたてる

解決するべき顧客の課題が具体的に見えてきたら、カスタマージャーニーなどのフレームをつかって、課題と顧客の関係性を整理しつつ、ソリューションのアイデアを考えます。
ブレインストーミングやHMW Questionsなどの固定概念や常識を超えたアイデアを生み出すメソッドは、この段階で取り入れていくといいでしょう。

仮説を顧客に提出し修正していく

ソリューションのアイデアが生まれても完成ではありません。そのアイデアはあくまでも仮説なので、顧客のもとへふたたび足を運び、フィードバックを受けてどんどん修正していきます。
とくに「顧客が本当にお金を払ってまで利用してくれる商品やサービスになるのか」の観点は重要です。ソリューションのアイデアが事業担当者の自己満足にならないように、必ず顧客からのフィードバックを受けて、事業として成り立つかを厳しくチェックし、修正していきます。

MVPによる仮説検証

ソリューションのアイデアが固まってきたら、MVP(Minimum Viable Product)による事業の実証フェーズに移っていきます。
MVPとは、顧客課題を解決するソリューションを最小限のコスト、最短の準備期間で再現したプロダクトを意味します。

pp仮のプロダクトを顧客に実際に使ってもらい、正直なフィードバックを受け取り、それをプロダクトに反映することで、検証のレベルと強度を上げていきます。実際に商品やサービスが完成するまで、しつこく顧客の声を聞き、アイデアに反映させていくのが、マーケットドリブンのアイディエーションになります。

顧客起点のアイディエーションプロセスを

この記事ではアイディエーションの意義から、4つの主な手法、そのなかでもマーケットドリブンのアイディエーションについて詳しく解説しました。

どの事業領域であっても、顧客とその課題、ソリューション提案はビジネスの基本となります。新規事業開発においてもマーケットドリブンの考え方は基本の軸となるでしょう。徹底した顧客起点に立ち返って事業開発を進めていくことで、かつて想定していなかった新しい事業の柱が見つかる可能性もあります。

変化の激しいビジネスシーンを勝ち抜いていくためにも、顧客起点のアイディエーションによって積極的な新規事業開発をぜひ進めていきましょう。

筆者について

佐伯 真之介

マネージングディレクター

慶應義塾大学 商学部卒。ソフトバンク株式会社に新卒入社。法人営業を経験した後、新規事業開発部として投資先企業サービスのローカライズや国内外大手メーカーとの共創による新規事業創出及び国内での立ち上げを経験。 企業内新規事業立ち上げに向けた企画立案及びビジネスモデルの構築・検証、セールスの戦略策定・実行等に従事し、ジョイントベンチャー設立プロジェクトを担当。大企業における事業開発の難しさや可能性に触れるなかで、自身と同じように悩める企業内新規事業家を応援したいとの思いから2021年4月、株式会社アルファドライブに入社。大手金融機関や飲料・ヘルスケアメーカーを中心に、グループ横断の大規模な新規事業開発及び組織変革に携わる。

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