Knowledge (ナレッジ記事)

新規事業開発を突破するPoCの勘所

導入

新規事業創出制度の起案者、そして事務局やメンターが新規事業の創出に挑む中で、多くの人が抱える悩みや課題がある。その解決のヒントを提供しているのが、新規事業開発支援を行う株式会社アルファドライブの「新規事業よろず相談室」。今回のテーマは「新規事業開発を突破するPoC(概念実証)の勘所」。新規事業の検証フェーズにおいて、事業の受容性・実効性・フィジビリティー(実現可能性)などについて、提供期間や範囲などを区切って実験的に行う「PoC」を乗り切る勘所を伝授する。

記事内トピック

  • フレームワークは先に検証活動をするのが基本作法
  • 社内起業家ならば、お金をかけないPoCで苦境を突破せよ
  • PoCは数にこだわることなかれ
  • PoCパートナーの獲得は、自分から動くべし
  • 業界構造的に困難な新規事業開発の正攻法
  • お金を出してくれない有償PoC「本当のKPIが達成されていないのかも」

フレームワークは先に検証活動をするのが基本作法

お悩み1:「整理」と「検証活動」のバランス

古川:ビジネスモデルキャンバス、リーンキャンバス、ジャベリンボードはいずれも新規事業開発における検証のためのフレームワークです。それら「机上での整理に時間をかけすぎると、実際の検証活動になかなか進めない」という悩みです。先に動いてから整理するという方法は有効なのでしょうか? 

麻生:このお悩みの内容を読んで疑問に思うのは、リーンキャンバス一つとっても、初めから全てを埋めるものではないということをご存知なのかな、ということです。最初に埋めるのは、両サイドの課題と顧客セグメントです。そのインサイトが深くなった後で、ソリューションやUVP(独自の価値提案)に着手し、その後チャンネルやコスト構造などを埋めていきます。

古川:なるほど。前半戦の課題や顧客セグメントの部分を埋めるためには、質問者の言葉を借りれば「現場での観察、ヒアリング、実証などの行動」が中心であり、事前準備やフレームワークへの落とし込みなんてしなくても、ヒアリングベースで進めていけるということですね。後半戦になるにつれて事前準備やフレームワークの機会が増えていくため、質問者が考える「先に動いてから整理」が、事業開発の基本作法ということになりますね。

麻生:挙げているようなフレームワークは、審査・投資する側と提案する側のコミュニケーションを円滑にするためのツールです。起案者は発案した事業への思いがあふれがちですから、百枚を超えるようなパワーポイントでプレゼンしようとします。コミュニケーションコストを下げる意味でも、こうした1枚文書で表すことができたらよいですよね。プロジェクトが進んでいけば、チーム間の共有事項にズレが生じることもあります。その際にも、チーム間の目線をそろえる意味で効果を発揮するでしょう。

リーンキャンバスなどのツールを活用すれば事業が進むわけではない。「先に動く」というのはその通りですが、リーンキャンバスなどがイコール「机上での整理」という前提が違っているという印象です。

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