Interview (クライアントインタビュー)

Client

トヨタ自動車株式会社

モノづくりを進化させ、製造業の構造改革を目指す。トヨタ自動車の社内新規事業「要件定義支援サービス」の事業化&マーケティング伴走の舞台裏

# 事業開発伴走

日本の製造業は、発注者と受注者の立場の違いから生じる「要件定義」の行き違いにより、苦労することがよくあります。その課題を解決するため、トヨタ自動車から社内新規事業として、要件定義の明確化を支援するコンサルティングサービス「要件定義支援サービス」が立ち上がりました。

このサービスを開発したチーム「Edeson(エデソン)」は、要件定義支援サービスを起点に、日本の製造業の構造を改革するという壮大なビジョンを掲げています。AlphaDriveは、この挑戦を仲間として支えています。事業化からマーケティングまで、二人三脚で歩む、その舞台裏に迫ります。

トヨタ自動車株式会社 先進プロジェクト推進部/新事業企画部(兼務) 横田祐介様

大学院修士課程前期修了後、2011年に新卒でトヨタ自動車株式会社に入社。モノづくり開発部署に配属後、クルマ事業において先行開発~量産まで幅広いモノづくり開発を担当。自身で検討したアイデアがトヨタ初部品の製造工程に採用された実績をもち、関連部品メーカー出向も経験。その後、新規事業企画部署に異動し社内新規事業制度の事務局業務、企画運営に従事。自らもプロジェクトチーム「Edeson」を立ち上げ、2022年に起案者として新規事業制度に応募し、最終審査会をグランプリで通過。「要件定義支援サービス」の事業化を実現し、現在プロダクトオーナーとしてビジネスを拡大中。

トヨタ自動車株式会社 新事業企画部 西田陽様

2013年にトヨタ自動車株式会社へ入社。調達本部にて、自動車部品の調達業務および仕入れ先の経営課題解決に従事。入社時より新規事業への挑戦を志し、試行錯誤の日々を送る。2022年、新事業企画部へ異動。現在はヘルスケアロボット開発プロジェクトのリーダーとして、事業性検証・ビジネスモデル構築と、ロボット開発のプロジェクトマネジメントを担う。「Edeson」の初期メンバーとして参加し、現在も事業のグロースに向けて奔走。

株式会社アルファドライブ 取締役 兼 COO 古川 央士

青山学院大学卒。学生時代にベンチャー創業。株式会社リクルート入社後、SUUMOのUI/UX組織立ち上げ、開発プロジェクトを指揮。新規事業開発室GMとして複数事業を統括。2013年、株式会社ノックダイス創業。2018年、株式会社アルファドライブ執行役員就任。社内外で数千件の新規事業プランに関わる。2023年より株式会社アルファドライブ取締役 兼 COO。

株式会社アルファドライブ AXL MARKETING STUDIO スタジオ長 堀田 遼人

株式会社リクルート入社後、不動産ポータルサイトの企画開発に従事。その後、株式会社スペースマーケット(上場)にて、プロダクトマネジメント、マーケティング、BizDev、アライアンス、新規事業開発を担当。現在は株式会社A1Growth代表として、スタートアップ・新規事業のマーケティング支援に特化。また、アルファドライブでインハウスマーケティング全般と支援先のマーケティング戦略・実働ディレクションを担当。

脳裏に焼き付いた土下座する祖父。製造業に対する問題意識を新規事業のアイデアに昇華


──まず、「要件定義支援サービス」の概要について教えていただけますか。

トヨタ自動車(以下、トヨタ) 横田様:
「要件定義支援サービス」は、商品開発や製造における発注者と受注者(メーカー)の認識をすり合わせるための要件定義をサポートするコンサルティングサービスです。発注者からメーカーに「こういうものを作ってほしい」と要望を伝える際に、仕様を定めた書類をわたすことが一般的です。しかし、その書類が統一された形式ではなく、発注者とメーカーの間で、お互いの認識に違いが生じることが多々あります。

ただ、根本的な原因は、書類の形式の問題ではなく、お互いの立場や考え方の理解が不十分なことがほとんどです。具体的には、発注者はメーカー側の事情や製造工程の詳細を把握できておらず、メーカー側も発注者が本当に求めていることや、製品の使われ方をイメージしきれていないといった問題があります。

この問題に対して、製品の最初から最後まで関わってきたトヨタ自動車の経験を活かせると考え、新規事業として誕生したのが「要件定義支援サービス」です。

顧客は発注者で、提供する価値は「発注者が何を求め、メーカーは何をすべきかを具体的かつ明確に定義すること」です。製造工程の全体像を見える化し、各工程の責任範囲や管理すべき項目を明確にすることで、誰が何に責任を持ち、何をいつまでに、どのように実行すべきかがクリアになります。

その結果、発注者はより早く、効率的にイメージ通りの製品を手に入れることができます。一方、メーカーは不明瞭な指示や手戻りに悩まされることなく、本来の製造業務に集中できます。その結果、プロジェクト全体の進行がスムーズになります。

トヨタが持つノウハウを活用し、企業のモノづくりを支援する「要件定義支援サービス」の枠組み


──どのようなきっかけで、新規事業を手掛けようと思われたのでしょうか?

トヨタ 横田様:
きっかけは、私の幼少期の経験に深く根ざしています。祖父がモノづくりのメーカーを経営しており、私は子どもの頃から頻繁に祖父の会社を訪れていました。その際に発注者からの理不尽な要求を目の当たりにすることが度々ありました。ときには祖父が発注者から土下座を強いられる場面に遭遇したこともあります。

このときの経験を通じて、モノづくりの構造を変革し、発注者とメーカーがWin-Winの関係を築ける仕組みをつくりたいという強い思いが芽生えました。

2011年にトヨタ自動車に新卒で入社し、最初はものづくりの開発部署に配属されました。先行開発から量産までを担当し、自身が検討したアイデアが初めて部品として採用されるなどの実績も積むことができました。その後、関連部品メーカーへの出向を経験し、製造プロセスや現場の課題をさらに深く理解する機会を得ました。

2022年に社内新規事業の立ち上げとグロースをサポートする先進プロジェクト推進部と新事業企画部(兼務)への異動が決定。2023年には、新規事業を推進、支援するスキーム「BE creation(ビークリエイション)」の運営が本格始動しました。

トヨタ自動車に入社してからも「モノづくりの構造を変革したい」という思いは揺らいでいなかったものの、実現するには自分が社内で一定の権限を持つ立場にならなければいけないと思い込んでいました。しかし、新規事業の発案というアプローチで、実現できるかもしれないと考えるように。この気づきがターニングポイントとなり、自らも新規事業を発案することを決断しました。

モノづくり開発や量産化の経験をもとに、「要件定義支援サービス」のアイデアを創出した横田氏

事業戦略の転換点。挑戦を支え、成功に導いたAlphaDrive流の戦略メンタリング


──古川さんは「BE creation」の制度設計から運営に至る全体支援をはじめ、Edesonチームのメンタリングも担当されています。具体的にどのような支援を提供されているのでしょうか?

AlphaDrive (以下、AD)古川:
「BE creation」は、トヨタ自動車様の社員を対象に新規事業を公募する「B-pro」と、新規事業をグロースさせるための支援「E-biz」の2つで構成されています。

AlphaDriveは複数名のコンサルタントでチームを編成し、「BE creation」の制度設計に携わらせていただきました。現在も、トヨタ自動車様の社内に設置されている「BE creation」事務局の運営を支援しています。

私は、事務局の運営を支援するとともに、公募の審査や起案者の皆様のメンタリング、通過した事業案のグロースなど幅広く担当しています。現在、グロースのフェーズにあるEdesonチームのメンタリングも、公募の段階から担当しています。


──Edesonの支援において、どのようなメンタリングを心掛けていましたか?

AD古川:
まず、横田さんは、もともと大手企業の下請けとして、厳しい納期やコスト削減の圧力にさらされていることが多い、町工場のような小規模事業者への支援に強い思い入れを持っていました。受注者側が抱える課題を解決することで、日本の製造業全体の活性化に貢献したいというのが、横田さんのお考えでした。

しかし、受注者側は経営体力に限りがある場合が多く、仮に革新的なサービスを提供したとしても、それに見合う十分な対価を得ることが難しいという大きな課題に直面することになります。つまり、社会的意義は非常に大きいものの、ビジネスとして成立させるには、収益モデルの構築に大きな工夫が必要となるのです。

そのため、当初のメンタリングでは、横田さんの熱意を尊重しつつも、ビジネスとして成立させるために、事業の方向性をどのように転換できるかが主な論点でした。そこで、まずは客観的かつ冷静に事業を見つめ直す必要があると考え、小規模事業者以外のステークホルダーにも話を聞きに行くことを提案しました。

現場でヒアリングした結果をもとにディスカッションを重ねた結果、当面の収益源としては、より広い顧客層を視野に入れてビジネスとして成立する方向に着地しました。具体的には、受注者側の小規模事業者ではなく、「発注者側であるハードウェアスタートアップや大企業の新規事業部門」を顧客に設定したかたちです。

リクルート時代に1000件以上、株式会社アルファドライブ入社後から現在までに、数十社の大企業の新規事業創出シーン、数千件の新規事業プランに関わってきた古川氏


──古川さんとのメンタリングで、横田さんの中でどのような意識変化がありましたか?

トヨタ 横田様:
当初、小規模事業者にヒアリングをしていたのですが、事情を深く知れば知るほど、資金や時間に余裕がなく、そもそも仕事の受注自体が不足している厳しい現実を目の当たりにしました。中には、「余計な支援は不要だから、受注がほしい」といった切実な声もありました。そのような状況下で、まさにそのタイミングで支援対象を広げてはどうかとアドバイスをいただき、ハッとさせられました。

もともと私にとって重要なのは、具体的な手段ではなく、あくまで「小規模事業者を助けたい」という強い想い(Will)でした。その想いがあったからこそ、柔軟にピボットすることができたのだと思います。逆に、もし特定の製品やサービスありきで考えていたら、このような方向転換は難しかったかもしれません。

アドバイスをきっかけに、発注者側へのヒアリングを開始したところ、彼らもまた独自の課題を抱えていることがわかってきました。とくに過去に小規模事業者に発注して、失敗した経験を持っている場合、要件定義の必要性を理解し、お金を出して解決したいと思っている人がいることがわかりました。ビジネスとして成立する裏付けを得られたことは、大きなターニングポイントでした。

思考を広げ、行動を促す。AlphaDriveのコンサルタントの強みは、豊富なケーススタディと論理的思考


──横田さんとともに「要件定義支援サービス」を起案した西田さんは、Edesonチームの立ち上げメンバーです。古川さんのメンタリングについて、どのような感想をお持ちでしょうか?

トヨタ 西田様:
古川さんからは本当に多くのアドバイスをいただきました。とくに、事業の方向性に悩んだときは、古川さんに相談すると思考から行動に移しやすくなりました。また、古川さんがリクルートで新規事業の起案者としてサービスを開発されていたときの実体験も、参考になりました。

古川さんのアドバイスは、私にとって進むべき道が間違っていないというお墨付きのようなものです。そのおかげで、自信を持って、顧客へのヒアリングや具体的な事例の収集に専念できました。

実際に行動に移すと、1回目よりも2回目のヒアリングの方が良い結果が得られたり、リアルな声からしか得られないような顧客のニーズにも気づいたりすることができました。いつも熱意にあふれ、前向きな姿勢で接してくれるので、モチベーションも上がります。

「要件定義支援サービス」の起案者の一人であり、現在はプロダクトオーナーである横田氏の懐刀として事業のグロースを牽引する西田氏

トヨタ 横田様:
私からも補足させてください。古川さんは、私たちが描く事業の構想に対して、より広い視野からアドバイスをくれます。

まず、私が真っ白なキャンバスに、顧客へのヒアリングを重ねて得られた情報や気づきをもとに、事業の方向性を描いていくのですが、顧客の課題解決に熱中するあまり、どうしても視野が狭くなりがちです。しかし、古川さんは常に客観的な視点を持ち続け、「こういうパターンも考えられるのではないか?」と、私の思考をさらに拡張してくれるのです。

私は、顧客の課題やその一歩先の未来くらいまでしか見通せていないことが多いのですが、古川さんはこれまでに数々の企業を支援してきた豊富な経験から、それぞれの選択肢がどのような結果につながるか、ある程度の予測をされます。

「このパターンならこういう展開になるだろう」「このパターンなら、あちらの方向性の方が良いかもしれない」といった具体的な予測を描き、その予測を検証するために「こういう方々にも話を聞いてみると良いのではないか」といった、的確なアドバイスをくださるのです。

古川さんは状況を客観視し、さらに高い視座から全体像を捉えた上で、冷静な意見を授けてくれます。私たちの想いを深く理解してくれているからこそ、その言葉には絶対的な信頼を置くことができます。正直なところ、いまは外部のパートナーではなく、一緒に夢を実現する仲間だと思っています。

AD 古川
そのように評価していただき、ありがとうございます。私を含めてAlphaDriveのリードコンサルタントが提供できる基本的な価値は、数多くの事業立ち上げを支援してきた経験から得られた膨大なケーススタディです。

私は、事業をゼロから立ち上げ、年間億単位の収益を上げるビジネスに成長させた方々を、企画書の段階から支援した経験が多数あります。そのため、どのようなパターンで事業を進めると、どこでつまずきやすいのか、どうすれば成功の確率を高められるのか、といった実践的な知見が頭の中に蓄積されています。それをもとに、成功・失敗のパターンを踏まえながら、「なぜそうすべきなのか」という理由もセットで説明するように心掛けています。

コンサルティングの本質を突き詰めれば、情報の非対称性を解消することです。クライアントが経験したことのないことを先回りし、大量のケーススタディからノウハウを提供することにあると考えています。

ただし、Edesonチームとの取り組みは、少し特殊でした。横田さんは起案者でありながら、「BE creation」の事務局として豊富な経験を積まれていましたし、西田さんはすでに新規事業のプロジェクトを複数経験されていました。つまり、すでに新規事業立ち上げに必要な基本知識を十分持っておられ、情報の非対称性はほとんどなかったのです。

そこで、私が最も注力したのは、意思決定の議論をサポートすることでした。事業を進めていくと、実に多くの選択肢が現れます。

例えば、「要件定義支援サービス」の顧客である発注者の課題一つとっても、ベンダー選定や比較検討、マッチング、要件定義、品質チェック、内製化のための教育など、様々な切り口が考えられます。すべてに対応することは現実的ではないため、どの課題解決に注力すれば、ビジネスとして最も大きく成長できるのか、何を軸に事業展開していくべきなのか、といった戦略的な意思決定が非常に重要になります。

そこに対して、私は「こちらに進めば、このようなビジネスモデルになるでしょう」「あちらに進むと、このような競合が現れるかもしれません」といった具体的な可能性を提示することを意識しました。

もしこのような役割を担う人間がいなければ、お二人は「これで本当に正しいのか?」と不安を抱えながら、手探りで意思決定を進めていくことになります。そこで、私が壁打ち相手となり、一旦お二人の考えを吐き出していただき、そこに論理的な補強を加えながら議論を深めていく。そのプロセスにこそ、私の介在する意味があったと考えています。

顧客セグメントを細分化し、提供価値を明確に。新規事業の成長を加速させるマーケティング戦略


──現在、「要件定義支援サービス」はグロースのフェーズで、マーケティングにも注力されているそうですね。AlphaDriveの堀田さんが、コンサルタントとしてマーケティング戦略に伴走されていますが、そもそも新規事業をグロースさせるにあたり、マーケティング戦略で重視すべきポイントについて教えてください。

AD 堀田:
新規事業を成長させていくためには、事業の初期段階で得られた知見を基に、より広く、より多くの顧客に価値を届けるための戦略を練り直すことが不可欠だと考えています。

事業の立ち上げ期にヒアリングを通じて、顧客の課題をある程度特定できたとしても、それは出発点に過ぎません。事業を成長させ、広く普及させていくためには、数千から数万の潜在顧客に情報を届け、顧客になってもらう必要があります。

そのためには、どのような人々が、どのような課題を抱えているのかを正確に把握し、それに対して自社のサービスや事業がどのような価値を提供できるのか、顧客視点で情報を届けることを前提に、マーケティング戦略を設計することが非常に重要なのです。これが、事業のグロースにおける最も重要なポイントだと私は考えています。

マーケティングと聞くと、つい具体的な手法や分析方法にばかり目が行きがちです。しかし、本当に重要なのは、もっと根本的な部分です。

私はよく、マーケティングは「誰に(WHO)、何を(WHAT)、どのように(HOW)届けるのか」という順番で考えることが重要だとお伝えしています。しかし実際は、多くの人が「どのように(HOW)」から考えてしまい、具体的な施策の検討から始めてしまうのです。

「どのように(HOW)」を先に試してしまうと、例えば「一度セミナーを開催してみたけれど、全く人が集まらなかった」という結果になった場合、失敗の原因を正しく特定することができません。届けたメッセージ自体が間違っていたのか、それともセミナーという手法が適していなかったのか、変数が多すぎて、どこに問題があったのかを振り返ることが困難です。

ですから、まずはWHOとWHAT、つまり「誰に」「何を」届けるのかを明確にすることが不可欠です。顧客に届けるべきメッセージは何か、提供すべき価値は何か。ここを明確にすることが、効果的なマーケティングのポイントだと考えています。

これまで30社以上のスタートアップのグロース・マーケティングに携わってきた堀田氏


──Edesonチームの支援では、どのような取り組みに注力されてきたのでしょうか?

AD 堀田:
マーケティング戦略支援の最初のステップは、「顧客セグメントやユースケースの細分化と、それぞれのセグメント/ユースケースに対する提供価値の明確化」でした。

例えば、顧客とユースケースの組み合わせとしては「大企業の中で新規事業としてデバイス開発などに取り組む新規事業部門」「ハードウェア系の事業を展開するスタートアップ」「メーカー機能を持ちながら、新規事業として発注者側の立場でモノづくりに取り組む中小企業」などが想定されます。

そこで、主に横田さんと一緒に細分化されたセグメント一つひとつに対して、どのような価値を提供できるのかを丁寧に整理していきました。

次に「コミュニケーション設計」に取り組みました。事業計画に基づき、年間の予算や新規顧客の獲得目標を明確化します。その上で、目標達成のために必要なリード数、商談数、契約数を算出し、マーケティングの目標に落とし込んでいきました。

大きくこの2つが、事業をスケールさせていく上での土台作りとして取り組んだことです。

土台作り(WHO/WHATおよびユースケースの設計)をしたあとは、マーケティング施策(HOW)の検証に移ります。新規事業のマーケティング施策では、「早さ・安さ・適度な広さ」が重要です。具体的には、アジャイルかつスピーディーに施策を展開すること、いきなり大きな金額を投資するのではなく勝ちパターンができるまでは少額から投資すること、1つの施策のみに集中するのではなく一定数施策の幅を検証することです。

Edesonでは、検索広告やメルマガ広告などのデジタルな手法から、決済者の方々向けのレター・お手紙をお送りする施策や、産業特化型の展示会への出展などを矢継ぎ早に検証していきました。

──AlphaDriveのマーケティング支援の導入を決断されたのは、なぜでしょうか?

トヨタ 横田様:
私たちのチームのように新規事業でプロのマーケティング支援を活用するのは、一見珍しいことかもしれません。しかし、事業化してから受注に至ったケースの多くは、口コミや紹介などで、再現性に乏しいという課題がありました。そのため、マーケティングは優先順位が高かったのです。

とはいえ、私を含めてマーケティングの経験やスキルを持つメンバーがチームにいなかったので、プロの力を借りた方が効率的だと判断しました。

──横田さん、マーケティングの支援で印象に残っていることはありますか?

トヨタ 横田様:
堀田さんのマーケティング支援で最も感銘を受けたのは、単なる手法論ではなく、マーケティングの根本的な考え方、つまり理論から丁寧に教えてくれる点です。そして理論を事業に落とし込む方法についても、その本質をかみ砕いて説明していただきました。

抽象的な概念を説明するだけでなく、「ビールのマーケティング戦略」などを具体例として解説してくださるので、理解しやすかったです。抽象的な理論と具体的な事例を往復しながら、最後には自分自身で考え、実践できるレベルまで引き上げてくれるアプローチを取ってくださるので、ゆくゆくは自走できるかもしれないという自信にもつながりました。

日本の製造業をチャレンジしやすい環境にする。桁違いの成長力を秘めたEdesonをさらなる成長のフェーズへ


──では、Edesonと「要件定義支援サービス」の今後の展望についてお聞かせください。

トヨタ 横田様:
Edesonチームの大きな目標は、新しい部品や商品にチャレンジしやすい環境を作ることです。

既存の製造業は「高品質なものを低価格で安定的に供給できる構造」を築いてきました。自動車産業においては、高品質な製品を低コストで顧客に届けるために、この構造が機能してきました。そのため、この構造自体を否定するつもりはありません。

しかし、現在はVUCAの時代と言われ、海外スタートアップなどのスピード感にも追従する必要があります。そのため、新しい領域に挑戦しようとするスタートアップや、大企業の新規事業は、既存の構造に固執せず、最適な産業構造を模索する必要もあるはずです。

そこで、私たちは既存の構造にはない、モノづくりの環境を実現したいと考えています。その一つの手段として、私たちがプロダクト開発支援を通じて蓄積するノウハウを「価値化」することを目指しています。

これはまだ構想段階ですが、具体的には、モノづくりの過程で生まれる「失敗」や「試行錯誤」の結果、つまりは「経験」そのものを価値として、売買できる仕組みを作りたいと考えています。例えば、グルメサイトのように、様々な企業の経験に「点数」を付け、それらをデータベース化することで、資金力のある企業は、そのデータベースから必要な経験を「買う」ことで、失敗のリスクを減らし、成功の確率を高めることができます。開発期間の短縮にもつながります。

もちろん、最初からこの仕組みを販売しても、その価値を理解してもらうのは難しいでしょう。ですから、まずは地道にコンサルティングという形で顧客に価値を提供し、課題をヒアリングし、それを基にビジョンを磨き上げていく。それが、今の私たちに必要なステップだと考えています。

トヨタ 西田様:
今後の「要件定義支援サービス」の課題は、売上を伸ばしていくことです。そのためには、顧客の要望を実現し、高品質なモノづくりを支援するデリバリー体制の強化が不可欠です。

現在、この業務は数名のチームで対応していますが、今後はこのデリバリー体制をさらに強化し、より多くの案件に対応できるようにすることで、売上確度を高めていく必要があります。具体的には、マーケティング活動を通じて新規顧客を増やし、それらの顧客の要望に応えられるだけのデリバリー体制を構築していくことが求められます。

私が主に担当しているのは、このデリバリープロセスの自動化です。生成AIなどの先端技術を活用し、業務を効率化することを目指しています。具体的には、過去のプロジェクトで蓄積されたノウハウをデータベース化し、そこから必要な情報を迅速に引き出せるような、いわば「知識のプール」を構築したいと考えています。この取り組みが実現すれば、業務スピードを大幅に向上させ、より多くの顧客に価値を提供できるようになると確信しています。


──最後にAlphaDriveとして、これからどのようにEdesonチームを支援していきたいとお考えか、お聞かせください。

AD古川:
これからもコンサルティングを通じて、Edesonチームが目指すべき姿の実現を支援したいと考えています。そのために、勝手ながらぜひとも達成してもらいたい目標が二つあります。

一つは、短期的にはPMF(プロダクト・マーケット・フィット)を達成することです。PMFとは、製品やサービスが市場に適合し、顧客から熱狂的に支持されている状態を指します。PMFは経験できたとしても一生に一度あるかないか、という非常に稀有なものです。

幸い、私はコンサルタントとして、複数回のPMFを経験することができました。そして、実際にPMFを体験すると、「あ、これがPMFか」と直感的に理解できるものです。言葉で定義するのは難しいのですが、寝ていても売上が上がる、人材さえいればいくらでも事業を拡大できる状態になります。体験すればわかる、特別な感覚なのです。ぜひ、横田さんや西田さんにも、このPMFの感覚を味わってもらいたいと願っています。

もう一つは、Edesonというチームが手掛ける事業を、単なる「事業」の枠を超えて、「産業」へと昇華させることです。自動車の例で考えても、当初は「作って売る」という事業でしたが、自動車が走れる道路が整備されたり、ガソリンスタンドが設置されたり、車載製品が展開されたりと、一つの事業から多くの事業が生み出され、今では自動車産業という巨大産業に発展しています。

私は、モノづくりの世界でも、同じようなことが起こせると信じています。「Edesonというチームが存在したからこそ生まれた」と言われるような事業を次々と生み出す、そんな存在にまで押し上げたい。そして、自動車産業を創り上げたように、モノづくり産業を再び活性化させる。そんな夢を一緒に叶えたいと思っています。

AD堀田:
私は、マーケティング支援を通じて、まずは「要件定義支援サービス」の事業成長を確度の高いものにするために、様々な角度からサポートしていきたいと考えています。

まず、短期的な視点では、とくに「展示会」への出展に注力します。展示会は、非常に重要な顧客獲得チャネルです。効果的なことは実証済みですので、今後も継続的に成果を上げていくためのサポートを展開してきたいです。

ただし、直近の数字を達成するだけでなく、数年後、さらにはもっと先の未来を見据え、桁違いの成長を目指していくためには、新たな施策への挑戦が不可欠です。そのため、今年度中には、新しいチャネルの開拓や、新しい施策の検証など、将来に向けた種まきを積極的に行っていきます。

もちろん、これらの取り組みを実行するためには、AlphaDriveの支援体制も柔軟に変化させていく必要があります。検証すべきチャネルや施策は何かを的確に見極め、迅速に仮説検証を実行できるような体制を構築し、Edesonの成長を全力で支援していく。それが、マーケティング支援の使命だと考えています。

※インタビュー内容、役職、所属は取材当時のものです。

執筆・編集:末吉陽子
写真:関口佳代

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