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小野薬品工業

小野薬品工業の新規事業コンテスト「HOPE」。初年度から3件の事業案が最終審査を通過、その全容は

# 事業創出の仕組みづくり

小野薬品工業株式会社では2021年、社員一人ひとりの挑戦を加速させることを目的としたイノベーション人財育成の取り組み「Ono Innovation Platform(OIP)※」の一環として、新規事業創出のビジネスコンテスト「HOPE」を開始。株式会社アルファドライブ(AlphaDrive)の制度設計支援と研修・学習プログラム、メンタリング伴走支援を導入し、初年度から大きな成果を上げています。

成功の要因は「Web検索では得られない、事務局運営の生きたノウハウ」でした。応募数83件、最終審査案5件、事業化検討テーマ※3件。社内外に大きなインパクトを与えたプロジェクトの全容を語っていただきました。

三戸 仁 様

BX推進部 部長

藤山 昌彦 様

BX推進部 OIP室 室長

村上 佑太 様

BX推進部 OIP室 OIP課

猪谷 祐貴

株式会社アルファドライブ

「定期的にイノベーションを生む」企業文化を築くために

AlphaDrive猪谷(以下AD猪谷):
まず、今回のプロジェクトの背景を教えてください。

三戸様:
製薬企業が成長する上で避けて通れないものに「パテントクリフ※」──特許切れという大きな崖があります。ひとつ新薬を生み出したらそれで安心というわけではなく、定期的に新薬を開発し続けなければいけない、つまりイノベーションが必要なわけです。

しかし、自主的にイノベーションを起こすことができるのは、何千人の社員がいてもほんの数名程度です。そんな「宝くじ」のような確率の「当たり」を待つのではなく、定期的にイノベーションが生まれる仕組みをつくる必要があると考えました。

そこで、イノベーションに関する学習・経験を通して、自発的な挑戦を生み出していく新規事業のビジネスコンテスト「HOPE」を計画しました。事業創出だけでなく、イノベーションに挑戦する企業文化を醸成していきたい。多くの社員が参加したくなるコンテストを目指すことにしました。

プロジェクト開始時は私が主に業務を行っていましたが、徐々にメンバーを拡充し、現在は6名体制で運営しています。

※パテントクリフ(特許の崖):新薬の特許期間満了に伴って、売上が急落すること。

Web検索ではヒットしない「生きた知見」が必要

AD猪谷:
AlphaDriveの支援を導入いただいた決め手は何でしたか。

三戸様:
「HOPE」を開始する前に、時間をかけてさまざまな調査を行いました。社内でインタビューを行い、どのような内容であれば参加しやすいか、そのためにどのようなサポートが必要かといった要素を洗い出しました。さらに、ビジネスコンテストを行っている他社に話を聞きにいったこともあります。

そうした調査を経て「コンテストの運営にはプロの力が必要だ」という結論に至りました。計画はできても、実際の運営には私たちの知らない多くのノウハウが必要となります。また、リサーチして気づいたのですが、新規事業創出やコンテスト運営に関する情報というのは、Web検索では得られないものでした。

AD猪谷:
三戸様は最初の打ち合わせの際、「私たちが知らないことを教えてほしい」とおっしゃっていましたね。

三戸様:
ええ、実際の「生きた知見」であることが、非常に重要でした。AlphaDriveさんは「新規事業や事務局運営の経験がある人物」が伴走してくれますよね。これが選定の決め手になりました。

AD猪谷:
私たちAlphaDriveでは、初期の計画から提案することが多いのですが、小野薬品工業様の場合は、すでにしっかりとした計画ができていました。私たちにできることは、計画に対して具体的な施策を肉付けし、運営を実行すること。事務局の皆さんに伴走し、施策の実行やアドバイスに注力することにしました。

三戸様:
加えて、支援サービスの中に、動画学習の「NewsPicks Leaning※」があるのもポイントでした。多くの社員はメインの業務をこなしながらコンテストに参加するため、まとまった時間が取りにくいものです。「NewsPicks Leaning」であれば、各自の空き時間に視聴できるため、新規事業に対する意識醸成やスキルアップの支援が行いやすいと考えました。

NewsPicks Lerningの学習コンテンツ(一部)

※NewsPicks Leaning:グループ企業のNewsPicksが手がける動画学習プラットフォーム。「HOPE」の支援では、参加者を対象にした動画学習や、勉強会などを行った。

トップメッセージで、会社の「本気度」を伝える

AD猪谷:
ここからは、ビジネスコンテストの運営について詳しく聞いていきます。「HOPE」では約9カ月かけて、募集から審査までのさまざまな施策を実行していきました。最初の「募集」のステップにおける具体的な取り組みについて教えてください。

藤山様:
「HOPE」は新しい取り組みですので、まずは社員に存在を知ってもらう必要があります。コンテストの名称を決め、デザイナーにロゴをつくってもらうなど、クリエイティブ面を準備しました。ちなみに「HOPE」の名称には「審査する・される」という印象がある「コンテスト」の要素をなくし、参加のハードルを下げる意図があります。

準備が整ったら、全社への告知です。最初のインパクトが重要だと考え、社長や経営陣からメッセージを発信してもらうことにしました。プロジェクトに経営のトップが登場することで、ビジネスコンテストに対する会社の「本気度」が伝わります。こうした空気づくりは、新しいプロジェクトにおいてとても大切だと思います。

三戸様:
社長のメッセージは「(HOPEに参加することで)チームに迷惑かけてもいい。何かあれば会社がカバーする」という内容でした。これは、社員に刺さったと思います。

実は、事前に行っていた「HOPE」に対する社内のアンケートで、「現業とのバランスが崩れて、周囲に迷惑をかけるのではないか」といったネガティブな意見が多く見られました。そこで社長との打ち合わせの際に、こういった社員の心配事を伝えていたのです。結果、社員の懸念を解消してくれる、強いメッセージを発信してもらうことができました。

「HOPE」で使用したクリエイティブ

募集段階は「コンテンツ」によるアプローチが有効

藤山様:
また、応募を促すために多くのコンテンツを用意しました。例えば、AlphaDrive CEOの麻生要一さんの講演もそのひとつです。「普通の会社員でも新規事業開発を実現できる」という麻生さんのメッセージは、社員にとって大きな刺激になりました。

三戸様:
このフェーズでは、実際に社員と会う回数を増やすことも心がけました。私と藤山の2名で「オンライン相談会」もやりましたね。毎週金曜、1人15分程度を3〜4時間。応募しようか迷っている社員の心配事をひたすら聞くという……これは大変でした(笑)。でも実際に話を聞くと、不安や迷い、悩みといった、リアルな声を得られるものです。そうした情報を集めながら、制度の改善を繰り返しました。

「HOPE」の募集フェーズで発信したコンテンツ(一部)

AD猪谷:
結果、83件のエントリーが集まりました。これは当初の目標の2倍以上、大きな成果と言えます。

三戸様:
社長メッセージにゲスト講演、個別の相談会、エントリーシートの書き方のレクチャーも。できる限りのことを実行しましたので、その結果だと思います。

審査で重要視すべきは「内容」より「熱意」

AD猪谷:
ここからは「審査」について振り返っていただきます。「HOPE」では、エントリーした起案者全員にメンタリングや学習支援を行い、約2カ月かけて事業案をブラッシュアップ。その上で書類審査を実施しました。

藤山様:
審査項目や基準の設定については、猪谷さんから特に多くのアドバイスをいただきましたね。その上で、書類審査の基準は「事業案の内容」ではなく、起案者の「熱意」を見ることにしました。

AD猪谷:
一般にビジネスコンテストの審査は、市場規模や利益などの観点で行いがちです。しかし、新規事業の本質は「顧客課題の解決」にあります。そして顧客課題を検証するには膨大な数の顧客ヒアリングが必要です。これは相当の「熱意」がなければ実行できません。

藤山様:
「熱意」は、顧客ヒアリングをどの程度行っているかという「行動量」を見れば、ある程度判断することができます。書類から判断しづらい場合は、起案者と面談を設け、本人の想いを確認しました。

AD猪谷:
事務局の皆さんは起案者一人ひとりの「熱意」と向き合い、時には面談まで行いました。手間と時間はかかりましたが、社内に一貫した姿勢を見せることができたと思います。

社内を知る「コミュニティマネージャー」の存在が不可欠

AD猪谷:
事務局メンバーの村上様は当初、起案者として「HOPE」に挑戦し、その後に事務局に参加されています。

村上様:
私は当初、本当に軽い気持ちで、それこそ社長のメッセージを見てエントリーしました。結果は書類審査で落選となりましたが、その後に声をかけていただき、運営に携わることになりました。

三戸様:
「HOPE」に参加する社員たちの様子は、事務局としてよく観察しています。プログラムの中で村上は、非常に前向きに取り組み、周囲に好影響を与える発信を自然に行っていた姿が印象的でした。まさに「コミュニティマネージャー」に最適だと思ったのです。

今だから言いますが、審査の時から、猪谷さん含めてずっと「村上を事務局に呼ぼう」と話していたんですよ。

村上様:
そうだったのですね(笑)。運営側に回り、書類審査を通過した同期入社の社員の事業案を見たのですが、熱量が本当に高くて驚いた記憶があります。それから、エントリーした起案者を事務局としてサポートしていきたいと、強く思うようになりました。実際のエントリー経験は、事務局運営時の活力につながっていると思います。

三戸様:
実は、私も藤山も、別の会社からきた転職組です。一方で、村上は新卒で小野薬品工業に入社し、営業部門で10年以上の経験を積んできたプロパーです。会社の歴史や文化をよく理解していて、社内のつながりを持つ彼が運営に入ることで、「HOPE」は社員にとって身近な存在になります。例えば、事務局として営業部門に説明するようなケースでも、私が話すよりも村上が話す方が、みんな安心して聞いてくれるものです。

村上様:
最近、「『HOPE』ってどうなの?」と、個別に相談をもらうことが増えました。「HOPE」に対する社内の興味は非常に高い一方、まだまだ不安も大きいということを、肌で感じています。説明会のようなシーンでも、個別の相談でも、社内の不安をできるだけ取り除いていきたいです。

AD猪谷:
ビジネスコンテストの運営には、会社のことを深く知る存在が必要不可欠です。村上様が事務局に加わったことは「HOPE」成功の大きな要因になったと言えます。

500人が見守る最終審査。社長が驚いた、社員たちの情熱

AD猪谷:
そして最終審査では、5案のプレゼンが行われ、3案の事業化検討テーマが決定。私も同席していましたが、皆さんの熱のこもったプレゼンテーションに圧倒されました。感極まって涙する人もいましたね。

三戸様:
私たち全員、感動して泣いていましたよ(笑)。正直に言うと、直前までは事業化検討テーマがゼロでもおかしくないと考えていましたし、社長にも「初年度はクオリティーは求めないでほしい」と話していました。ところが審査本番では、5名とも本当に素晴らしいプレゼン。社長をはじめとする経営陣も皆、本当に驚いていましたよ。

「HOPE」最終審査の様子

藤山様:
最終審査に進んだ5名はプレゼンの経験が少ない人たちばかりでしたので、練習には苦労していましたね。制限時間の中で、自分の想いや事業のポイントをどう伝えればいいか、非常に苦しんだ上での挑戦だったと思います。なによりも素晴らしかったのは、全員が当事者意識を持って、自分の言葉でプレゼンしていたこと。猪谷さんのメンタリングを受け、顧客のもとへ何度も足を運び、課題と向き合ってきた、その結果だと思います。

AD猪谷:
課題の解決に向けて「自分がやらなければ誰がやるんだ」というほどの強いマインドがなければ、もし審査を通過したとしても事業化後に本人が苦しむことになります。皆さんのプレゼンからは、心から課題を解決したいという想いが伝わってきました。

藤山様:
また、審査の様子は全社に配信しました。リアルタイムの視聴は500人程度と、社内イベントとしてはかなりの視聴数です。彼らの姿から「小野の社員はすごいぞ」ということが、しっかり伝えられたと思います。動画を見た人が刺激を受けて、次回の「HOPE」に取り組んでくれるとうれしいですね。

新規事業2年生、3年生に必要なスキルとは

AD猪谷:
1年目の「HOPE」は、事業化検討テーマ3件という結果を残すことができました。今後はどのような取り組みが必要だとお考えですか。

三戸様:
現在、「HOPE」の参加者へ提供しているプログラムは、いわば「新規事業1年生向けレクチャー」です。今後はさらにクオリティーを上げて「新規事業2年生、3年生向けレクチャー」にも段階的に取り組んでいきたいですね。AlphaDriveさんにはその支援も期待しています。

AD猪谷:
例えば、フレームにあわせて企画するのだけでなく、自ら事業計画を書き、コストを分解し、実現可能性を検討するための実務研修、さらに新規事業がローンチ後、いかに膨らませていくかという観点での事業構想ワークショップなどが考えられます。習熟レベルごとのプログラム設計は、まさに我々が現在向き合っているテーマですので、お力になれると思います。

質を高め、結果を追い求めていく

AD猪谷:
最後に、「HOPE」の今後の展望についてのコメントをお願いします。

村上様:
「HOPE」に応募してくれた社員をサポートしていくためには、私たち事務局メンバーのさらなるレベルアップも必要だと思います。私自身は応募者に寄り添えるようスキルを磨き、支援を行っていきたいです。

藤山様:
イノベーションが生まれる風土を醸成するだけではなく、成果も絶対に必要です。「HOPE」から生まれた新規事業が、成長して利益につながっていく過程もサポートしていきたいですね。

三戸様:
ゆくゆくは「HOPE」のオープンイノベーション化も検討したいですね。小野薬品工業だけでなく他の業種の人たちと合同で実施し、互いの強みを掛け合わせることで、まったく新しい事業が生まれるかもしれません。

「HOPE」事務局メンバーの声

渡邊 真理様

「HOPE」のプロジェクト内で使用する動画やサイトの制作など、クリエイティブ領域を担当しています。「HOPE」はチャレンジする起案者が主役。その姿が輝いて見えるようにサポートしていきたいですし、より全社が盛り上がる取り組みにしていきたいです。

木下 翔太様

「HOPE」は、当社が持つ課題や、目指すべき方向にマッチしている、非常に重要なプロジェクトだと感じています。挑戦している起案者の情熱的な姿には、胸を打つものがありました。今後の運営を通して、会社の利益につながる事業の創出をお手伝いしていきたいです。

山本尚弘様

事務局の一員になる前のことですが、昔同じ支店で一緒に仕事をしていた後輩が、審査会の場で生き生きとプレゼンをしている様子を見て、鳥肌が立ったのを覚えています。社員や会社の可能性を広げる「HOPE」は当社にとって重要な取り組みになっていると感じています。

プロジェクト担当者:猪谷祐貴
執筆:牧浦豊
構成:大久保敬太
写真:水野浩志

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