Interview (クライアントインタビュー)

Client

メタルワン

メタルワン、社員の潜在能力を引き出す人材育成のための新規事業プログラムとは

# 事業創出の仕組みづくり

株式会社メタルワンは、株式会社アルファドライブ(AlphaDrive)の新規事業開発人材育成プログラムの設計支援とプロセス伴走支援を受け、人材育成プログラム「事業創造チャレンジ」を2021年より立ち上げました。
参加者に向けたキックオフセミナーで好調なスタートダッシュを決めて以降、社内に数々の変化があったそうです。

社員の当事者意識が引き出され、社内の文化が変わりつつあるというメタルワン。事務局メンバーたちの「事業創造チャレンジ」にかけた思いと、本プログラムが組織にもたらした変化について話を聞きました。

榎本 彩子 様

事業開発部 マネージャー

内川 浩樹 様

事業開発部 マネージャー

松浦 由佳 様

経営企画部 営業戦略ユニット

竹渕 竜斗 様

人事部 人材開発ユニット

加藤 隼

株式会社アルファドライブ 執行役員 アクセラレーション事業責任者

長い議論の末辿り着いた、「激変の時代に必要な人材」とは?

AlphaDrive(以下AD)加藤:
AlphaDriveにご依頼いただいた経緯を教えてください。

榎本様:
弊社を取り巻く事業環境の変化が大きく関係しています。激変の時代であるいま、あらゆる変化に迅速に対応していくには、従来型のビジネスだけでは難しいという議論を社内で行っていました。

その結果、これらの変化に対応して生き残り、将来の成長を実現するためには、新しい事業を開発し推進できる人材が必要不可欠だという結論に至りました。持続的に新規事業を創出するためには事業開発人材の育成と「常に事業創造にチャレンジできる組織風土」の醸成が急務でした。

内川様:
AlphaDrive代表の麻生要一さんの著書『新規事業の実践論』(ニューズピックス、2019年)を読みました。「新規事業は、学べば誰でもできる」と書いてあるのを見て勇気をもらい、弊社も挑戦しようと思えましたね。

我々商社は国内だけでなく、海外にも多くのお客様がいます。幅広いクライアント様のご要望を取り入れて事業をつくり、業態を少しずつ変えながら実績を積んできました。そのため、顧客起点で新しいビジネスをつくるという考えのAlphaDriveさんに、非常に共感しました。

弊社は2020年4月に、事業開発部という新規事業の発掘・企画・立案・実行を目的とした新しい組織を立ち上げていました。約20名の組織ですが、特定の組織のメンバーだけでなく、全社一丸となって取り組まなければ、事業を生み出す文化をつくることはできないと当時実感していました。

榎本様:
プログラムの立ち上げにあたって、AlphaDriveさん含め何社かご支援いただけそうな企業を検討しました。その中でAlphaDriveさんを選ばせていただいた理由は、企業内のイノベーション創出に特化していたからです。

AlphaDriveさんからいただいた提案書には、「新規事業開発は人や文化の醸成が第一である」とありました。我々も、今回新規事業開発人材の育成に取り組むと決めて以来、新規事業をつくること以上に人材育成と文化の醸成を重要視していました。まさにAlphaDriveさんと弊社の考えがマッチした点でした。

また、AlphaDriveさんには上場企業を中心とした豊富な支援実績があります。しかも、コンサルタントは1人もおらず、事業開発の経験者がメンタリングしてくださる。このような理由と経緯からAlphaDriveさんに支援を依頼し、人材育成プログラム「事業創造チャレンジ」の立ち上げに至りました。

AD加藤:
AlphaDriveは「新規事業開発とは事業づくりである以上に、人づくりであり文化づくりである」と考え、支援活動をしています。この考えにご共感いただけたことは、弊社が伴走支援をさせていただく上で非常に重要な点でした。お互いの根本の思想に齟齬があると、ご支援の効果が最大化されないこともあるからです。

事務局の方々から組織に対する課題と目標について伺った時、僕自身非常に共感しました。同じ考えを持ったメタルワン様とご一緒したいと心の底から思ったのを鮮明に覚えています。

座学だけじゃない。新規事業開発人材になるための「必須セッション」とは

内川様:
「事業創造チャレンジ」のテーマは、「情熱と好奇心で切り拓け!」です。

2021年2月からプログラムの告知を始め、3月にエントリーを受け付けました。肝心なエントリー者数ですが、最終的に53名もの社員がプログラムにエントリーしてくれました。事務局が期待していた応募数より多かったですね。

榎本様:
今回「事業創造チャレンジ」では、合計12本のインプットセッションと事業検証セッションを行いました。

インプットセッションの内容は、鉄鋼業界を含めた様々な業界のトレンド・潮流について理解を深められる業界潮流理解系セッションと、AlphaDriveさんによる新規事業開発のプロセスについて基礎から学べる新規事業開発系セッションに分かれます。

更に座学のみならず、麻生さんの著書『新規事業の実践論』にもあったように、実際に事業の初期開発を経験することは非常に重要なので、事業検証セッションを設けました。このセッションでは、3ヶ月かけて実際にお客様にヒアリングをして課題を見つけ出し、ソリューション仮説を立てるというプロセスを疑似体験してもらいました。

事務局メンバーも驚愕。社員の目の色が変わった瞬間

松浦様:
インプットセッションは非常に盛り上がりましたね。業界潮流理解系セッションの初回では、参加者から多くの質問が寄せられ、セミナー時間が足りないほどでした。こんなに社員が目の色を変え、アクティブに参加している社内セミナーは初めて見ました。

内川様:
同じくキックオフセミナーでも、非常に大きな反響がありましたね。「事業創造チャレンジ」開始前、AlphaDriveさんのスタジオをお借りし、テレビ番組のような演出でキックオフセミナーを行いました。これには僕自身、「組織の機運を変える1つの施策にする」という意気込みで臨みました。

初めての取り組みで緊張しましたが、世界中から約370名もの社員が参加してくれました。「今までとは違うメタルワン」を社員に見せたかったので、このようなキックオフセミナーをAlphaDriveさんと一緒に配信できて良かったです。

おかげで多くの社員から質問や様々なコメントが寄せられ、好調なスタートダッシュを切ることができました。

AD加藤:
伴走させていただく中で、事務局の皆様から強い当事者意識を感じました。非常に忙しかったにもかかわらず、一人ひとりが主導しプログラムを推進されていました。

内川様:
確かに忙しかったです(笑)。何度も事務局や加藤さんと話し合ったおかげで、キックオフセミナーを始めとして全ての施策を無事に完了させることができたと思います。

応募数が少ない!その時事務局がとった行動は?

内川様:
エントリー開始日に早速2件応募があり、それが物凄く嬉しかった事を今でも覚えています。

榎本様:
募集開始日時ぴったりに、1人目の提出がありましたね(笑)。

内川様:
はい。応募者の熱意を感じて嬉しかったですね。しかし、3月31日が締め切りだったにもかかわらず、3月29日時点の応募はたった4件。予定では審査を通して全体の応募から20人に絞るはずでした。締め切り直前、こんな少ない応募数で大丈夫だろうかと危機感と焦りを感じました。

ただ、ここに至るまでに事前にできるベストは尽くしていました。それは、事務局メンバーがプログラムに興味がありそうな社員にそれぞれ分担して個別にアプローチ・応募に向けたフォローを実施し続けたことです。話してみると「挑戦することが怖い」「選考に落ちたくない」といった声があり、プログラムへの応募に対する社員の不安や本音が見えました。それでも事務局メンバーみんな諦めずに、候補者の背中を押し続けました。

僕はアプローチした社員から「チャレンジしたいが、エントリーシートが書けない」という声を受け、夜中まで相談に乗ることもありました。人材育成を目的としている以上、とにかくみなさんに挑戦してほしかったので、相談してくれた人には全力でサポートしました。その熱量がほかの方にも伝わったのか、締め切り直前に駆け込むように複数件の応募がありました。

AD加藤:
キックオフセミナーの開催や審査など、AlphaDriveがサポートした面もあったのですが、どれも事務局の皆様の努力と活動ありきの結果でした。いま振り返っても、素晴らしいチームワークだったと思います。

ずっと課題を感じていた。答えを探すために、自ら飛び込んだ

内川様:
我々事務局メンバーの中には、自ら手を挙げてメンバーとなり、さらにはエントリーシートまで書いてしまった社員がいます。

竹渕様:
はい。僕ですね(笑)。人事部に所属していることもあり、日頃から組織変革について考えていました。時代の流れに取り残されないために、組織にはどのような変化が必要なのか。具体的な課題と解決法が見つからず悩む日が続いていたちょうどその頃、なにやら新規事業に関するプログラムを設計しているという噂を耳にし、自ら事務局の方々にアプローチしました。

内川様:
「何がなんでも事務局に入りたいです」と自ら志願したことは伝説になっています。

竹渕様:
当時は新規事業に関する知識は全くありませんでした。しかし、事務局としてプログラムを設計・運営することで組織の課題に触れ、自らの提案と行動で会社をより良い方向に変えることができると思うと、チャレンジしたい気持ちが次第に大きくなりました。

事務局として活動していくうちに、応募者側に立って考えないと見えない部分があるのではないかと思うようになりました。参加者への理解をより深めるために、事務局としてプログラムを推進しながら自らエントリーシートを書いてみました。実際に自分ごととして考えてみたからこそ、参加者の皆さんが考える事も少しずつ分かるようになり、事務局としてのアプローチも変わったと思います。事務局として活動しながら学んだことを次に活かすためにも今度は参加者として必ず応募しようと思っています。

AD加藤:
竹渕様含め、起案者の皆様の当事者意識の高さには驚きました。本来、どの組織でも若手社員が組織の課題について考えたり疑問を持ったりするのは難しいことです。しかし、起案者皆様のエントリーシートを拝見すると、組織の未来を見据えた事業案が非常に多かったです。若手社員の「自分の手で組織、会社を変える」という思いがほとばしっていました。

通過が叶わなかった案件にもフィードバック。起案者全員が「新規事業に触れたことがある人」に

榎本様:
AlphaDriveさんの伴走支援は期待以上でした。特に、エントリーシートの審査には非常に満足しています。プログラム中、加藤さんは全ての案件に、起案者も満足のいく前向きなレポートを書いてくれました。フィードバックレポートを書いてくださるという提案は、他社にはなかった支援内容であり、もともと楽しみにしていました。

AD加藤:
今回審査したエントリーシートは想像以上の量と質でした。どれも応募者の「組織に対する健全な危機感」が伝わってくる内容でしたね。日々接しているお客様の課題を適切に捉えて書いている方が多かったです。中には、普段営業やお付き合いをしているだけでは出てこないような課題まで踏み込んでいました。ここまで顧客の課題について考え理解している挑戦者が多いことから、普段よりお客様と丁寧に接していることがわかりました。

これまで数々の伴走支援を通して大量のエントリーシートを審査してきたのですが、語弊を恐れずに言うと、あまり中身を詰めずに「とりあえず提出しておこう」という方は一定数います。今回メタルワン様のプログラムでは50件を超える応募があったのですが、どれも思いが込められた濃密なエントリーシートでした。

榎本様:
このフィードバックは、弊社の新規事業開発の基盤づくりにおいて重要な役割を果たしました。通過が叶わなかった案件にもレポートを書いてもらえることで、起案者全員が少なくとも「新規事業開発に触れたことがある人」になれます。

今回事業創造チャレンジで通過したメンバーは20人。例えば、今後このプログラムを5年続けると事業開発経験者や知識のある人材は100人以上になり、新規事業開発人材が社内にどんどん増えていきます。加藤さんの丁寧で的確な審査は、「事業創造チャレンジ」に欠かせないプロセスでした。

松浦様:
そうですね、今回、経営層からも多々理解・支援を得ることができました。弊社社長は、社内外各紙インタビューにおいて「事業創造チャレンジ」について言及しています。私は経営企画部にいるので経営層の反応を直接聞くことがあるのですが、今年度のプログラムは総じて評価が得られたことを受け、来年度以降も続けていく上で弾みがつきました。

思いが炸裂。通過できなかった社員へのフォローアップも

内川様:
審査を通して53名から20名に絞るのはかなりエネルギーが必要でした。そこで、僕たちはエントリーしてくれた社員に感謝の印として何かできないか考えていました。加藤さんに相談すると、審査通過が叶わなかった社員向けにフォローアップセミナーを開いたらどうかという提案をいただき、実施することになりました。

追加の要望だったにもかかわらず、加藤さんは快く引き受けてくれましたね。加藤さんに講師として登壇してもらい、実際に提出されたエントリーシートをいくつかピックアップしながら、長所と改善点についてレクチャーしてもらいました。

フォローアップセミナーには約30名中、25名が参加してくれました。セミナー中、事業アイデアへの思いを炸裂させた社員も多かったです。社内に「思いが溢れる取り組み」が存在することに、大きな価値を感じました。

「事業創造チャレンジ」が組織にもたらした、数々の変化とは

内川様:
プログラムを通して0→1で事業を生み出すための変化の兆しが見えてきました。僕はメタルワンに来て15年ほど経ち、社員が海外駐在などへの挑戦を希望すれば、誰かがサポートして、実現できる事例は見てきました。しかし、新規事業開発に挑戦したい場合は誰に相談すればいいか、どう進めたら良いかがわからない状態でした。「事業創造チャレンジ」ができたことで新規事業開発のプロセスを学ぶ場が生まれたことは弊社にとって大きな変化です。

榎本様:
本当ですね。私も弊社の環境が「事業を生み出す文化の醸成」に一歩一歩近づいている実感があります。今後プログラムを継続することで、新規事業開発のスキルと知識を持った社員をどんどん増やしていきたいですね。

竹渕様:
今回のプログラムを通して顧客課題の見つけ方を身につけた社員は多いと思います。キックオフセミナーであった、麻生さんによる「300回顧客の話を聞くべき」というお話が非常に印象的でした。既存事業を拡大する上では社内での確認や会議、上司への報告等が多いと思うのですが、麻生さんは新規事業創出においてはそれらはいらないと強調していました。とにかく「顧客の話を聞かないといけないんだ」と。

僕が入社前に描いていた商社のイメージは、「人と人との商売」です。麻生さんの顧客起点の考え方は、そもそも商社と非常にマッチしており、商社の仕事における原点となる思考ではないかと、キックオフセミナーを見て感じました。実際に、営業の視点も変わったという声もありましたね。

このように、今まで我々だけでは醸成できなかった新規事業の創出に必要な価値観、意識がAlphaDriveさんの支援を通して、一気にメタルワンに浸透したと実感しています。

基盤は整った。新規事業開発は、ここからが本番だ

AD加藤:
メタルワン様の新規事業創出に向けた取り組みとして、今後挑戦したいと思っていることを教えてください。

松浦様:
改めて、まずは今回「事業創造チャレンジ2021」を無事に成功させることができて嬉しく思います。これからは、新規事業を持続的に生みだす文化を醸成する仕組みづくりにさらに力を入れていきたいです。具体的には、人材育成を主眼においた「事業創造チャレンジ」に加え、「新規事業案募集制度」を立ち上げます。これは幅広く社員からアイデアを募集し、その中から選抜した案件を、実際に事業化することが目的です。

新規事業案募集制度では「事業創造チャレンジ」と同じように、エントリー時には事業案を提出してもらいます。1次審査通過後、4カ月間かけて案件精査を行い、2次審査を通過したら、事業化検証に進みます。その際、起案者は事業開発部に異動するので、事業開発に集中的に取り組むことができます。起案者に「本気の挑戦」をしてもらう場となりますね。

更なる仕組みの1つとして、仕事をしながら生まれた新規事業の構想や悩みごとを気軽に共有、または情報・意見交換ができる場としてIncubation Suite(新規事業開発特化型の総合支援ツール)を活用したいと考えています。このツールを駆使して、新規事業開発に必要な顧客課題やソリューションについて意見を出しあえるなど、新規事業に関わる人や情報が集う場をつくりたいと考えています。

AD加藤:
最後に、AlphaDriveに期待することについて教えてください。

松浦様:
「文化の醸成」という点では、我々の取り組みはまだまだ始まったばかりです。人材育成の次は仕組みづくり。AlphaDriveさんには、「事業創造チャレンジ2021」で、その確かな経験と知見に基づいて、丁寧かつ的確な支援をしていただけたことはもちろん、事務局と同様の熱量を持って、一緒に走り切ってくださいました。今後もAlphaDriveさんにはこの点しっかり支援していただきたいですね。

AD加藤:
支援中、メタルワン様の組織変革に対する熱意を常に感じていました。その結果、事務局の皆様のおかげで社内に数々の変化が生まれ、新規事業開発人材の育成に大きく貢献するものになったと思います。AlphaDriveの強みは、外部のコンサルタントとしてではなく、当事者として伴走する徹底した支援です。今年度もたらすことができた結果を基に、来年度さらに制度を盛り上げ、新規事業開発における仕組みづくりの支援をさせていただきたいですね。

榎本様:
ありがとうございます。いま、弊社は非常に良い流れで変化しています。参加者の中には、自らのインプットにとどまらず、今回のプログラムを通して得た経験と知識を所属する部署にも還元しようと、学びを共有している人もいました。これが何年も続けばメタルワンはさらに良い会社になると確信しています。

内川様:
そうですね。「事業創造チャレンジ」の目的は、人材育成の先にある「文化の醸成」にあると考えています。

理想は、「事業創造チャレンジ」に参加した社員が、次の新規事業案募集制度にも挑戦し、事業化を実現すること。今後、このような先行例を1つでもつくりたいですね。加藤さんの支援姿勢は、まるで弊社事務局の一員のようでした。おかげで、組織全体が満足のいく施策が生まれたと思います。

「チャレンジし続ける集団」を目指して、次年度も我々事務局と一緒に伴走していただきたいです。これからもよろしくお願いします。

プロジェクト担当者:加藤 隼
執筆:ぺ・リョソン
編集:林 亜季
写真:曽川拓哉

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