Interview (クライアントインタビュー)

Client

株式会社ロッテ

「誰でも挑戦できる」マインド醸成から事業創出まで。ロッテ事業開発チームが感じたAlphaDriveの介在価値

# 事業創出の仕組みづくり

ロッテは次世代の柱となる新規事業の創出と、起業家精神を持った人材の育成を目指し、2022年に社内新規事業開発制度「ミライノベーションプロジェクト」を立ち上げました。社員が自由にアイデアを提案し、自主的に事業を形にするこの制度は、伴走型支援やビジネスモデル構築のノウハウを持つAlphaDriveの支援でさらなる進化を遂げています。

こちらの記事では、制度の背景と設計に込められた狙い、AlphaDriveによる具体的な支援内容、さらに制度から生まれた具体的な成果と社員の変化を紐解き、ロッテが描く未来への展望に迫ります。

株式会社ロッテ 経営戦略部 事業開発課 佐藤崇晴様

2007年にキャリア入社。営業や商品企画を経て、経営企画部門で10年以上にわたり、予算管理やグループ会社の事業管理に従事。2022年に新設された事業開発課に異動し、新規事業開発制度「ミライノベーションプロジェクト」の運営に携わる。経営企画で培った管理力を生かし、事業案の検証や制度運営を支える。

株式会社ロッテ 経営戦略部 事業開発課 課長 久保隆史様

2005年入社後、営業を経て本社で商品戦略部門に所属。ガム・チョコの商品戦略や海外ブランドの展開を担当した後、グループ会社の事業管理にも従事。2022年から経営戦略課に所属し、2023年末に事業開発課へ異動。現在は課長として制度設計や起案者サポートの統括を行うほか、自らも新規事業案の開発に取り組む。

株式会社ロッテ 経営戦略部 事業開発課 毛利真実子様

中央研究所でガムに使用する素材の基礎研究に従事。その後、経営戦略部に異動し、新規事業開発制度の設計や運営を担当。2024年春に育休から復帰後、時短勤務で事業案のサポートに従事。研究職で培った視点を活かし、実務面でのサポートに力を注ぐ。

株式会社アルファドライブ イノベーション事業部 マネージング・ディレクター 小松崎剛史

株式会社インテリジェンス(6年)、楽天株式会社(9年)、株式会社ローソン(5年半)での経験を持つ。インテリジェンスではWebマーケティングや新規メディアの立ち上げなどを経験、楽天では複数の広告サービスの新規立ち上げや拡大成長を統括、ローソンではテクノロジーを活用しての次世代コンビニの推進や各経営課題の解決をマネジメントするとともに社内ビジネスコンテストの運営や自身での新規事業創出に携わる。

株式会社アルファドライブ 豊吉真吾

㈱サンゲツ入社。内装材領域におけるPM業務を経て、社長直下の新規事業創出部署に配属。DIY製品の開発や新規販路開拓など同社の新規事業立上げを推進。ヤマハ㈱では音響・IT領域における商品戦略や社内新規事業公募制度にて事業部の事務局を担当、起案者の伴走支援に従事。自身もアイデアを起案し、自社技術を活用したチーム事業案が最終事業化採択案に選出。大企業での事業開発経験を活かし、AlphaDriveに参画。

主力事業を取り巻く環境変化を受けて、新規事業に成長の活路を見出す


──ロッテ様は、2022年に社内新規事業開発制度「ミライノベーションプロジェクト」を立ち上げました。その背景や目的について教えてください。

ロッテ 佐藤様:
大きな目的は、次世代を担う新たな事業を育てることです。当社の主力事業は、菓子やアイスの製造および販売ですが、食品業界全体が急速に変化しているため、経営層含めて現状に危機感を抱いていました。

そこで、新規事業を推進するため、2020年頃から社内の仕組みについて検討をスタート。当初は経営戦略部の検討チームが中心でしたが、社内公募型の仕組みを導入するためには専門部署が必要であると判断しました。

その結果、2022年に事業開発課の設立と同時に社内新規事業開発制度として社内ビジネスコンテスト「ミライノベーションプロジェクト」を正式にリリースしました。「ミライノベーションプロジェクト」は、アイデアを応募し、審査を経て選ばれた起案者はメンタリングを受けることができます。

応募前には、「ミライアカデミア」で新規事業に関する基礎知識やマインドセットを学ベるほか、コンテスト通過者は「ミライスタジオ」で事業案の本格的な検証を行い、事業化を目指します。

「ミライノベーションプロジェクト」は募集テーマを二つ掲げています。一つは「お口と体の健康」というヘルスケア領域、もう一つは「個人とみんなの幸せ」に関連するウェルビーイングの領域です。特にウェルビーイングに関しては、社員にはまず自由に挑戦してもらいたいと考えています。そのため、応募段階で細かい制約は設けず、積極的に新しいアイデアの芽を育てる姿勢を大切にすることを重視しました。


──2023年からAlphaDriveの支援を導入されました。きっかけについて教えてください。

ロッテ 佐藤様:
初年度の2022年は、起案者が新規事業に取り組むための基礎的な知識やスキルの習得を中心に進めていました。学習の要素が強かったのですが、社員の中には主体的に行動し、顧客と直接対話やヒアリングをしながら、顧客の課題やニーズを確認する社員が一定数いることが明らかになりました。

こうした背景から、2023年はより実践的な取り組みを強化できるのではないかと考え、最適なパートナーとしてAlphaDriveに依頼させていただきました。


──AlphaDriveにどのような支援を期待されていたのでしょうか?

ロッテ 佐藤様:
社員の行動力や実践力をさらに高め、新たなステージへと押し上げる支援を期待していました。AlphaDriveは、数々の新規事業創出に携わってきた専門家がメンターとして社員と向き合い、1on1のメンタリングを通じて事業案を具体化し、ブラッシュアップするスタイルを採用されています。

このアプローチは、社員が自ら考え、積極的に行動する力を引き出すと同時に、新規事業を具体的な形にするために、理論だけでなく実践を通じて体系的にプロセスを進めるものだと感じました。

挑戦を後押しする風土醸成から着手。AlphaDriveならではの意識改革のアプローチ


──では、AlphaDriveの小松崎さんにお伺いします。ロッテ様のミライノベーションプロジェクトについて、どのような支援からスタートされましたか?

AlphaDrive(以下、AD)小松崎:
ロッテ様では、新規事業に挑戦する社員を増やし、実際のエントリー数を増加させることが課題でした。その解決策として、まずは「新規事業は誰でもできる」というメッセージを伝えるため、AlphaDrive代表の麻生が講師を務め、マインド醸成セミナーを実施しました。

社員の皆さんに新規事業への挑戦を促すメッセージを送るほか、ロッテ様の役員と麻生の対談も実施し、会社としてミライノベーションプロジェクトにかける思いや、挑戦を歓迎する姿勢を示しました。これにより、社員に安心感を与え、積極的に挑戦できる環境を作り出しました。

また、新規事業の実践段階における課題にも対応しました。例えば、初めての挑戦者が新規事業に取り組む際に、無理なく進めていただけるようにステージゲート制度のスケジュールの改善提案を行いました。これにより、挑戦者が適切な時間軸のなかで活動に取り組めることを実現しました。こうした取り組みにより、マインドセットの醸成と実践的な活動面の支援を両立させ、社員が主体的に行動できる体制を整えました。

ロッテ 毛利様:
麻生さんと当社役員の対談では、役員が外部の専門家と対等に議論する姿を目にしたことで、「こんなことができそうだ」と可能性を感じることができました。それまで、本当に新規事業を立ち上げることができるのだろうかと、懐疑的な見方を持つ社員も少なくありませんでしたが、「会社が本気で取り組んでいる」というメッセージが伝わったことで、不安が払拭されたと思います。

ロッテ 久保様:
セミナーや対談は、「新規事業は誰でもできる」というメッセージを社内に広げ、多くの社員が参加を希望する契機となりました。以前は新規事業への挑戦がしづらい空気がありましたが、これらの取り組みを通じて風土が大きく変わったと感じています。特に、役員が直接「この制度に飛び込んでほしい」と呼びかけたことは社員に強く響き、挑戦する文化が根付くきっかけとなりました。

また、麻生さんのセミナーでは堅苦しい形式ではなく、「一緒にやろう」というフランクで親しみやすい空気感が社員を後押ししました。その結果、応募数が大幅に増加し、挑戦する社員が目に見えて増えたことは、取り組みの成果を象徴するものだと感じています。

82件の応募から10チームを選出。メンタリングで事業の実現可能性を高める


──初年度の応募46件から、AlphaDriveの支援がスタートした2年目は82件に増加。書類審査を通過した10チームが、AlphaDriveのメンタリングを受けたと伺っています。メンタリングの内容について教えてください。

AD 小松崎:
新規事業開発は、まず「想定する顧客課題の実証」から始まります。ミライノベーションプロジェクトに参加しているロッテ様の社員は、就業時間の20%を新規事業開発に充てられます。そこで、この時間を活用し、最初の3ヵ月間は顧客ヒアリングを通して課題の有無を確認し、仮説検証に注力していただきました。この段階では、「どの顧客に話を聞くべきか」や「どのような質問をすれば課題を明確にできるか」について、メンターと相談しながら実行していきました。

3ヵ月間のヒアリングフェーズが終了すると、顧客が抱える課題が実証されたかどうかを審査します。その後、次の4~5ヵ月間では、実証した課題を解決するための具体的な方法を模索するフェーズに移行します。メンタリングを2つのフェーズに分けて仮説検証を深め、事業案の精度を高めるプロセスを進めました。

AD 豊吉:
私はメンターとして、起案者の皆さまと一緒に新規事業を進める伴走役を担当しました。特に意識しているのは、顧客が本当に課題を抱えているのかを見極めることです。この顧客課題検証のフェーズでは、想定した顧客にヒアリングを行い、課題が存在するか、強い痛みを感じているかを確認します。この段階では、誰に話を聞くべきか、どんな質問をすべきかを具体的にアドバイスし、一緒に進める形でサポートします。

その次の具体的な課題解決方法を固めるフェーズでは、ヒアリング結果を踏まえ、顧客課題に対する解決策を顧客に提案し、その妥当性を実証するプロセスを進めます。このフェーズでは、解決策が顧客に「刺さる」かどうか、プロトタイピングという手法を通じて検証します。

単にアイデアを試すだけではありません。顧客の反応を丹念に観察し、何が価値として受け入れられたのか、何の課題を解消したのかを細かく分析しながら解決策を修正します。そして、修正した解決策をまた顧客にもっていくことを繰り返していきます。事業開発における仮説検証では、この顧客と対話しつづけるプロセスが非常に重要であり、常に顧客の声を深く理解し、答えは顧客のみが知っているということを前提に、解決策やソリューションを磨き上げることに注力しました。


──メンタリングで印象に残っているエピソードを聞かせてください。

AD 小松崎:
顧客課題実証フェーズでは、いかに本当の顧客に向き合い、実際に課題を確認できるかが重要でした。私がメンターを担当した起案者の方は、学校の先生を対象とするプロジェクトに取り組んでおり、先生だけでなく教育委員会へのアプローチも必要でした。最初は高いハードルに対して二の足を踏む場面もありましたが、あえて挑戦的なタスクを設定し、早い段階で現場に足を運べるよう支援しました。

顧客に直接触れることで、当初の仮説が間違っていることに気づき、新たな方向性を見出していく姿勢が生まれました。起案者の熱意と、丁寧に現場の声を拾い上げていく姿勢が相まって、より良い解決策を導き出せたことが印象的です。

AD 豊吉:
私がメンターを担当した起案者の方は、妊婦さんの食べづわり課題をテーマに事業開発に取り組まれていました。当初は、起案者の方に食べづわりの原体験がなく、事業開発経験も少ないこともあり、最後まで走り切れるか不安でした。また、解決策として既存事業に近い解決策に留まっており、事業開発が難航する予感もありました。

しかしながら、いざメンタリングが始まると、起案者の方は圧倒的な行動力でヒアリングを重ね、その不安を一掃していきました。顧客の課題を深ぼる中で、「食べたいものがコロコロ変わる」という課題から「食べたいものが瞬時にわかる」という提供価値に気付き、アプリなど別のアプローチを模索していきました。

次に、フォロワーを多数持つ産科医に協力を依頼し、7,500名という驚異の数の顧客ヒアリングを実施した結果、提供価値がさらに明確化され、妊婦の方の体調・嗜好に最適化した新しい食品配達サービスという解決策に辿り着きました。

最終的には、数名のお客様に喜んで頂いている段階まで検証を重ね、素晴らしい成果を挙げられていたのが印象的でした。改めて事業開発においては、本人の課題解決への想いが重要であることを感じた事例でした。

柔軟な支援と信頼関係が生む成長。プロのメンタリングで社員が大きく変化


──AlphaDriveのメンタリングについて、どのような手応えを感じられましたか?

ロッテ 佐藤様:
メンタリングでは、社員が課題にしっかり向き合い、高いハードルを乗り越えられるよう適切にナビゲートしてもらえた点が印象的でした。例えば、起案者の中には情報システムを担当する内勤職で、対外的な活動には不得手な社員もいました。しかし、小松崎さんの支援で、顧客へのヒアリングに関するハードルを一つずつクリアしていきました。この過程で、適切な目標を設定し、それを乗り越える経験が成長につながったと思います。

また、豊吉さんのメンタリングでは、起案者が行き詰った際に、通常のメンタリングとは別に打ち合わせを設け、方向修正を行ってくださったこともあります。起案者の想いを汲み取りながら、前に進むために適切なアシストをしてくださるところが、プロフェッショナルだと感じました。

ロッテ 久保様:
書類審査時点ではぼんやりしていたアイデアが、メンタリングを通して具体的で実現可能な形にブラッシュアップされていく様子に驚きました。また、引っ込み思案だった社員が自信を持ってプレゼンを行う姿にも感銘を受けました。顧客へのアプローチや課題解決に向けた積極的な行動が、堂々とした発表へと繋がっていたと感じます。

AlphaDriveのメンターは、起案者に過度な指示を与えず、自発的に考えさせる環境を整えながら、必要なタイミングで的確なアドバイスを提供してくれます。この支援体制が、プレゼン時の堂々とした態度や課題解決力の向上に直結していると感じました。

ロッテ 毛利様:
特に印象的だったのは、メンターが起案者一人ひとりの事業内容や状況に応じて、メンタリングの方向性や伝え方を柔軟に変えている点です。それぞれの起案者に合った方法を見つけ、進めてくださっていることが感じられました。例えば、ヒアリングが得意ではなさそうな方には適切なアプローチを考えたり、メインの業務の忙しさやパーソナリティに応じて進め方を調整されたりしているように見受けられます。

また、悩みを共有しやすい信頼関係を早い段階で築きながら、必要な場面では適切にアドバイスを行い、間違いがあれば正してくださる点にも専門性の高さを感じました。特に、若手には寄り添う姿勢で、ベテランには別のアプローチを取るなど、経験に裏打ちされた柔軟な対応が印象的でした。メンターとの信頼関係が基盤にあったからこそ、起案者も安心して「この人と相談して進めていこう」と思えたようです。

事業化の進展と挑戦の拡大。誰もが挑戦できる文化を目指す


──事業化の現状とAlphaDriveに期待することについて教えてください。

ロッテ 佐藤様:
最終審査を通過した起案者は、事業開発課に異動し、専任として事業検証に取り組んでいます。

AlphaDriveの伴走により、応募者の数と内容の質が確実に向上しました。役員からも「アイデアの中身が良くなっている」という評価を得ています。ただ、社員数を考えれば、挑戦をさらに拡大する余地があると考えています。新規事業の挑戦を「一部の特別な人の取り組み」ではなく、「誰もが参加できる文化」にすることを目指し、挑戦の輪を広げていきたいと考えています。

ロッテ 毛利様:
AlphaDriveのメンターと起案者のメンタリングに同席するようになり、私が想像していた以上にロッテには意欲的な人材がいることを実感しました。起案者自身の素質と努力の賜物があってこそですが、それらを引き出しているのは、間違いなくAlphaDriveのメンターの力量だと思います。挑戦する姿を近くで見ていると、自分自身も刺激を受け、「自分にもできるかもしれない」という気持ちや、そうした挑戦を応援したいという気持ちが芽生えました。こうした風土を社内全体に広げ、「誰でもできるんだ」という安心感を与える文化を育てることが今後の目標です。

特に、初挑戦者にとっては、挑戦のハードルを下げるための明確なメッセージが必要です。事業の創出だけでなく、挑戦する文化そのものを醸成することが、組織全体の成長にもつながると信じています。今後もAlphaDriveには、セミナーやイベントなど、あらゆる形で「挑戦を応援する環境」を整えていただくことを期待しています。

AD 豊吉:
ミライノベーションプロジェクトは、新規事業開発の山登りにおける「0→1」フェーズのプログラムとなります。このフェーズでは、「多産多死」の思想でアイデアを数多く生み出し、事業検証の中で推進する起案者やチーム自身が事業解像度を上げていくことが重要なため、引き続き応募数の最大化やメンタリングを中心に支援を強化したいと考えています。

加えて、ミライノベーションプロジェクトの前フェーズも重要だと考えており、「多産」をさらに強化するためには、「0前」のフェーズにあたる「ミライアカデミア」における社内での起業家マインドやコミュニティ醸成が鍵になります。今後、我々のご支援によって、アイデアが芽生える創造性の土壌を耕し整えることで、より多くの方がミライノベーションプロジェクトに参加しやすくなる組織風土を醸成していきたいと考えています。

また、ミライノベーションプロジェクトの最終審査を通過した事業案については、確実に事業化させていき、世の中に送り出すことが最も重要です。「1→10」のフェーズにあたる「ミライスタジオ」においても、次年度以降はメンタリングを通した伴走支援を中心に、より大きな成果を生み出すために、プロダクト/サービスの開発、マーケティングによる顧客の獲得/拡大など、具体的にグロースさせていく必要があります。

ご支援の内容も、よりハンズオンに近いかたちである機能支援や実働支援に注力しながら、「事業創出カンパニー」として引き続きご支援させていきたいと考えています。

※インタビュー内容、役職、所属は取材当時のものです。

執筆・編集:末吉陽子
写真:関口佳代

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