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新規事業研修の設計の原則|事業創出を目的にする理由とは

「新規事業に取り組みたいが、社内に経験者がいない」「ナレッジが不足しているので、まずは研修で土台を作りたい」。新規事業推進部門や人材開発部門の担当者から、こうした声をよく耳にします。では、事業創出につながりやすい研修にするためにはどうすればよいでしょう。

原因は研修の内容ではなく、設計の前提にあります。研修で個人のスキルを高めるだけでは不十分です。事業を育てていくための土壌が企業の中に整えられていなければ、事業創出にはつながりません。事業創出につながる研修とは、 研修を「事業開発プログラム全体の一部」として位置づけ、事業開発に関する制度設計とセットで設計されていることが必要です。

本記事では、研修だけでは 新規事業を生み出せる人材が育たない3つの構造的理由と、事業創出を主目的とした研修・実践プログラムの設計のあり方を、AlphaDriveの新規事業支援の知見をもとにお伝えします。

新規事業人材が不足する構造と研修ニーズの高まり

多くの企業で、 「社内で事業開発人材がいない・足りない」という課題が頻発しています。既存事業の拡大・深化に長らく取り組んできた組織では、ゼロから事業を生み出す活動に慣れた人材が少なく、そうした人材の不足が課題となっているのです。

この状況の背景には、 組織の仕組みに起因する問題があります。既存事業で培われた経験とスキルを持つ人材が多い一方で、ゼロから事業を生み出す経験を積んだ人材が企業内だけでなく、そもそも日本の労働市場全体で不足しています。新規事業には、仮説を顧客にぶつけ、検証し、修正するスピーディーな検証サイクルが求められます。それは既存事業の改善プロセスと共通する部分もありますが、違いを認識することも重要です。

こうした背景から、「研修で新規事業を推進できる人材を育てたい」と、アイデア発想の手法や顧客ヒアリングの方法論を体系的に学ぶ機会を設けたり、社員の事業開発力を底上げしようとしたりする取り組みが、多くの企業で活発になっています。

新規事業研修だけでは人が育たない3つの構造的理由

新規事業研修を実施しても事業創出につながらない問題を解決するには、まず 「なぜ研修だけでは新規事業の推進を生み出せる人材が育たないのか」を理解する必要があります。

知識は装着できても、WILLは醸成できない

新規事業において必要な要素は、スキルでも、フレームワークの知識でもありません。重要なのは「この課題を自分が解決したい」という WILL(意志)を持っていることです。

課題解決への圧倒的な想いが、壁にぶつかりながら前進し続ける原動力になります。

研修でアイデア発想の技法やビジネスモデルの構造を教えることもできます。しかし、 WILLそのものは、知識として醸成できません

つまり、研修で知識を醸成するだけでなく、実際の顧客に会う・現場を見る・リアルな課題に触れるという体験設計が、WILLを引き出す上で不可欠です。

研修後に「実践の場」がなければ挑戦は継続しない

研修で学んだことを活かすためには、すぐに実践できる場が必要です。しかし、多くの企業では研修と実践が別々に実施されています。

研修中に高まったモチベーションも、日常業務に戻ると薄れていきます。顧客ヒアリングをやろうとしても、そもそも日常業務の優先順位の中で新規事業が後回しになり、取り組まなくなります。また、研修で書き上げたビジネスプランを既存事業に戻った後に継続させようとしても、社内には審査の場や相談窓口が整っていないため、挑戦を続けることができません。

研修で学んだことは、仮説を顧客に当て、フィードバックを受け、修正するという一連の経験がなければ机上の知識で終わってしまいます。研修を実施する際は、実践フェーズとどう接続するかをプログラムの設計段階から決めておく必要があるのです。

制度・評価が変わらなければ行動は変わらない

研修で「挑戦しろ」と言われても、評価制度では「挑戦による失敗」がマイナスになる。この矛盾があると、どれだけ研修を重ねても行動の変化は起きません。

そのため、研修を実施するより先に、以下のような制度・環境を整えることを推奨します。

  • 新規事業の成功確率を高めるための仕組み
  • 本業と並行して新規事業開発にリソースを使っていいと明言してあげる
  • 失敗をネガティブに評価せず、学びと捉える雰囲気作り

研修を設計する立場にある人間が新規事業は実践の場の設計とセットであると理解しておくことは、新規事業人材を育てる出発点になります。

研修と合わせて取り組みたい新規事業の実践の場の設計

新規事業を生み出せる人材を育成するには、研修と新規事業の実践の場をセットで設計し直すことが必要です。

「人材育成目的」と「事業創出目的」で設計思想を分ける

研修を事業開発プログラムとして設計し直す場合、「人材育成目的」だけではなく 「事業創出目的」という設計思想を持つことが重要です。

人材育成を主目的にすると、プログラムの評価基準は「学習の達成度」「参加者の満足度」「スキル習得の程度」になります。「学んだが事業は生まれなかった」という結果でも、人材育成の目標は達成されます。

一方、事業創出を主目的とすると、事業を作ること、仮説を検証してビジネスの種を育てること、これがマストの目標として設定されます。また、人材育成はあくまでその中での副次的な効果として位置づけられます。

人材育成目的事業創出目的(AlphaDriveのアプローチ)
成功の定義研修の満足度・スキル習得事業の仮説検証・事業化
評価軸参加者の学び生まれた事業の数・質
研修の位置づけ主軸プログラム全体の一部
実践フェーズ任意・自己判断必須・設計に組み込む
制度・環境前提として問わないセットで整備する対象

この設計思想の違いを明確にすることが、「研修を入れたのに手ごたえがない」という状況を抜け出す第一歩です。

研修と実践フェーズをセットで設計する

理想的な設計は、「学ぶ→試す→学ぶ」のループを短期間で複数回まわす構造です。1日の座学で顧客ヒアリングの方法論を学んだら、翌週中に実際の顧客に当てる。その結果を持ち寄り、議論し、次の仮説を立てる。このサイクルが機能することで、知識は実践的なスキルとして定着します。

AlphaDriveが支援する事業創出支援では、以下の要素をセットで設計します。

  • 必要な方法論・フレームワークの習得
  • 実際の顧客・現場との接触による仮説検証
  • 個別の事業案に対する伴走サポート
  • 研修や適性診断などの人材育成

この4つの要素をもとに、例えば「研修の翌週に顧客ヒアリングを実施する」というタイムラインを事前に組み込むなど、各事業に応じて「何をするか」だけでなく「いつ・どれだけの時間を使うか」を制度として担保する設計を行っています。

フィールドワークで後天的なWILLを引き出す

WILLを育てるのに有効な手段が、フィールドワークです。アイデアを「空中戦」で検討し続けても、WILLは育ちません。実際に顧客のもとを訪問する、課題の当事者と対話する、現場を見る。こうした体験を通じて、「自分がこの課題を解決しなければならない」という感覚が生まれます。

研修プログラムにフィールドワークの機会を組み込むことは、 WILLの種を顧客との接触から生み出すための設計上の重要要素です。

実践経験を通じて人は「化ける」

目の前の顧客に会い、仮説を立て、検証を重ねる。その経験の中で、研修では特段目立たなかった人材が急速に成長することは珍しくありません。スキルや知識の多寡ではなく、実際に事業を動かす経験の蓄積が、人を変えます。

「どんな人材が新規事業に向いているか」を事前に選抜しようとする発想もありますが、AlphaDriveでは、全社員を対象とした公募制も行っています。まず特定の人材で小規模に始めたい場合は、自社で開発した適正診断(POT)でアセスメントを実施することもあります。このように一定の基準で人材を選定してスタートする方法も有効です。

新規事業研修で扱う主な内容・プログラム

ここまでの設計思想を前提として、AlphaDriveの事業創出支援で実際に扱う研修の一部を紹介します。

顧客視点のマインドを醸成する

新規事業を行うにあたり、なぜ企業が新規事業に取り組む必要があるのか、経営における新規事業の意義を理解することが重要です。AlphaDriveが提供する「マインド醸成講座」では、多くの組織が陥りがちなプロセスを理解したうえで、新規事業開発で最も重要な原則である「顧客ヒアリングと仮説検証」をまわすことの重要性を体得し、顧客起点で考えるマインドセットを醸成します。

新規事業の初期段階で多くの人が直面するのが、「良いアイデアが浮かばない」という壁です。しかし、スタート時点で完璧なアイデアを持っている必要はありません。事業が成功するかどうかを決めるのは、アイデアの斬新さではなく、 顧客が本当に困っている課題を正確に把握することです。だからこそ、立ち上げ期には顧客との対話を重ね、仮説を検証し続けることが欠かせません。

WILLのあり方を理解する

AlphaDriveが重視するのは、事業推進者が抱く「この課題を解決したい」という強い意志(WILL)です。新規事業を成功に導く人材の共通点は、課題に対して熱狂的に向き合えることにあります。 実際に顧客のもとへ足を運び、当事者の声に耳を傾ける経験が、「自分がこの問題に取り組まなければ」という使命感を育てます。ターゲットとなる顧客が実際にいる場所に繰り返し訪れ、地道なヒアリングを積み重ねる。多くの顧客の生の声に触れることが、課題の本質を鮮明に浮かび上がらせます。

また新規事業をチームで取り組む際、各メンバーが個人の意志と事業の目的を重ね合わせることが求められます。さらに、メンバー同士が互いの想いを理解し合うことで、チーム全体の推進力が増していきます。

アイデア創出・顧客理解を鍛える

「何を作るか」ではなく、「誰のどんな課題を解決するか」から始めることが新規事業の基本作法です。この前提を体得するために、顧客インタビューの設計・実施・分析を中心に学びます。

アイディエーションのプロセスでは、顧客課題起点の手法が有効です。顧客が本当に求めているものは何なのか、何に困っているのか、をヒアリングで深掘りしながらアイデアを発想することで、 顧客の本質的なニーズを捉えやすくなります。

事業領域やテーマの決め方、顧客の絞り込み方、課題の深掘り方といった一連のプロセスを通して、 「顧客の意見ではなく、実際に顧客が取った行動を確認する」という視点を養います。これにより、表面的な課題と本質的な課題を区別する力を鍛えます。

ただし、研修内で疑似的な顧客役と演習するだけでは不十分です。AlphaDriveが強調するのは、学んだ直後に実際の顧客に当てるフィールドワークとセットで設計することです。AlphaDriveが支援した企業事例の中には、参加者が「顧客の話を300回聞く」を最低ラインとして現場に出向き続けた経験が、事業創出への当事者意識を生み出しました(参照:「社会課題解決型」新規事業プログラムを開発、その狙いと全容)。

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検証スキルを鍛える

検証スキルを鍛えるフェーズでは、「何を検証するか・どう検証するか」を考えていきます。まず「何を検証するか」を明確にします。顧客課題は本当に存在するのか、その課題を解決する価値はあるのか、提案するソリューションは顧客に受け入れられるのか。こうした問いを仮説として立て、優先順位をつけて検証していきます。

次に「どう検証するか」を設計します。完成品を作る前に、簡易的なプロトタイプやランディングページ、顧客インタビューなどを通じて、仮説が正しいかを素早く確認します。

一定の検証を積み重ね、顧客課題とソリューションの妥当性が確認できた段階で、初めて事業計画に落とし込みます。このプロセスを理解することで、机上の空論ではなく、顧客の実態に基づいた事業を構築する力が育ちます。

これらのプログラムは事業化フェーズへの接続が明確なため、「研修後に何に使うか」を事前に設計しておくことが重要です。研修で学んだ仮説検証のフレームワークを、翌週から実際の自分のアイデアに適用できる状態にする。この実践への移行が担保されているかどうかが、プログラム選択の重要な判断基準になります。

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AlphaDriveでは、事業開発プログラムの設計・運用に関する知見・事例をまとめた資料をみなさまに公開しています。研修と実践フェーズをどのようにセットで設計するか、自社への活用イメージを深めたい方は、ぜひご活用ください。

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まとめ:WILLと実践機会の設計が不可欠

新規事業研修が機能しない根本原因は、研修の内容ではなく、設計の前提にあります。 知識は醸成してもWILLは醸成できないこと、研修後に実践の場がなければ挑戦が継続しないこと、そして事業案を適切に評価できる土壌がなければ、せっかく種が生まれても育たないことです。

この構造を理解した上で、 研修と実践活動をセットで設計することが重要です。「事業創出」を主目的として、研修や実際に事業開発をする活動をセットにした設計することで、初めて新規事業を生み出す人材を育成できます。

新規事業研修の設計や人材育成プログラムの見直しを検討している方は、ぜひAlphaDriveにご相談ください。事業創出を主目的とした研修・フィールドワーク・メンタリングの一気通貫設計を、各社の状況に合わせてご支援します。

AlphaDriveは、企業の新規事業創出を仕組みづくりから立ち上げまで、一気通貫で支援しています。
事業創出のインキュベーションから事業立ち上げ後のアクセラレーション、オープンイノベーション、R&D 組織での新規事業開発まで。これまでに 260 社を支援し、23,800 件の事業アイデアを創出、250 件の事業化・会社化を実現してきました。事業開発に対する伴走だけでなく、プロダクト開発、マーケティング、セールスなど各領域での実務支援を通じて、事業化後のフェーズを成功に導くご支援を行っています。

監修者について

古川 央士

株式会社アルファドライブ 取締役 兼 グループ執行役員COO 株式会社ユニッジ 取締役

青山学院大学卒。学生時代にベンチャーを創業経営。その後、株式会社リクルートに新卒入社。SUUMOでUI/UX組織の立ち上げや、開発プロジェクトを指揮。その後ヘッドクオーターで新規事業開発室のGMとして、複数の新規事業プロジェクトを統括。パラレルキャリアとして、2013年に株式会社ノックダイスを創業。飲食店やコミュニティースペースを複数店舗運営。一般社団法人の理事などを兼任。社内新規事業や社外での起業・経営経験を元に、2018年11月、株式会社アルファドライブ執行役員に就任。リクルート時代に1000件以上の新規事業プランに関わり、10件以上の新規事業プロジェクトの統括・育成を実施。株式会社アルファドライブ入社後も数十社の大企業の新規事業創出シーン、数千件の新規事業プランに関わる。2023年より株式会社アルファドライブ取締役兼COO。