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バリュープロポジションとは?新規事業にも活きる提供価値の設計、検証の手順

「自社の強みを起点にアイデアを練ったのに、顧客の反応がいまひとつだった」「バリュープロポジションキャンバスの枠は埋めたものの、検証がなかなか前に進まない」。新規事業の現場では、こうした手応えの薄さに行き当たるケースがあります。

このようなケースでは、能力や熱量の問題というより、提供価値を「自社起点」で固めようとした順序に理由があるケースが多いと考えています。提供価値は、事業開発を始めるタイミングで完成させるものではなく、検証を重ねながら育てていくものだと捉えることがポイントです。

本記事では、バリュープロポジションの考え方と、新規事業の各フェーズに沿った設計・検証のステップを整理します。あわせて、自社独自の優位性づくりに工夫が要る場合の打ち手として、協業・オープンイノベーションの選択肢もご紹介します。

事業開発の経験者が実務支援、伴走支援し、これまで約300社の新規事業を支援してきたAlphaDriveの実践知を、ぜひ参考にしてください。

バリュープロポジションとは「自社が優位性を持って応えられる顧客ニーズ」

バリュープロポジション(Value Proposition:提供価値)とは、競合他社がまだ対応できていない顧客ニーズに対し、自社のみが提供できる独自の価値です。「顧客が本当に必要としているか」「その課題に競合はまだ価値を提供できていないか」「自社ならその価値を届けられるか」という3つの問いが重なる地点が、提供価値が成立しやすくなるポイントと言えるでしょう。

この概念は、マーケティング領域に限らず、サービス開発や新規事業開発の文脈でも広く活用されています。AlphaDriveとしては、バリュープロポジションは自社の強みを宣言するものというより、この3つの重なりから「選ばれる理由を見いだすもの」と捉えると、設計の出発点を見失いにくくなると考えています。

3つの要素の重なりで「選ばれる理由」に繋がる

提供価値を考える順番については以下の順番で考えていくことを推奨します。「自社の強み」から先に考え始めると、どうしても目線にバイアスがかかり、「実は存在していない顧客ニーズを後付けで創出してしまう」ということが起こるためです。

顧客起点に置き換えると、届けるべき価値の方向性が定まりやすくなります。

  • 顧客ニーズ:顧客が実際に困っていること(課題の実在性)
  • 競合の限界:競合がまだ十分には応えられていない領域
  • 自社ケイパビリティ:自社が持つ技術・ノウハウ・リソース・ネットワークなどの能力

この3つが重なる地点、顧客が求めていて、競合他社が提供できない、自社だけが提供できる価値が「バリュープロポジション」です。順序としては、まず顧客ニーズ、次に競合の限界、最後に自社ケイパビリティ、という顧客起点の流れで確かめると、提供価値の設計に自社起点の偏りが生じにくいと考えられます。

バリュープロポジションキャンバスで顧客とのズレを可視化する

提供価値を整理する手がかりに「バリュープロポジションキャンバス」というフレームワークがあります。これは、顧客側(顧客プロフィール)と自社側(価値マップ)を左右に置き、顧客の求める価値と自社の提供価値がどこで重なり、どこにズレが生じやすいかを可視化する手法です。

ここで意識したいのは、すべてのフレームワークを埋めること自体をゴールにしないという点です。AlphaDriveでは、フレームワークはあくまで検証を前に進めるための手段と考えており、枠を埋める作業が目的化すると、本質的でない作業に時間を使ってしまうケースがあります。

キャンバスは「顧客と自社の噛み合う点はどこか」「すり合わせが要るのはどこか」を問い直すために使うと、事業開発を前に進める道具として活きてくるでしょう。

フレームワークの活かし方や、事業の種をどう見つけ、どのステージで何を進めるかは、関連記事もあわせて参考にしてください。

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バリュープロポジションの設計・検証4ステップ

バリュープロポジションは事業開発の入口で完成させるものではなく、進行に沿って段階的に見つけ、育てていくものと考えます。

AlphaDriveで定義している事業開発フェーズに当てはめると、創出フェーズの前半にあたるMVP1(顧客・課題実証)で顧客課題の発見と顧客が求める価値を確かめ、続くMVP2(ソリューション実証)でその価値を届けられるソリューションと事業の見込みを検証します。SEED期(事業性実証)に入ってはじめて、「なぜ自社から買うのか」という独自価値(UVP:Unique Value Proposition)を明確に言語化し、実際に売れるかを確かめるフェーズに進みます。

※なお、AlphaDriveでは書籍で定義するMVP期を、実務上『MVP1(顧客・課題実証)』と『MVP2(ソリューション実証)』の2フェーズに区分して進めています。

ここからは、事業開発の各フェーズで何を明らかにするとよいかを、4つのステップで整理します。

ステップ1:顧客の行動事実から、真のニーズを特定する

【該当フェーズ:WILL/Entry期〜MVP1期(アイデア創出〜顧客・課題実証)】

このフェーズでは、まだバリュープロポジションを言語化しなくても問題ないでしょう。まず確かめたいのは、「顧客が本当に困っているか(課題の実在性)」と「顧客が求める価値は何か(提供すべき価値の方向性)」を、行動事実をもとに把握することです。Entry期では、まず『誰の・何の課題を解くか・どう解くか・どう検証するか』という4点の事業仮説を言語化し、MVP1でその仮説を行動事実に基づいて検証します。

この段階におけるポイントは、意見ではなく行動の事実を引き出すことです。「あったらよいと思いますか?」と尋ねると、多くの人は前向きに答えやすくなり、課題の発見を見極めにくいケースがあります。そこで役立つのが、「今、その課題にどのくらいの時間やお金を使っているか」「直近で実際にどう対処したか」といった、すでに起きている行動を引き出す質問です。

主な検証手法は、個別でのインタビューを推奨します。グループインタビューやアンケートでは、場の空気や設問に反応が引っ張られやすい傾向があるため、あくまで補完的な手法として位置づけるのが良いと思います。

ターゲット顧客の絞り込みや、ヒアリングで引き出すべき「行動の証拠」の具体的な進め方は、関連記事や関連動画もあわせて参考にしてください。

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ステップ2:競合の限界と自社の強みを洗い出す

【該当フェーズ:MVP2期(ソリューション実証)】

顧客課題と求められる価値が見えてきたら、次は「なぜ競合ではまだ十分に解決できていないのか」「自社なら何ができるのか」を明らかにするフェーズです。

競合分析では、「何ができていないか」だけでなく、「なぜできていないか」(技術的な制約、コスト構造、組織的な事情など)まで掘り下げると、自社が入り込める余地が見えてきやすくなります。自社のケイパビリティ(技術・ノウハウ・リソース・ネットワークなどの強み)は、ただ並べるのではなく、「顧客課題の解決に使える資産か」という視点で取捨選択すると活きてくるでしょう。

このフェーズでは、実証実験やPoC(Proof of Concept:概念実証)を重ね、想定するソリューションで価値を届けられるか、その解決策で課題が解消するか、実現できそうか、対価を払ってもらえそうかを検証することを進めていきます。

プロトタイプを作って顧客に触れてもらうことで、「実現できそうなソリューション」が絞り込まれていきます。この時点で、バリュープロポジションの輪郭がうっすら見え始めるケースが多いものの、まだ明確に言語化するフェーズではありません。

PoCを「意味ある検証」にするための進め方は、以下の記事もあわせて参考にしてください。

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ステップ3:三者が重なる地点で自社の独自価値を言語化する

【該当フェーズ:SEED前半期(事業性仮説検証)】

ここで初めて、バリュープロポジションを明確に言語化するフェーズに入ります。顧客の行動事実から確かめた課題の発見、競合がまだ応えられていない領域、自社ケイパビリティ、この三者が重なる地点を見定め、「なぜ自社から買うのか」を一言で説明できる状態を目指します。

このとき意識したいのは、顧客が実際に困っていて、競合ではまだ実現できておらず、自社だからこそ提供できる価値を実証/言語化することです。

SEED期のねらいは、「実際に売上を立て、サービスを継続的に提供できる状態をつくること」と「グロースドライバーを発見すること」です。磨き上げたアイデアを製品として世に出し、顧客から対価を得てサービスを提供するサイクルを回しながら、事業を伸ばす手がかり(グロースドライバー)を探していきます。この段階では、限られた範囲での有償PoC/商用検証を進めることで、顧客に実際に費用を払ってサービスを使ってもらいながら、価値の実証を進めてもらいたいです。

ただし、このフェーズ以降でも言語化したバリュープロポジション、ソリューションはピボットしていく可能性もあります。完成版を一度で作ろうとせず、「現時点での有力な仮説」として扱う姿勢が、その後の精度を高めやすくすると考えられます。市場での検証を重ねると、確からしさが少しずつ高まっていくでしょう。

ステップ4:実際に売れるかを検証し、独自価値を更新し続ける

【該当フェーズ:SEED後半期(事業性実証)】

ステップ3で言語化したバリュープロポジションを、実際の販売活動を通じて確かめていくフェーズです。ここで焦点となるのは、「再現性のある売上が立ち始めているか」です。一度売れたかどうかではなく、同じ価値訴求で顧客を継続的に獲得できているかを見ていきます。

検証を進めると、ヒアリングやトライアルでは好意的な反応だったにもかかわらず、実際の購入や継続利用には至らないケースも出てきます。こうした反応と成果のギャップが続く場合は、言語化した独自価値のどこかが顧客の実態とずれているサインと考えられるでしょう。

その際は、ステップ1〜3で見定めた三者の重なりに立ち返り、顧客課題の捉え方、競合がまだ応えられていない領域の見立て、自社だからこそ提供できる価値の打ち出し方のどこにずれがあるかを確認します。そのうえでバリュープロポジションを更新し、再び検証を回していきます。

ここでバリュープロポジションが確立できると、その後の事業拡大を後押しするドライバーになり得ます。確立したバリュープロポジションは、マーケティングメッセージや営業の説明、プロダクト改善の方向性など、様々な施策の軸として活き、事業のスケールを支える土台になっていくでしょう。

事業計画への落とし込みは、関連記事もあわせて参考にしてください。

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自社だけで優位性を築きにくい場合の打ち手

バリュープロポジションの設計において、「顧客ニーズはあるが、自社だけでは競合優位性を築きにくい」という場面に行き当たるケースがあります。特に、新規事業の立ち上げ初期では、リソースや技術、ブランド力が十分でなく、既存プレイヤーに対抗できる独自の強みを持ち合わせていないケースも多いでしょう。

しかし、自社独自の優位性を築きにくいからといって、諦める必要はありません。外部パートナーとの協業やオープンイノベーションを活用すると、独自の価値を生み出せる可能性があります

後発参入でも協業・オープンイノベーションで独自価値は作れる

特に市場に後から参入する事業の場合、自社独自での競合優位性づくりに工夫が要るケースは少なくありません。そうしたときは、協業やオープンイノベーション(ヘンリー・チェスブロウによる定義があることを踏まえたうえで、本記事では社外の技術・知見・顧客基盤と組み合わせて価値を生む取り組みを指します)で、不足するケイパビリティを補うのも有効な選択肢になります。

外部の技術・ノウハウ・顧客基盤と組み合わせることで、「顧客ニーズ × 競合の限界 × 自社(+パートナー)の強み」という新しい重なりを生み出せるケースがあります。ステップ2(競合分析・自社の強みの洗い出し)のフェーズで、「自社独自で進めるか、協業で補うか」の判断軸を持っておくとよいでしょう。

AlphaDriveの考えでは、ここで大切なのは協業を「誰と組むか」から始めないことです。先に「何を作るか・どの課題を解くか」という目的を置き、その実現に必要なパートナーを後から探す順序にすると、組むこと自体が目的化しにくくなります。協業の成果は事業化だけに留まらず、経営課題の解決といった効果にも広がるケースがあります。

オープンイノベーションについては、以下の記事も参考にしてください。

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オープンイノベーションによって独自価値を生み出した事例が、化粧品大手のコーセーによるインナービューティブランド「Nu⁺Rhythm」です。「美容にこだわりたい人ほど、プロテインの味やパッケージデザインに満足できていない」という顧客ニーズに対し、コーセーが持つ「美容における信頼とブランド力」というアセットと、OEMメーカーが持つ「食品製造ノウハウ」という他社アセットを組み合わせることで、「美容のプロが推奨する、デザイン性と美味しさを確保したプロテイン」という、これまでの市場にはなかった価値を生み出しています。

【事例】UNIDGE × コーセー:社内起案と協業で切り拓いた「インナービューティ」という新領域

2024年9月、化粧品大手のコーセーは、インナービューティブランド「Nu⁺Rhythm(ニューリズム)」を立ち上げ、第一弾として美容プロテインと銘打つ「ニューリズム イーストプロテイン アソートセット」を発売しました。

同社の新規事業創出プログラム「Leadership and Innovation program for New KOSÉ(以下、LINK)」でグランプリを獲得したアイデアをもとに事業化。UNIDGEは、2022年度から「LINK」の共同運営パートナーとして、制度設計、事業伴走支援、提携パートナーの探索など、包括的なサポートを提供しています。

事例の全文はこちら

まとめ:「作って終わり」ではなく、検証を続ける中で作り上げる

バリュープロポジションは、顧客の行動事実を積み上げ、仮説を立て、有償PoCで確かめながら更新を重ねていくものだと、AlphaDriveは考えています。一度で完成形を狙うのではなく、検証のサイクルを回すうちに、「提供価値が見えている状態」へ近づいていくでしょう。

新規事業の提供価値づくりや検証、協業による補完を社内で具体的に検討する際は、以下の資料・情報もあわせてご活用ください。支援の全体像と進め方をまとめた資料は、社内で外部支援の導入を検討・上申する際の材料としてもお使いいただけます。

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AlphaDriveは、企業の新規事業創出を仕組みづくりから立ち上げまで、一気通貫で支援しています。
事業創出のインキュベーションから事業立ち上げ後のアクセラレーション、オープンイノベーション、R&D 組織での新規事業開発まで。これまでに 約300 社を支援し、23,800 件の事業アイデアを創出、250 件の事業化・会社化を実現してきました。事業開発に対する伴走だけでなく、プロダクト開発、マーケティング、セールスなど各領域での実務支援を通じて、事業化後のフェーズを成功に導くご支援を行っています。

監修者について

加藤 隼

株式会社アルファドライブ グループ執行役員(アクセラレーション戦略推進) 株式会社GROWGRIT 取締役

2013年、ソフトバンク株式会社に新卒入社。法人営業を主務とする傍ら、新事業スキームを担当顧客へ提案し、同事業の責任者としてジョイントベンチャー(JV)での事業立ち上げを牽引。兼任プロジェクトとして、孫正義氏の次世代経営者育成機関「ソフトバンクアカデミア」にも所属。2016年、株式会社ディー・エヌ・エーに中途入社。メディア領域の事業開発に従事。DeNAと小学館のJVによる事業再建プロジェクトに携わり、Bizサイド広範の戦略策定・実行を推進し、ゼロからの事業再建を牽引。2019年3月、株式会社アルファドライブに入社。累計35社、4000件超の新規事業プロジェクトに対する伴走・審査に携わり、2021年4月にマネージング・ディレクターに就任。2023年1月、執行役員 イノベーション事業/アクセラレーション事業担当に就任。