事業アイデアは出るが、事業化にはつながらない。0→1はなんとか乗り越えたが、1→10で何をすべきかわからない——こうしたお悩みは、課題として新規事業の推進担当者が躓きやすいポイントです。
そこで本記事では、事業開発の役割を0→1と1→10に分けて整理し、それぞれのフェーズで何をすべきか、
どういったスキルやマインドセットが求められるのかを解説します。なお、実際の事業開発には1→10フェーズの先に、10→100のフェーズも存在しますが、本記事では0→1と1→10のフェーズに焦点を当てます。
企業における事業開発(BizDev)の役割とは
事業開発(BizDev)の役割は、企業における将来の収益基盤となる新たな事業を生み出すことです。自分が担う仕事の役割を整理するために、まずこの本質的な定義を押さえておきましょう。
商売を「ゼロから立ち上げる」
事業開発の最初の役割は、まだ存在しない商材をゼロから生み出すことです。このフェーズでは、自分自身のWILL(やりたいこと)や、自社が持つ強いアセット、市場の明らかな兆候等を起点として、顧客が抱える課題を発見することから始まります。仮説検証を繰り返しながら、「顧客に商品を購入してもらう」という最初の成功体験を作り出すこと——これが0→1フェーズで事業開発担当者が取り組む仕事の一つです。
事業を「仕組み化して伸ばす」
事業が立ち上がった後は、自分以外のメンバーでも再現できる体制をつくりながら事業を継続的に成長させるフェーズに移行します。これが1→10フェーズの動きです。
このフェーズでは、属人的な成功体験を「再現性を持って実現できるプロセス」にまで落とし込むことが求められます。営業手法、顧客対応、組織体制の整備など、事業を組織全体で伸ばすための基盤づくりが重要です。
事業責任者としての最大のミッションは、事業を継続的に成長させることです。そのため、組織化・仕組み化に着手しつつ、さらなる事業発展のためのアライアンス提携、事業内事業開発なども通じてビジネスモデルを磨き上げ、事業の成長を追求し続ける必要があります。

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事業開発の5つのアプローチ

事業開発には、自社のリソース・フェーズ・目的に応じて使い分けられる5つのアプローチがあります。これまで、AlphaDriveが300社以上のご支援を通じて得た知見から主要な類型を整理します。
ボトムアップ型:現場から「事業の種」と社内起業家を同時に生み出す
ボトムアップ型は、社内/部門内からアイデアを募り、集まった事業アイデアから事業の種となりそうなものを探索するアプローチです。このアプローチの特徴は、「事業アイデア」と「それを推進する社内起業家」を同時に発見できる点にあります。現場の社員が日々感じている課題や顧客ニーズを起点にするため、実態に即した提案が集まりやすくなります。
ボトムアップ型は多産多死の考え方、つまり、多くのアイデアを生み出し、検証を通じて事業案を絞り込んでいく進め方が前提となります。
一方で、すべての提案が事業化されるわけではないため、不採択となったアイデアの提案者をフォローアップすることも設計として必要です。
トップダウン型:経営層の意思決定から、1つの種を組織で育てる
トップダウン型は、経営層が注力する事業領域を設定し、そこに資源を集中させて事業を立ち上げるアプローチです。このアプローチの特徴は、「ハンティングゾーン」の設定にあります。ハンティングゾーンとは、企業が新規事業創出のために優先的に狙うべき事業領域や市場を指します。
この枠組みは、企業が戦略的に重要な事業領域をあらかじめ設定し、その範囲内で社員が本当に取り組みたいと思える事業アイデアを生み出しやすくする仕組みです。
経営層が「この領域で新規事業を創出する」という明確な方針を示すことで、組織全体のリソースを一点集中させることができます。ボトムアップ型のように多数のアイデアを並行検証するのではなく、選択と集中によって絞り込んだ領域/テーマの中で事業を育てる取り組み方です。
市場環境の変化に対して迅速に意思決定し、集中的に投資して事業を立ち上げたいときに有効なアプローチとなります。
M&A:外部の事業・技術を買収し、自社ポートフォリオに組み込む
M&Aは、対象企業を買収または合併することで、その企業が持つ事業基盤や人材、技術といった経営資源を包括的に自社へ統合する手法です。既に市場で実績のある事業や技術を買収することで、ゼロから立ち上げるよりも早く新領域に参入が見込めます。
このアプローチを正しく機能させるためには、自社アセットを棚卸しした上で、不足要素を正しく見出す整理が必要です。「自社に足りない技術は何か」「どの顧客層にリーチできていないか」という視点から、意味ある買収対象を見定めることが重要になります。
CVC・マイナー出資:スタートアップへの少数株式出資で新領域を開拓する
CVC(コーポレートベンチャーキャピタル)やマイナー出資は、スタートアップ企業を中心とする外部企業に少数株式を投資し、協業や技術・ノウハウの取り込みを通じて新規事業の創出につなげるアプローチです。CVCの目的は、財務リターンではなく、「協業による事業利益」や「先進的な情報・リサーチ成果」と置かれる場合が多いです。
出資を通じてスタートアップとの関係を構築し、技術動向の把握や実証実験の実施など、段階的に協業を深めていくことができます。M&Aのような大型投資をせずに、新領域への足がかりを得られる点が特徴です。
ただし、協業事業によって得られる成果とメリットが両者にとって十分魅力的なものであれば、「投資」という手段は本来必要ないとも言えるため、手段としての投資の必要性を問い直す視点も重要です。
オープンイノベーション:外部企業との連携で自社単独では作れない価値を生み出す
オープンイノベーションは、社外の技術やアセットを活用して自社の新規事業を立ち上げる協業手段の総称です。出資を必ずしも伴わず、補完関係にある外部企業とリソースや顧客基盤を持ち寄り、新たな事業創出の機会をともに開発するアプローチです。
このアプローチの特徴は、自社だけでは到達できない価値を、パートナーとの協業によって実現できる点にあります。例えば、自社の技術力と相手企業の販売チャネルを組み合わせることで、単独では困難だった市場開拓が可能になります。成功の鍵は、双方にメリットがある協業シナリオを描けるかどうかです。「何を持ち寄り、何を得るのか」を明確にすることで、持続的な協業が構築できます。

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0→1フェーズの事業開発のポイント
0→1フェーズで最初に行うべきことは、自社内の決裁者レイヤーと事業開発の目的やゴールをすり合わせることです。「なぜ新規事業に取り組むのか」「どんな成果を期待しているのか」を明確にしておかないと、検証の途中で方向性がぶれたり、承認を得られず立ち往生したりする事態に陥ります。この目的やゴールを現実に落とし込むためには、手法や仕組みの設計が必要です。0から1を生み出す局面では、多様なアプローチを並行して導入することで、社内で事業の種となるアイデアを数多く生み出せるようになります。
起点は、顧客の現場に出ること
0→1フェーズの起点は、想定顧客の現場に出て課題の実在性を確かめることです。机上で「こんなニーズがあるはず」と考えるより、実際に顧客と対話し、現場を観察することで、本当に解決すべき課題が見えてきます。
初期フェーズで時間をかけるべきなのは、顧客との接点を増やすことです。「誰の、どんな困りごとを解決するのか」という原点を、現場で確認し続けることが、その後の仮説検証の精度に大きく影響します。
仮説を分解して検証を回す
次は仮説を分解して検証サイクルを回します。仮説は「顧客課題仮説→ソリューション仮説→収益仮説」の順で検証を積み上げていきます。実際には行ったりきたりすることが通例ですが、極力は段階的に、前の仮説が実証されてから次に進む、という順序が重要です。
| 仮説の種類 | 検証内容 |
|---|---|
| 課題検証 | 顧客が本当にその課題を抱えているか |
| ソリューション検証 | 提供する解決策が課題を解消できるか |
| 収益検証 | 顧客に対価を払う意思があるか |
検証を進める中で、自分が思い描いていた仮説が外れることがあります。例えば、「この顧客セグメントではなかった」「想定していた課題の内容とずれていた」などさまざまです。このような場合、ヒアリングや検証で得られたフィードバックやインサイトを取り入れ、顧客に仮説を当てはめたり、事業案を調整したりといったサイクルを、高速で回していくことが重要です。
サービスを作る力や売り方の開発が必要となる
土台となる事業仮説の実証が出来たら、いよいよ初期的な商用サービスを開発し、顧客に提供していく体制を構築することが求められます。例えば、SaaS型のビジネスを展開する場合、システムそのものを作り上げる開発力がなければ、描いていたソリューションや解決策は机上の空論に終わってしまいます。初期検証で得た顧客の声をもとに、使いやすいUI/UXの設計や、安定して提供できるシステム基盤の構築など、最低限のレベルでプロダクトとしての完成度を高めることが重要です。
同時に、初期顧客を見つけて、顧客に購入してもらうための販売スキルも必要です。実際に完成した製品を顧客にまず見つけてもらわなければ、事業は拡大しません。このフェーズでは、マーケティングやセールスの手法を検証し、「どのチャネルで、どんなメッセージを届ければ成約するのか」という勝ちパターンを見つけることが重要です。
カスタマーサクセスに注力する
顧客が製品を実際に利用し、抱えていた課題が解決されたと実感し、満足して継続利用してくれる状態を目指すことが、事業の成否を分けます。ここで求められるのがカスタマーサクセス力です。
顧客満足度を高めるには、アフターフォローを含めたさまざまな取り組みが不可欠となります。サービスを開発し、販売し、顧客に届け、満足していただく。この一連の流れを設計・実行するには、社内の業務オペレーションやプロジェクト内で、それをビジネスとして日々継続的に回していく仕組み・設計が必要です。
サービスイン・グロースドライバーの発見を経て1→10フェーズへ
現場での仮説検証を繰り返し、顧客が対価を払ってくれる状態を確認できたら、次は事業計画として成立するかを見極めます。「有償PoCでお金を払ってくれる顧客を数名見つけられた」という単発の成功体験そのものだけでは不十分です。
初期的に必要十分なプロダクトを作れたか、顧客を捕まえる手段を確保できたか、初期顧客を満足させられているか、等の観点を踏まえて、事業計画に落とし込み、「十分に事業性が期待できそう」という見立てを確認できてはじめて、1→10フェーズへ進みます。

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1→10フェーズで仕事の中身は根本的に変わる
1→10フェーズでは、0→1フェーズと仕事内容が大きく変化します。このフェーズは、以前のフェーズで確立したグロースドライバーの仮説をもとに、より本格的に資金とリソースを投下して顧客数と売上を実際に拡大させていく段階。CACとLTVのバランス、後発競合への応戦、10〜30人規模の組織マネジメント力が問われます。
「自分で全部やる」が通じなくなる
0→1フェーズで機能していた「担当者一人が全部動く」スタイルは、1→10では限界を迎えます。事業規模が拡大するにつれ、マーケティングやカスタマーサクセスなど専門性が求められる業務が増えるためです。全方位を自分だけで担うには限界が来るため、各領域のメンバーの調達や外部パートナーを活用しながら事業の手綱を握り続けるディレクション力が問われます。
社内の他部門に協力を依頼する際は、どんな業務に対して、どのくらいの人や時間が足りないかを明確にしておきます。そのうえで、なぜその部門からの協力が必要かを伝えます。
また、いざお願いするタイミングで都合よく他部門から人員を調達することは難しいので、事前に主要部門関係者には丁寧な社内根回しを行っておく、という準備も重要です。
事業を拡大するためのビジネスモデルを構築する
初期の事業成長が安定したら、さらなる成長を見据えたビジネスモデルの構築が求められます。このフェーズでは、初期で立ち上げてきた形態の事業にとどまらず、事業として拡大し続ける仕組みを作り込んでいきます。
具体的には、初期の成功を元にした周辺顧客セグメントへの横展開や、すでに獲得した顧客へのさらなる強い価値発揮ができる追加サービス開発などを進めます。このように「横に拡げる」「縦に積み上げる」の両視点を持つことで、初期には見据えることが出来なかった市場拡大を目論むことができるようになります。
再現性のある収益構造を設計し、持続的に成長できるビジネスモデルへと磨き上げることが、1→10フェーズの重要な役割となります。

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事業開発に必要な人材像

企業内における新規事業に向いている人材の特徴として、AlphaDriveが提唱しているのは、熱狂・タフさ・愛社精神の3つの要素です。
熱狂的である
熱狂とは、事業を成功させるための揺るぎない信念や圧倒的な想いを指します。新規事業担当者は、既存業務との両立、アイデア創出から検証、関係各所との調整など、肉体的・精神的なハードワークに直面することも少なくありません。成功確率が「千三つ」とも言われる新規事業では、あきらめずに粘り強く検証を続けるためには、「この課題を自分が解決する」という強い気持ちが不可欠となります。
タフである
新規事業開発においては、変数だらけの中で、思考強度の高い意思決定をしなければいけない場面に直面することがあります。慣れないうちは、それがストレスに感じられることもあるでしょう。しかし、そうした状況に挫けず、プロジェクトを達成するまで粘り強く駆け抜け続ける「タフさ」が不可欠です。
愛社精神がある
新規事業を推進する担当者には、自社への強い想いが求められます。なぜなら自社の経営資源が投下されるためには、「その事業が会社にどのような変革をもたらし、将来にどう貢献できるのか」を、経営層や関係者に明確に説明できる必要があるからです。自社の将来と新規事業を結びつけて語れる担当者は、自然と経営的な視点を持ち合わせており、事業を成功に導く力となるでしょう。

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事業開発の推進を加速させる外部パートナーの支援
事業開発を最初から自走するのは難易度が高く、次のような局面で手が止まりやすくなります。
| 詰まりやすい局面 | 具体例 |
|---|---|
| 検証の方向性 | 次に何を検証すべきかわからない |
| 社内承認 | ステージゲートや経営への説明が通らない |
| 協業判断 | 外部協業先をどう選ぶか判断できない |
近年では、アイディエーションや仮説の壁打ち相手としてAIを活用する事例も増えてきました。ChatGPTなどの生成AIに事業アイデアをぶつけ、フィードバックをもらいながら仮説を整理していくプロセスは、未経験者にとって有効な手段となっています。
ただし、AIとのやり取りで生まれた事業仮説が本当に正しいかを検証するのは、どこまでいっても推進者の仕事です。AIは人間では出来ないレベルの網羅情報と推論から仮説を導いてくれますが、それだけでは事業に血が通ってくることは絶対にありえません。
事業検証の設計や事業の意思決定をする場面において、社内に事業開発の実務経験者がいれば、その人にメンターとなってもらうことをおすすめします。
もし社内に適任者がいない場合は、外部の専門家の活用も有効な手段です。事業開発の実務経験に基づいたフラットな意見は、事業の状況や検証内容の精度を高める上で有効です。
AlphaDriveでは、事業開発の各アクションの進め方を実務レベルで伴走します。事業開発の初期仮説設計から事業化までの伴走、その後のグロースの最大化まで一気通貫でご支援しています。
新規事業に挑戦する方は、ぜひAlphaDriveにご相談ください。
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まとめ:事業開発とは「答えのない問い」を走りながら解いていく仕事
事業開発では、0→1では顧客の現場に出て課題を発見し、その課題を解決する対価を顧客から得られる状態を作り出し、1→10では再現性を持って拡大し続けられる事業へと進化させていく営みです。
それを実行していくミッションを持った方に求められるものとしてAlphaDriveとして提唱している重要要素は、WILL・タフさ・愛社精神というスタンスと、チームで補い合う実務力です。壁にぶつかったときは、外部の専門家を含めたチームを組成する選択肢もあります。
答えのない問いを走りながら解いていく——それが事業開発の本質です。
AlphaDriveは、企業の新規事業創出を仕組みづくりから立ち上げまで、一気通貫で支援しています。事業創出のインキュベーションから事業立ち上げ後のアクセラレーション、オープンイノベーション、R&D組織での新規事業開発まで。これまでに約300社を支援し、23,800件の事業アイデアを創出、250件の事業化・会社化を実現してきました。事業開発に対する伴走だけでなく、プロダクト開発、マーケティング、セールスなど各領域での実務支援を通じて、事業化後のフェーズを成功に導くご支援を行っています。
AlphaDriveは、企業の新規事業創出を仕組みづくりから立ち上げまで、一気通貫で支援しています。
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監修者について
加藤 隼
株式会社アルファドライブ グループ執行役員(アクセラレーション戦略推進) 株式会社GROWGRIT 取締役
2013年、ソフトバンク株式会社に新卒入社。法人営業を主務とする傍ら、新事業スキームを担当顧客へ提案し、同事業の責任者としてジョイントベンチャー(JV)での事業立ち上げを牽引。兼任プロジェクトとして、孫正義氏の次世代経営者育成機関「ソフトバンクアカデミア」にも所属。2016年、株式会社ディー・エヌ・エーに中途入社。メディア領域の事業開発に従事。DeNAと小学館のJVによる事業再建プロジェクトに携わり、Bizサイド広範の戦略策定・実行を推進し、ゼロからの事業再建を牽引。2019年3月、株式会社アルファドライブに入社。累計35社、4000件超の新規事業プロジェクトに対する伴走・審査に携わり、2021年4月にマネージング・ディレクターに就任。2023年1月、執行役員 イノベーション事業/アクセラレーション事業担当に就任。