新規事業は、まだ売上が立っていない、あるいは立っていても小さいため、コスト・リソースを極力最小限に抑えて取り組むことが定石とされています。
とはいえ、立ち上げ期の事業を手がけた経験がなければ、何から手をつけるべきかは分からないものです。
分からないなりにがむしゃらに進めることもできますが、それにも限界があります。特に事業の内容によっては専門的なスキルが求められる場面もあり、人数だけでなく経験や専門性の不足が壁になる場合もあります。
新規事業のリソース不足は、正社員の採用だけでなく、兼務・異動、生成AIの活用、法人や個人への業務委託を組み合わせることで解消できます。この記事では、それぞれの手段で何が得られて何が制約になるかを紐解きます。
新規事業のリソースを調達する手段には、どのようなものがあるか
調達手段は社内と社外を合わせて5つに整理でき、引き出せるコミットの強さ、着手までの期間、コントロールの効き方がそれぞれ異なります。
そして、複数の手段を組み合わせて新規事業チームを構成することも推奨できます。
例えば、検証活動のうち、顧客インタビューの項目整理やアンケートの設問づくりといった準備作業は、生成AIに任せても遜色ありません。
新規事業チームが1人か2人で、増員も簡単には通らない状況下では、こうした部分を生成AIで巻き取り、限られた人のリソースを顧客との向き合いに集中させる整理の仕方は大いにある話です。AIを利用できる範囲は会社のセキュリティ方針によって差がありますが、使える範囲で任せる価値はあります。一方、顧客に実際に会って反応を確かめるといった工程は、人が担う領域として残ります。
| 手段 | 利点 | 制約 | 着手までの目安 | 向いている局面 |
|---|---|---|---|---|
| 事業単位での正社員採用 | 対象事業に配属前提での採用であるため、事業共感度/コミットは高い。 | いつ採れるかが読みにくい。新規正社員採用が認められないケースがある。 | 数か月以上 | 事業化の判断が下りた後 |
| 兼務・異動による社内調達 | 新規採用より進めやすく、仕事としてコミットを引き出せる | 欲しい人材を狙って獲得していくことが困難。双方が望まない異動になる場合がある | 数か月以上 | 事業化の判断が下りた後 |
| 生成AIによる代替 | 情報収集・整理・一次ドラフト作成を即時にこなせる | 実際の検証活動は人間のタスクとして残る。社内セキュリティ方針によっては使用に制約がある。 | 即日 | 調査・資料作成など定型性の高い業務 |
| 法人への業務委託 | お金でコントロールできる。法人として責任とコミットを引き出しやすい。 | 担当者によって成果に差が出る場合がある。社内にノウハウが残らない。 | 数週間 | 経験の差が大きい業務、実行の伴走 |
| 個人への業務委託 | 法人よりもコストが安い。バイネーム指名であるため外れが少ない。 | 責任とコミットの度合いが個人のスタンスとマネジメント次第。 | 数日〜数週間 | 扱うテーマが特定できている場合 |
| 事業が停滞している原因 | 検討したい調達手段 |
|---|---|
| どう進めればいいか分からない | 法人委託 |
| 調査や資料作成に時間を取られている | 生成AIによる代替 |
| 手を動かす人が足りない | 個人委託、法人委託 |
| 本業が忙しく、時間が十分に取れない | 兼務・異動の見直し |
| 特定の専門知識/スキルが足りない | 個人委託、法人委託 |
法人に委託する場合、どんな種類の会社があるか
法人への委託先は、新規事業開発のフェーズによって求める機能が異なります。
| フェーズ | 必要になる機能 | 外部に求める役割 | 委託先カテゴリ |
|---|---|---|---|
| 新規事業戦略の策定 | 領域の選定、投資方針、事業ポートフォリオの設計 | 意思決定の材料づくり | 戦略系ファーム、総合系ファーム |
| アイディエーション | テーマの創出、初期仮説の量産 | 発想の枠組みと進行 | 共創プラットフォーム型、事業開発支援型 |
| 顧客課題の深耕 | インタビューの設計、課題の特定 | 設計と結果のレビュー。実行は社内で持つ | 事業開発支援型 |
| ソリューションの検証 | プロトタイプの制作、検証の設計 | 手を動かす部分 | プロトタイピング支援型・開発型、事業開発支援型 |
| 初期の事業実証 | 開発、テストマーケティング、初期の営業 | 専門機能の提供 | 開発型、事業開発支援型 |
| 事業の立ち上げと拡大 | グロース、組織化、採用 | 拡大局面の実務 | 事業開発支援型、営業型・マーケティング型 |
以下、委託先カテゴリに該当する会社を一部ご紹介します。
Wemake(運営:株式会社A)
社外の多様な人材を巻き込み、企画創出から仮説検証までを共創で進めるオープンイノベーションプラットフォーム
Wemakeは、社内のチームに異業種・異分野の社外人材が加わった共創チームをつくり、企画創出から事業仮説の検証までを支援するオンラインプラットフォームです。デザイナーやエンジニア、マーケターなど幅広い職種の人材が登録しており、1つの案件に対して多数の提案が集まる仕組みを特徴とします。
| 会社概要 | |
|---|---|
| 支援領域 | 新規事業・新商品の企画創出からアイディエーション、初期の仮説検証 |
| 支援スタイル | オンライン共創プラットフォーム。社外の多様な人材から提案を募り、社内チームと共創しながら絞り込む |
| 得意フェーズ | アイディエーション、顧客課題・解決策の初期仮説検証 |
| URL | https://www.wemake.jp/ |
リブ・コンサルティング
伴走スタイルを重視し、事業アイデア出しから事業化、組織開発までを扱う新規事業開発コンサルティング
リブ・コンサルティングは、大企業からベンチャー企業まで様々な規模・業界での新規事業開発コンサルティングの実績を持つ会社です。コンサルタントが考えた案を企業が選ぶ分業型ではなく、企業とコンサルタントが事業開発の狙いとスピード感を共有しながら進める伴走スタイルを特徴とし、事業立ち上げの終盤ではマーケティングモデルやセールスモデルの構築にも関与します。
| 会社概要 | |
|---|---|
| 支援領域 | 新規事業開発コンサルティング全般(アイデア創出から事業化、事業開発能力を高める組織開発まで) |
| 支援スタイル | 伴走型。事業開発の狙いとスピード感を企業と共有しながら、検証から成果創出までを並走する |
| 得意フェーズ | アイディエーションから顧客課題の深耕、初期の事業実証、事業の立ち上げ以降まで一気通貫 |
| URL | https://www.libcon.co.jp/ |
Sun*(サンアスタリスク)
事業構想からプロトタイプ開発、本開発までを一気通貫で支援するデジタル・クリエイティブスタジオ
Sun*は、事業アイデアの創出からビジネスデザイン、プロトタイプ開発、本開発、グロースまでを一気通貫で支援する会社です。通常の開発会社と異なり、事業開発プロセスのどのフェーズからでも関与でき、ビジネス・テクノロジー・クリエイティブの専門人材でチームを編成して対応します。
| 会社概要 | |
|---|---|
| 支援領域 | 新規事業・プロダクト開発支援(ビジネスデザインから開発、グロースまで) |
| 支援スタイル | ラボ型開発。準委任契約で稼働工数に応じて継続的にチームを提供する |
| 得意フェーズ | ソリューションの検証(プロトタイプ・MVP開発)、初期の事業実証 |
| URL | https://sun-asterisk.com/ |
AlphaDrive
新規事業開発の体系的な知見を発信するリーディングカンパニーであり、事業会社で実務を経験した人材が集う会社
AlphaDriveは、新規事業の構想から検証、事業化までを一気通貫で支援する会社です。特に、投資・撤退の判断基準やステージゲートの設計といった、新規事業を継続的に生み出すためのマネジメントの仕組みづくりに強みを持ちます。『新規事業の実践論』『新規事業の経営論』という書籍でも知られています。
| 会社概要 | |
|---|---|
| 支援領域 | 大企業の新規事業開発支援(構想・検証・事業化・拡大局面の伴走) |
| 支援スタイル | 一気通貫の伴走支援。大企業の組織文化・意思決定プロセスを踏まえて進める |
| 得意フェーズ | アイディエーションから顧客課題の深耕、初期の事業実証、事業の立ち上げ以降まで一気通貫 |
| URL | https://alphadrive.co.jp/ |
個人に委託する場合、どのような探し方があるか
個人への委託は、主に専門人材マッチングサービスを使う方法、エージェントの紹介を受ける方法、社外のネットワークから辿る方法があります。
| 探し方 | 特徴 | 向いている状況 |
|---|---|---|
| 専門人材マッチングサービス | 母集団が広く、相場観をつかみやすい。会社ではなく個人の専門人材を紹介する | 要件がある程度明確な場合 |
| エージェント経由 | 選定の手間を担当者に任せられる | 要件がまだ固まっていない場合 |
| 社外ネットワーク経由 | 人柄や実績を事前に把握しやすい | 扱うテーマが特定できている場合 |
以下、専門人材マッチングサービスの例を紹介します。
HiPro(運営:パーソルキャリア株式会社)
HiProは、パーソルキャリア株式会社が提供するプロフェッショナル人材総合活用支援サービスです。企業の課題に応じて、高度な専門スキルを持つ副業・フリーランス人材をプロジェクト単位で紹介します。企業と人材が直接やり取りするプラットフォーム型の「HiPro Direct」と、担当者が間に入って人材選定から進捗確認まで伴走するエージェント型の「HiPro Biz」を併せ持ち、課題の性質に応じて使い分けられます。
| 会社概要 | |
|---|---|
| 支援領域 | 新規事業開発を含む幅広い分野のプロフェッショナル人材のマッチング |
| 支援スタイル | プラットフォーム型(HiPro Direct)とエージェント型(HiPro Biz)を併用。プロジェクト単位で人材を紹介する |
| 得意フェーズ | 特定の専門知見が必要な局面全般。構想フェーズから事業化・グロース戦略まで |
| URL | https://hipro-job.jp/ |
個人委託での業務要件を定義する際は、理想の人物像を自分たちで作り上げていないかを確認しましょう。
予めプラットフォームを閲覧して実際にどのような人が登録しているかを見ておくと、要件を現実的な範囲に絞り込めます。
個人への委託で成果を左右するのは、発注の仕方です。
新規事業領域での個人への業務委託がうまくいかない原因の多くは、ディレクションにあります。
正社員であれば本人が考えるという期待が一定できますが、業務委託では業務をディレクションする責務が発注側に残ります。
握っておくべき項目は主に3つです。
- 期間を区切ったうえでのスコープ設定
- ゴールと役割範囲の明示
- 発注側が持つ、こうしたらよいのではないかという案
3つ目が欠けている現場では、参画した人材から「何をやったらいいか分からない」という声が上がります。
まとめ
新規事業のリソース不足は、人を増やすことだけでは解決しません。使える手段は一つではなく、業務の性質に応じて組み合わせることが出発点になります。
そのうえで、足りないのが特定の専門知見なのか、一定期間まとまった実務の担い手なのかによって、個人に委託するか法人に委託するかが変わります。どちらを選ぶ場合も、何を任せ、何を自社に残すのかという線引きを曖昧にしないことが、成果を左右します。
よくある質問
経験がない状態から始める場合、まず担当領域を絞り、外部に一部の業務を委ねながら進め方を学ぶ形が現実的です。
正社員採用、兼務・異動、生成AIによる代替、法人委託、個人委託の5つに大別できます。どれか一つを選ぶのではなく、業務の性質に応じて組み合わせるのが実務的です。例えば、情報収集や資料作成のように定型性の高い業務は生成AIに任せ、顧客に向き合う業務は社内で持ち、専門性が必要な業務は外部から調達する、という切り分けが出発点になります。
調査や資料作成など定型性の高い業務を生成AIに任せることで、確保できる時間の使い方を変えられる場合があります。業務の棚卸しをしたうえで、どこに時間を割くべきかを見直すことが出発点になります。
足元の短期だけを見れば、外部にコストを流出させず内製で対応するという取り組み方が適切な場合もあります。ただし、それなりの規模の売上金額やスピードも求める場合は、内製のみでは体制・ナレッジが明らかに不足するケースもあります。期待されている成果と照らし合わせて、体制を議論すると良いでしょう。
専門性の高い領域でも、顧客に向き合う姿勢自体は崩さないことが基本です。業界経験者にインタビューへ同席してもらう、事前に生成AIを相手に壁打ちをして論点を整理しておくといった対応が有効です。
最初から役割分担で割り切る前に、本人に挑戦してもらう道を探る方が理想的です。技術的な検証に強い人材が顧客理解の目線も持てると、事業全体への解像度が上がるためです。いきなり一人で任せるのではなく、最初のインタビューには同行してフォローするなど、ハンズオンで支援しながら経験を積んでもらう進め方が現実的です。それでも苦手意識が強く本人も望まない場合は、チーム内で役割を分担し、顧客接点を得意とする人材を採用や委託で補う体制もあるでしょう。
業務の棚卸しと要件の整理から支援を受けることは可能です。AlphaDriveは大企業の新規事業開発を支援しており、体制の設計や進め方の整理から伴走した事例があります。現在の状況に応じた進め方は、支援事例集で確認できます。
AlphaDriveの新規事業支援について
AlphaDriveは、企業の新規事業創出を仕組みづくりから立ち上げまで、一気通貫で支援しています。
事業創出のインキュベーションから事業立ち上げ後のアクセラレーション、オープンイノベーション、R&D 組織での新規事業開発まで。これまでに 約300 社を支援し、23,800 件の事業アイデアを創出、250 件の事業化・会社化を実現してきました。事業開発に対する伴走だけでなく、プロダクト開発、マーケティング、セールスなど各領域での実務支援を通じて、事業化後のフェーズを成功に導くご支援を行っています。
監修者について
加藤 隼
株式会社アルファドライブ グループ執行役員(アクセラレーション戦略推進) 株式会社GROWGRIT 取締役
2013年、ソフトバンク株式会社に新卒入社。法人営業を主務とする傍ら、新事業スキームを担当顧客へ提案し、同事業の責任者としてジョイントベンチャー(JV)での事業立ち上げを牽引。兼任プロジェクトとして、孫正義氏の次世代経営者育成機関「ソフトバンクアカデミア」にも所属。2016年、株式会社ディー・エヌ・エーに中途入社。メディア領域の事業開発に従事。DeNAと小学館のJVによる事業再建プロジェクトに携わり、Bizサイド広範の戦略策定・実行を推進し、ゼロからの事業再建を牽引。2019年3月、株式会社アルファドライブに入社。累計35社、4000件超の新規事業プロジェクトに対する伴走・審査に携わり、2021年4月にマネージング・ディレクターに就任。2023年1月、執行役員 イノベーション事業/アクセラレーション事業担当に就任。