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事業ドメインとは?定義の方法と、新規事業・経営判断への活かし方

新規事業の提案が積み上がっているのに、事業化まで進んだところで「結局、会社の戦略とどうつながるのか」をうまく説明できない。そんな状態に心当たりがある方もいらっしゃるのではないでしょうか?。

フリーテーマで生まれた事業は、単体としては魅力的でも、会社の戦略との重なり(のりしろ)がなければ、大玉化のための投資対象として扱われないまま終わっていきます。
本記事では、「自社がどこで戦うのか」を定義する事業ドメインについて解説します。

事業ドメインとは、「経済活動を行う事業領域」を定義すること

事業ドメインとは、企業が事業を展開する上での事業領域を定義する用語です。どのような市場や顧客に対して、どのような価値を提供していくのかを定める概念として捉えられています。

事業ドメインに似た言葉に企業ドメインがありますが、企業ドメインは全社的な視点で事業ポートフォリオ全体の活動範囲を捉えます。一方、事業ドメインは自社が経済活動を行う事業領域を指す言葉で、戦略合理性や競争優位性等から検討するものです。

事業ドメインを定義するための枠組みに「エーベルの三次元事業定義モデル」があります。
これは、①誰に提供するか(顧客層)、②何を提供するか(顧客機能・ニーズ)、③どのように提供するか(技術・独自能力)という3つの軸から事業ドメインを定義していく考え方です。ただし、これは一般的な定義です。AlphaDriveとしては、「新規事業開発や今後の事業展開においてどんな領域をターゲットとするのか」という意味での事業ドメインの策定に関して解説します。

事業ドメインを定める際は、自社の強みであるアセットを活かせること、そして将来的な成長が見込める市場であることを考慮し、注力すべき事業領域を明確にすることが重要です。

事業ドメインの設定が求められる背景

AlphaDriveが考える新規事業のドメインを設定する背景には、戦略合理性、競争優位、大玉化という3つの狙いがあります。

  • 戦略合理性…なぜ自社がその事業をやるのかに納得感があること
  • 競争優位…自社の資産・強みを活かし、模倣されにくい戦い方ができること
  • 大玉化…会社に大きなインパクトを与える規模の事業を狙うこと

これらの狙いを統合し、自社が注力すべき事業領域を特定することを、近年では「ハンティングゾーン」の設定と呼ぶ企業が増えています。同時に、攻めない領域を明確にすることも重要です。事業ドメインからどの程度外れたら見直しや撤退を検討するのか、といった目安をあらかじめ定めておくことで、事業判断の透明性を高めることができます。

事業ドメインを策定する際の注意点

事業ドメインの設定を進めるにあたり、事業のゴールを明確にし、そこへ向かうための指針を示すことが重要です。新規事業は、当初の企画通りに進むことは稀で、仮説検証を繰り返しながらピボットしていきます。しかし、明確な方向性がないままピボットを繰り返すと、本来やるべきではない領域にリソースを割いてしまう可能性があります。

新たな収益の柱をつくるのか、既存事業の変革を促すのかなど、新規事業に取り組む目的を事前に握っておくことが重要です。そのうえで、どれだけ収益性が高くても取り組まない領域(特定の事業形態、倫理的に関与できない分野、過去の失敗から除外している領域など)を、理由や背景ごとに言語化しておきましょう。これが共有されていないと、推進者が知らずにNGゾーン/OBラインへ踏み込み、終盤で差し戻される非効率が繰り返されます。

事業ドメインの設定には段階がある

AlphaDriveが提唱する事業ドメインには、下記の4つのレベルがあります。

レベル 内容
Lv.0(事業ドメインの設定がない状態) 具体的な事業ドメインはなく、「NGゾーン」と「既存事業の焼き直し禁止」といった最低限のルールのみがある
自由度は高い一方、検討が進んだ段階で「戦略合理性がない」と判断され、見送りになる可能性がある
Lv.1(事業ドメインのみ設定されている状態) 「ウェルビーイング」のような抽象的な事業ドメインだけが掲げられ、判断基準や推進体制はまだ整っていない状態
根本的な戦略不整合は避けやすくなるが、事業ドメインの解釈の幅が広く、実質フリーテーマに近い状態になりがち
Lv.2(「検討する」段階の支援が提供できる状態) 事業ドメインに加え、有識者セミナーや調査レポート、外部データベースなど、検討の解像度を高める支援が用意されている状態
検討の質は上がるが、事業化後のアセット活用や成長加速までは約束されていない
Lv.3(ハンティング・ゾーンが設定され、「推進する」段階の支援が約束されている状態) 既存の営業組織や販売チャネル、技術資産といったアセットの投入を、経営層があらかじめ確約している状態
意思決定プロセスの難易度は高いものの、事業化後の大玉化を狙いやすくなる

また定義した事業ドメインは、ドメインの範囲で取り組むチームとフリーテーマで取り組むチームを併存させることが有効です。注力すべき事業開発は取り組みつつ、予想せぬ新規事業の創出につながる余白を残すことが可能になります。

例えば、経営直下のプロジェクトを複数チーム編成する場合、その半数には経営課題に直結する特定テーマを授け(トップダウン)、残りの半数には領域を問わないフリーテーマを付与して探索させます(ボトムアップ)。経年にわたってボトムアップ側の取り組みを続けていくと、特定の領域から案件が継続的に生まれ、事業化の「群」が形成されていくことがあり、その群を意図的につくっていくためにも、ハンティングゾーンの設計は有効です。

事業ドメインの新規事業開発での活かし方

事業ドメインは「どこを狙うか」を定めるものです。前章のLv.0〜Lv.3で示したとおり、事業ドメインには「どこまで具体的に定義されているか」「経営層の合意と資源投入をどこまで得られているか」に幅があり、その最高レベルに位置づけられるのがハンティングゾーンです。この章では、事業ドメインの新規事業開発での活かし方について解説します。

ハンティングゾーンとして機能する

ハンティングゾーンとは、企業が新規事業やイノベーションを創出するために、重点的に注力すべき事業領域や市場セグメントを指します。これは、主に探索的な活動において、優先的に取り組むべき領域を明確にするための概念です。

ハンティングゾーンは、以下の4つの要素が重なり合う領域として定義されます。

  • 社会全体の潮流
  • 自社の資産・優位性
  • 顧客を引き付ける課題
  • 市場魅力度

上記に加えて、前述した戦略合理性、競争優位、大玉化といった要素を統合した到達点として捉えることが重要です。経営層のリソース確約ができる状態を作り出すことこそが、ハンティングゾーン設定の本質と考えられます。

フリーテーマで立ち上げ能力を育ててから、絞り込む

新規事業開発においては、まずフリーテーマで挑戦意欲と立ち上げ能力を育み、組織として一定の基盤ができてから、事業ドメインを「ハンティングゾーン」として設定することが効果的です。

策定タイミングの目安になるのが、事業化を勝ち取った第一世代の新規事業の中から、撤退や売却の道を歩んだチームが現れ始める段階です。この段階でハンティングゾーンを適切に設定できると、「2周目の新規事業」として中長期戦略に合致するイノベーションが生まれやすくなります。

ハンティングゾーンの定め方

ハンティングゾーンの設定は、新規事業の成功確率を高め、経営戦略との連携を確実にするための重要なプロセスです。特に、経営層がリソースの投入と実行支援を約束できるレベルまで落とし込むことが、事業の成長を促す鍵となります。
この章では、その理想的な状態である「ハンティングゾーン」を設定するための具体的なステップを解説します。

事前調査をおこなう

まず、中長期的な視点で新規事業の役割とゴールを明確にし、社会のメガトレンドや市場動向を調査・分析して有望な事業機会を特定します。これにより、社会構造の変化が既存事業に与える影響を予測し、自社が攻めるべき市場を明確にします。

次に、外部環境分析と並行して、特許や技術、顧客との信頼関係、現場の暗黙知など、自社の強みとなる資産を洗い出します。「自社ならではの武器」を把握し、他社が模倣できない独自の勝ち筋を見極め、自社のケイパビリティが最大限に活かせる「勝てる土俵」を特定します。

事業ドメインを絞り込み、シナリオ検討する

事前調査で特定した有望領域に対しては、追加の調査を重ねながら、具体的な「勝ち方」をシミュレーションしていきます。市場参入のシナリオを複数パターン策定し、自社のアセットをいつ、どこに、どのように投下すれば優位性を築けるかを多角的に検討する段階です。参入の可否だけでなく、競合優位性を維持し続けるための論理を組み立て、抽象的なアイデアを「勝機のある具体的な戦略」へと磨き上げていきます。

事業ドメインを選定する

候補となる事業ドメインは、策定した多角的な評価軸を用いて、投資対効果と成功確率の観点から厳選します。市場性や収益性といった外部指標に加え、自社の戦略との整合性や保有アセットとの適合性を客観的に評価し、スコアリングによって比較検討を進めます。最終的な事業ドメインの選定にあたっては、経営層の強力なコミットメントが重要です。選定された事業ドメインは、事業推進に必要なヒト・ モノ・カネの投入を経営層が確約している状態であることが推進基盤を確立します。

アクセラレーション施策を事前に設計する

その後、アクセラレーション段階を見据えた施策を、事業ドメインと同時に設計しておきます。ポイントは2つです。ひとつは、事業ドメインのもとになった自社アセット(既存の営業部隊や顧客基盤など)を、アクセラレーション段階で新規事業が実際に活用できるよう、あらかじめ約束しておくこと。もうひとつは、社員がフリーテーマ以上に重点テーマへ思考をめぐらせ、原体験化に向けて行動するインセンティブ設計をおこなうことです。この2点をセットで進めることがポイントとされています。

プロジェクト設計をする

決定した事業ドメインを具現化するため、実施期間の設定やチーム体制の構築とあわせて、精緻なプロジェクト設計をおこないます。この段階であらかじめ合意しておきたいのが、事業の継続・撤退を判断するためのステージゲートなどの評価基準です。現場にどのような権限とリソースを委ねるかをルール化しておくことで、不確実な状況下でも現場が忖度なく事業開発に取り組める体制を整えられます。

まとめ:事業ドメインは「どこを注力領域とし、どこを対象外とするのか」を定義すること

事業ドメインは、市場や技術を言葉で定義するだけの枠組みではありません。どこを注力領域とし、どこを対象外とするのかを決めることが、新規事業を戦略的な成果につなげる第一歩になります。

AlphaDriveでは、新規事業に関する事業領域の決め方や、目標設定の考え方などをご支援しています。また、新規事業を最適に進めるための設計から伴走支援まで一気通貫で対応しています。新規事業についての知見やナレッジがない、成果につながらないといったお悩みのある企業様は、自社への活用イメージを深める参考としてぜひご活用ください。

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よくある質問

  • 事業ドメインの設定自体は、最初から行っておくことが望ましいです。

    「自社がどこで戦うか」という大枠の方向性は、早い段階で定めておくことで、新規事業の方向性がブレにくくなります。一方、事業ドメインの中でさらに経営層がヒト・モノ・カネの投入を確約した領域であるハンティングゾーンは、最初から設定しなくても機能します。フリーテーマで挑戦意欲と立ち上げ能力を育んで、「会社の戦略とのりしろのない事業がそこそこ大きくなってきた」と感じ始めたくらいのタイミングが設定の目安です。適切なタイミングを掴めると、一周目で経験を積んだ実力者が「二周目の新規事業」として、戦略に合致するイノベーションを起こしやすくなります。

  • NGゾーンがないまま進めてしまうと、方向性がないままピボットを繰り返し、本来やるべきでない領域にリソースを割いてしまうことが起きます。さらに、終盤になって「これはそもそも対象外の領域だった」と判明し、差し戻しになるケースも繰り返されます。手を出さない領域を事前に言語化しておくことが、迷いをなくすいちばんの近道です。

  • 大きく4つのステップで進めます。まず事前調査として、社会のメガトレンドや市場動向と、自社が保有する技術・顧客基盤・現場の暗黙知などのアセットを別々に整理します。次にその重なりから有望領域を特定し、参入シナリオを複数パターンでシミュレーションします。そこで候補に残った領域を、市場性・収益性・自社戦略との整合性などの評価軸でスコアリングし、経営層がコミットできるレベルまで絞り込みます。最後に、選定した事業ドメインの中でハンティングゾーンとなる領域に対して、どのアセットをいつ投入するかを設計します。この4ステップを経ることで、実効性がある事業ドメインが定まります。

  • 方向性を定めることで発想が狭まるのではなく、むしろ「どこに向かって考えればいいか」が明確になることで、社員が動きやすくなります。また、事業ドメインはすべての新規事業にテーマを課すものではなく、フリーテーマと併存させる運用が基本です。フリーテーマで挑戦意欲と立ち上げ能力を育みながら、会社の戦略と重なる領域では経営層のリソース確約を伴った支援が得られる。この二段構えにすることで、社員のWILLを起点にした自由な発想を守りながら、事業を大玉化させる確率を高めることができます。

AlphaDriveは、企業の新規事業創出を仕組みづくりから立ち上げまで、一気通貫で支援しています。
事業創出のインキュベーションから事業立ち上げ後のアクセラレーション、オープンイノベーション、R&D 組織での新規事業開発まで。これまでに 約300 社を支援し、23,800 件の事業アイデアを創出、250 件の事業化・会社化を実現してきました。事業開発に対する伴走だけでなく、プロダクト開発、マーケティング、セールスなど各領域での実務支援を通じて、事業化後のフェーズを成功に導くご支援を行っています。

監修者について

土井 雄介

株式会社ユニッジ 共同創業者 代表取締役Co-CEO 株式会社アルファドライブ プリンシパル 企業変革事業統括 兼 東海拠点長 株式会社アルファドライブ静岡 代表取締役

静岡県富士市生まれ富士宮市育ち。2015年東京工業大学大学院卒業後、愛知の自動車メーカーに入社。物流改善支援業務を行ったのち、役員付きの特命担当に任命される。並行して、社内有志新規事業提案制度を共同立ち上げ・運営。プレーヤーとしてもこの制度に新規事業を起案し、2年連続で事業化採択案に選出される。その後、社内初のベンチャー出向を企画し、AlphaDriveの創業期に参画。多数の新規事業の制度設計/伴走支援を実施。帰任後、社内から事業を生み出すしくみ作りを担当すると共に、協業支援会社UNIDGEを共同創業。2023年より社内初の「若手社長出向」としてUNIDGE Co-CEOを経て、代表取締役に就任。同時に、株式会社アルファドライブのプリンシパルとして企業変革事業統括、東海拠点長を担う。その他、株式会社ユーザベース CEO室。寿司ベンチャー企業、株式会社SUMESHI 社外取締役。累計90社以上の企業支援に関わり、年間100本以上の講演、審査員としても活動。