Knowledge (ナレッジ記事)

新規事業のリソース不足、どう解決する?内部・外部の使い分けと調達の考え方

新規事業を担当していると、「人が足りない」「時間が足りない」「専門知識が足りない」という壁に必ずといっていいほど直面します。

外部の支援会社や業務委託を試してみたことはあるけれど、思うような成果が出なかった。だから「結局、自分たちでやるしかない」という結論になっている。そんな状況に置かれているチームは少なくありません。

一方で、リソースが少ない中でも着実に前に進んでいる新規事業チームには共通点があります。「何を内部でやり、何を外部に任せるか」の判断軸を持っていること、そして外部に依頼するときの動かし方が整っていること。この2点を押さえているかどうかが、チームの実力以上の動きができるかどうかを分けています。

そこで累計35社、4,000件を超える新規事業プロジェクトの伴走・審査に携わってきた当社グループ執行役員の加藤隼と、アクセラレーション事業部でリードコンサルタントを務め、外部人材と発注企業をつなぐAlphaDrive Partnersの統括も担う北渡瀬敦が、リソース不足に悩む担当者が知っておくべき「リソース不足の本質的な構造」と「内部・外部リソースの正しい使い分け方」、そして「外部人材をうまく活用するための考え方」を整理しました。

この記事で分かること

  • なぜリソース不足は「解消されない問題」になるのか
  • 限られたリソースで新規事業を進める方法
  • 内部でやるべき仕事と外部に任せる仕事の見分け方
  • 外部人材の活用を失敗させないためのポイント

なぜリソース不足は「解消されない問題」になるのか

まず押さえておきたいのは、新規事業のリソース不足は、多くの企業内新規事業に共通して起きている問題です。

新規事業開発には、考えるべき変数が無数にあります。顧客は誰か、その課題は何か、解決策はどうあるべきか、マーケティングの方針をどう定めるか、セールスをどう組み立てるか。答えを出すべき問いは膨大で、しかも「これをやれば正解」という決まった手法があるわけでもありません。やることの多さに対して、与えられるリソースが「極小」というのが、多くの現場の実態です。

なぜリソースが増えないのか。それは経営的な判断として、ある意味「合理的」だからです。どうなるか分からない新規事業に大きくリソースを張ることは、経営的にはリスクが高い。だから新規事業のリソースは必然的に絞られます。

この構造を踏まえると、「今あるリソースでどう戦うか」に頭を切り替えるほうが建設的です。ただし、この切り替えには一つ前提があります。「現状のリソースの使い方が最適化されているかどうか」を先に確認することです。現場でリソース不足を訴える担当者に話を聞いてみると、そもそも何にどれだけ時間を使っているか把握できていないというケースが少なくありません。人を増やす前に、今いるメンバーの動きを棚卸しするだけで、動かせるリソースが見つかることもあります。

毎日動いているのに手応えが薄いとき、何が起きているか

リソースが限られているなら、何に集中するかを決めるしかない。とはいえ、実際の現場では「全部やろうとして全部が中途半端」という状態に陥りがちです。事業の0から1フェーズから1から10フェーズまで、各ステージのタスクをすべて一気に抱えようとすると、どれだけ人がいても足りません。

アルファドライブでは、新規事業の推進を「山登り」によく例えます。山を登るとき、頂上ばかりを見て走り続けていると、今自分がどこにいるかが分からなくなります。大事なのは今いる場所を正確に把握して、「このフェーズで向き合うべきアジェンダだけ」に絞ってコミットすること。これだけで、限られたリソースを最も効果の高いところに集中させられます。

このスタンスを実現するための仕組みが、ステージゲートの正しい運用です。各ステージで達成すべき基準を事前に定めておくことで、2つの効果が生まれます。

1つは、担当者の集中を守れること。コミットすべき論点が明確になるため、「やらなくていいこと」を後回しにできます。兼務で動いている担当者にとっては、「現時点でのフェーズのアジェンダではない」と言い切れる根拠ができることが助かります。ただし、「現時点でのフェーズのアジェンダではない」と言い切るためには、上位層との間でその基準を事前に握っておくことが必要です。基準の合意がないまま後回しにすると、「なぜ着手しないのか」という摩擦が生じてしまう可能性があります。

もう1つは、進捗を上位層に見せやすくなること。新規事業は成果が外から見えにくく、「頑張っているのに評価されにくい」という問題が起きやすいです。こうした課題を踏まえ、ステージゲートを活用することで「このフェーズでここを達成した、だから次に進む」という形で進捗を示せるようになります。感覚ではなくデータで進捗を語れるようになることで、経営層への説明コストも下がります。

ステージゲートの運用で押さえておくべきは、「何が達成されたら次に進むか」という基準をチーム内で共有しておくことです。この基準が曖昧なままだと「もう少し検証してから」という判断が続き、いつまでも同じフェーズに留まり続ける停滞が起きます。基準を言語化しておくことは、担当者自身が迷わずに動くためにも必要なことです。

【関連記事】

「ステージゲート」運用の勘所を専門家が指南。新規事業を成功へと導くため





【関連記事】

新規事業立ち上げの進め方|事業の種を生む手法と7つのステージ

何を内部でやり、何を外部に依頼するか

リソースのやりくりを考えるうえで避けて通れないのが、「社内でやるか、外部に頼むか」という判断です。この分岐を曖昧にしたまま動くと、外部に頼むべきことを自前でやって時間を消耗したり、逆に内部でやるべきことを外に出して事業の解像度が上がらないという問題が起きます。

判断の軸はシンプルです。「そのプロセス自体が、事業の解像度を上げることに直結するかどうか」。

内部でやるべき仕事の核心は「プロセスに学びがあるかどうか」です。

顧客インタビューがその典型例です。顧客が何に困っているのか、どんな言葉で話すのか、どの話題になると表情が変わるのか。こうした肌感覚は、レポートを読むだけでは絶対に得られません。担当者自身がインタビューの場に立ち、顧客と直接やり取りするプロセスで初めて身につく解像度があります。「調査会社に外注すれば効率的では?」と思う方もいるかもしれませんが、そこで得られる情報の質と、自分で顧客と向き合って得られる情報の質はまったく異なります。PoC(概念実証)や価格交渉も同様で、「やってみて学ぶ」プロセスを外に出すと、事業の判断精度が落ちます。

外部に積極的に任せるべきなのは、経験の非対称性が大きい領域です。クリエイティブ制作やプロダクト開発、マーケティング運用などは、プロとそうでない人の間に大きな経験値の差があります。内部でゼロから習得しながら進めようとすると、膨大な時間とコストがかかり、事業全体のスピードが落ちます。これらの領域はプロに任せ、担当者は内部でやるべき仕事に集中するのが正解です。

この棲み分けを一度整理してしまえば、その後の判断が格段に楽になります。「これは自分たちがやるべき仕事か?」という問いを持つ習慣が、限られたリソースを最大化する第一歩です。

【関連記事】

新規事業のPoCについて確認する

外部人材活用で陥りがちな落とし穴とその構造

外部人材の活用を試みて「うまくいかなかった経験がある」企業は約71.7%にのぼります(出典:みらいワークス「2023年プロフェッショナル人材白書」n=403)。

この数字を見て「やっぱり外部活用は難しい」と感じるかもしれません。ただ、うまくいかなかったケースを見ていくと、問題の多くはマッチングではなく、もっと手前にあることがほとんどです。

うまくいかなかったケース10項目のうち9項目が、「ディレクション」の問題に分類されます。

「自社に合う人を選べなかった」と感じていても、実態は発注側のディレクション設計が整っていなかったケースがほとんどです。「どんな人材を選ぶか」より「どう動かすか」が、外部人材活用の成否を分けるポイントです。どれだけ優秀な外部人材を採用しても、発注側の設計が整っていなければ期待通りの動きにはなりません。

実際にあったケースを紹介します。

不動産管理会社向けのAI-SaaSを展開する建設会社の新規事業チームが、スキルセットが申し分ない外部人材を個人委託で採用しました。前半2ヶ月は100社へのBDRアプローチを実行し、期待以上のアポ獲得を達成しました。手応えを感じたPO(プロジェクトオーナー)は「もっと任せてみよう」と判断し、後半からはFSや営業戦略も依頼の範囲に加えていきます。

ところがここから状況が変わります。「商談を推進してほしかった」というPOの期待と、「戦略を考えることを求められている」という外部人材の認識のズレが少しずつ大きくなり、3ヶ月で受注ゼロという結果になりました。

前半がうまくいったのは、たまたまスコープが合っていただけです。設計がなかったという意味では前半も後半も変わらず、後半でズレが起きたとき修正するための基準が何もなかった。。良い人材を使っても、設計が甘ければ期待通りに動いてもらえない。この構造を理解しておくことが、外部人材活用の出発点です。

ディレクション設計で押さえるべき3つのポイント

外部人材活用を成功させるために、スタート前に必ず整えておくべきことが3つあります。

1.スコープとゴールを言語化しておく

「3ヶ月でこのKPIを達成する」「担当範囲はここまで」という合意を、スタート前に言語化しておく。これがないと、依頼の範囲が少しずつ広がり、後半になってから「思っていた動きと違う」という状況が生まれます。

スコープを決める際の目安は、「この人が3ヶ月後に何を達成していれば成功か」を一文で書けるかどうかです。書けなければ、まだ定義が曖昧です。最初は窮屈に感じるくらい具体的に決めておくのがちょうどよく、変更が必要になれば「改めて合意し直す」という形で対応できます。スコープを詳細に決めすぎると外部人材の柔軟な提案力を活かせなくなるという声もありますが、成果物と期間は明確に握り、その中身の進め方は外部に委ねるという切り分けが現実的な落とし所です。

2.役割の「解釈」をすり合わせておく

「営業支援をお願いします」という一言でも、発注側と外部人材の間で解釈が大きく食い違うことがあります。戦略を一緒に考えることなのか、実際に商談に出て受注を取りにいくことなのか。前者と後者では動き方がまったく変わります。

この「解釈のズレ」は、外部人材活用で見受けられる落とし穴の1つです。依頼の言葉の裏にある期待を、具体的な行動レベルまで落とし込んで合意しておく。面倒に感じるかもしれませんが、これを怠ることで後半に大きなロスが生まれます。

3.発注側も一緒に考え続ける

外部に依頼した後、「あとはよろしく」と手を離してしまうのが陥りやすいパターンです。方向性がズレ始めたときに誰も気づけなくなるだけでなく、外部人材にとっても「丸投げされている」という状態はモチベーション低下の要因になります。

「一緒に考えよう」というスタンスで関わり続けること。週次や隔週での短い確認の場を設けるだけで、ズレに早期に気づける環境がつくれます。「一緒に考える」といっても、外部人材の判断にいちいち口を出すことではありません。進行方向が合っているかを確認し、必要なら軌道修正の議論をするという関与の仕方が、外部人材のパフォーマンスを最大化します。

FAQ

  • 新規事業は検討すべき変数が非常に多く、やることの多さに対してリソースが追いつかないためです。

    また、成否が不確実な段階で大きなリソースを投じることは経営上リスクが高いため、意図的にリソースが絞られるという構造もあります。

  • まずは今の業務を棚卸しし、フェーズを絞って集中することが有効です。

    0→1から1→10まで各ステージのタスクを一度に抱えようとせず、ステージゲートで「今向き合うべきこと」を明確にすることで、リソースを効果の高いところに集中させやすくなります。

  • 判断の軸は、そのプロセス自体が事業の解像度を上げるかどうかです。

    顧客インタビューやPoCのように担当者が動くこと自体に意味がある仕事は内部で、市場調査やクリエイティブ制作のようにアウトプットの活用で十分な仕事は外部に任せるのが適しています。

  • 人材選びそのものよりも、発注側のディレクション設計が重要です。

    ①任せる範囲とゴールの合意、②役割の解釈のすり合わせ、③発注後も一緒に方向性を考え続ける姿勢、この3点を整えることが成否を分けます。

  • 「解決したい課題の明確さ」で判断するのが現実的です。

    依頼内容がピンポイントで明確なら個人委託、「そもそも何から手をつければいいか」という整理の段階から助けてほしいなら法人コンサルが向いています。

    ただしどちらを選ぶにしても、まず「今自分たちが抱えているタスクの棚卸し」が先決です。何を任せたいかが整理されていない状態で発注しても、どんな人材が来ても期待通りには動いてもらえません。

  • 「外部に頼みたい」という要望ベースの話をしているうちは、承認を得るのは難しいです。

    「内部リソースだとこのスピードが上限で、3年後にここまでしか届かない」「外部を使えばここまで伸ばせる」という形で、事業計画レベルの根拠を示すことが必要です。

    感情論ではなく事業計画の話になったとき、承認の確度は上がります。ただし、この説明が通るかどうかは、上位層が新規事業に対してどれだけリスクを取る覚悟があるかにも依存します。

    説明の質だけでなく、上位層の覚悟を引き出すための関係づくりを並行して進めることも、実際には必要です。

  • アルファドライブでは、新規事業のリソース配分状況を外部目線で診断する「新規事業リソースアセスメント」を提供しています。

    現状の体制と課題を整理したうえで、内部と外部のどちらに何を任せるべきかをレポート形式でお伝えします。

    詳しくは以下の問い合わせフォームからお寄せください。

    お問い合わせはこちら

まとめ

新規事業のリソース不足は、多くの企業に共通する構造的な問題です。「リソースを増やすこと」にエネルギーを使い続けるより、「今あるリソースでどう戦うか」に頭を切り替えることが、現実的な出発点になります。

フェーズを絞って集中アジェンダを明確にすること、内部と外部の仕事を正しく見分けること、外部人材にはディレクション設計をセットで用意すること。この3つを押さえるだけで、限られた体制でもチームの実力以上の動きができるようになります。

  • リソース不足は構造的な問題。ルールの中でどう戦うかを考える
  • フェーズごとに集中アジェンダを絞り、上位層と基準を事前に握っておく
  • 顧客インタビューや交渉は内部で。調査・開発・クリエイティブは積極的に外部へ
  • 外部人材活用の7割はうまくいかない。原因の大半はマッチングではなくディレクション
  • スコープ設定・役割の解釈合わせ・発注側も考え続けることが成功の3条件

新規事業のリソース配分に関する支援のご案内

アルファドライブでは、新規事業開発支援の一環として、リソース配分の設計から外部人材活用の伴走まで、現場に入り込む形で支援を提供しています。
内部と外部の使い分け、ディレクション設計の整理まで、個別のご状況に合わせて対応いたします。

▼詳細やご相談は、以下のフォームよりお問い合わせください。
https://alphadrive.co.jp/contact/

AlphaDriveの新規事業開発支援について

AlphaDriveは、企業の新規事業創出を仕組みづくりから立ち上げまで、一気通貫で支援しています。
事業創出のインキュベーションから事業立ち上げ後のアクセラレーション、オープンイノベーション、R&D 組織での新規事業開発まで。これまでに 約300 社を支援し、23,800 件の事業アイデアを創出、250 件の事業化・会社化を実現してきました。事業開発に対する伴走だけでなく、プロダクト開発、マーケティング、セールスなど各領域での実務支援を通じて、事業化後のフェーズを成功に導くご支援を行っています。

監修者について

加藤 隼

株式会社アルファドライブ グループ執行役員(アクセラレーション戦略推進) 株式会社GROWGRIT 取締役

2013年、ソフトバンク株式会社に新卒入社。法人営業を主務とする傍ら、新事業スキームを担当顧客へ提案し、同事業の責任者としてジョイントベンチャー(JV)での事業立ち上げを牽引。兼任プロジェクトとして、孫正義氏の次世代経営者育成機関「ソフトバンクアカデミア」にも所属。2016年、株式会社ディー・エヌ・エーに中途入社。メディア領域の事業開発に従事。DeNAと小学館のJVによる事業再建プロジェクトに携わり、Bizサイド広範の戦略策定・実行を推進し、ゼロからの事業再建を牽引。2019年3月、株式会社アルファドライブに入社。累計35社、4000件超の新規事業プロジェクトに対する伴走・審査に携わり、2021年4月にマネージング・ディレクターに就任。2023年1月、執行役員 イノベーション事業/アクセラレーション事業担当に就任。

北渡瀬 敦

株式会社アルファドライブ アクセラレーション事業部 AXL STUDIO リードコンサルタント 兼 AlphaDrive Partners 統括

学生時代に起業し、マレーシアにてパーソナルトレーニング事業の立ち上げやオンライン英語教育事業の立ち上げを経験。 その後、パーソルキャリアに新卒入社し、新規事業『HiPro Tech』のセールスを担当。 スタートアップ~プライム上場大手企業まで幅広く担当し、組織トップの新規開拓・売上実績を収め、社内MVPを受賞。 また、社内別部門で新規サービス(0→1)のBizDevを兼任し、法人顧客の要件定義やプロダクト検証フェーズを経験。 2025年よりAlphaDriveに参画し、新規事業における1→10フェーズのアクセラレーション支援に従事。 2026年よりAlphaDrive Partnersの統括に就任。

Contact

まずは課題の壁打ち、状況整理からさせて頂きます。
お気軽にご連絡ください。

事業開発、仕組みづくり、AI活用、海外展開、地域共創——
どのようなお題からでも、まずお話をお聞かせください。